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国際女性デーも注目は活躍する女性ばかり。忘れられた「貧困女性」たちの存在

3月8日の「国際女性デー」を前に、関連する特集を組むメディアの多くがスポットを当てたのは「活躍する女性たち」でした。悪いことではないものの、この日を機会に注目すべきは「貧困に苦しむ高齢女性たち」ではないかと問題提起するのは、健康社会学者の河合薫さんです。今回のメルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』では、高齢単身女性の貧困が見過ごせない域に達していることをデータで示し、今後ますます貧困者が高齢女性に偏るとの試算があると紹介。低賃金の非正規においても男女の賃金格差が大きいことなど、日本社会の古い構造に原因があると指摘しています。

プロフィール河合薫かわい・かおる
健康社会学者(Ph.D.,保健学)、気象予報士。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。ANA国際線CAを経たのち、気象予報士として「ニュースステーション」などに出演。2007年に博士号(Ph.D)取得後は、産業ストレスを専門に調査研究を進めている。主な著書に、同メルマガの連載を元にした『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアムシリーズ)など多数。

日本人の間で忘れられている「女性」たち

本日3月8日は「国際女性デー」です。これはドイツの政治家で女性解放運動家のクララ・ツェトキンが、1910年にデンマークのコペンハーゲンで行なわれた国際社会主義者会議で、「女性の政治的自由と平等のためにたたかう」記念の日とするよう提唱したことから始まったとされています。

欧米では1970年代以降、国際女性デーを社会に広めるムーブメントが拡大しました。日本でも、市川房枝さんや、大羽綾子さんらが主導して、国際婦人年連絡会を結成するなどしてきましたが、多くの人に知られるようになったのはごく最近です。

昨年は、新聞各紙が「国際女性デー」の一面広告を掲載。「初の女性大臣が誕生」「日本の女性管理職50%超えへ」「共働き夫婦の平日・育児時間が男女同等に」「生理用品に軽減税率適用」「男性の育休取得率8割超え」「選択的夫婦別姓が実現へ」「ノーベル物理学賞 日本人女性 初の受賞」…などという文字が並びました。

そして、今回。多くのメディアが「活躍する女性」特集を、3月に入ってから展開しています。こういった動きは次世代につながるものですし、頑張ってる人に励まされる人もたくさんいます。「私」ががんばることが、「誰か」の応援歌になる。そうやって、一人でも多くの人たちが前に踏み出すようになればいいなぁと、心から願います。

しかし一方で、国際女性デーは「すべての女性の自由と権利が守られる平等な社会を目指し、共に考える日」なのに、なぜ、忘れられてる「女性」がいるのでしょうか。すべての女性なのに、その「すべて」から見過ごされているのです。

働く女性のうち、非正規雇用で働く割合は48.5%で、男性(16.8%)の約3倍です。働く女性のうち、45歳以上の割合は54%と半数を超えています。正社員(正規雇用)に限っても約4割が45歳以上。2人に1人が、45歳以上。半分が45歳を過ぎた女性です。特に問題なのが、「高齢単身女性」です。貧困者の1/4は高齢女性で、特に単身女性の貧困は際立っています。

男女別・世帯累計別に65歳以上の相対的貧困率をみると、単身女性の相対的貧困率は44.6%と半数に近い。年齢が高くなるほど貧困率は高く、75歳以上は25%を超え、なんと4名に1名が貧困状況です。

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男性の場合は、高齢期に突入している人の多くは、40年間公的保険にカバーされているため、老後の貧困のリスクは減少傾向で、今後はさらに減っていくと予想されています。一方、女性は2018年の貧困率に2030年の人口推計をかけ合わせると、貧困者がますます高齢化・女性化すると試算されているのです。

日本の人口の6人1人は65歳以上の女性です。なのになぜ、国際女性デーに「高齢の女性」の貧困問題にスポットが当たらないのでしょうか。

コロナ禍では、多くの女性が悲しい選択を余儀なくされました。その多くは非正規の女性でした。諸外国と比較すると、日本の男女間賃金格差は大きく、非正規雇用の場合、男性の年収が平均226.7万円に対し、女性は152.9万円です。

女性の賃金が低い背景には、「女性は補助的な労働力」という昭和の家族モデルのまま日本社会が動いていることが大きな原因です。「女性は稼ぎが少なくてもいい」という昭和的思考が、令和の今「高齢の女性は貧困でも仕方がない」という性差別・年齢差別につながってるように思えてなりません。

みなさんのご意見、お聞かせください。

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image by: Shutterstock.com

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米国育ち、ANA国際線CA、「ニュースステーション」初代気象予報士、その後一念発起し、東大大学院に進学し博士号を取得(健康社会学者 Ph.D)という異色のキャリアを重ねたから書ける“とっておきの情報”をアナタだけにお教えします。
「自信はあるが、外からはどう見られているのか?」「自分の価値を上げたい」「心も体もコントロールしたい」「自己分析したい」「ニューストッピクスに反応できるスキルが欲しい」「とにかくモテたい」という方の参考になればと考えています。

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