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パートと正社員「同待遇」で話題のイオンは、客と店の関係をどう変えるか

同じ業務を行うパート社員と正社員の待遇を完全に同等とする制度導入で、大きな注目を集めているイオン。そんな実店舗数2万超の小売の雄が、着々とデジタル化を進めていることをご存知でしょうか。今回のメルマガ『週刊145マガジン「腹割って話そうぜ!」まぐまぐ!出張版』では、Webメディア『ECのミカタ』元編集長で株式会社「team145」代表取締役石郷学さんが、同社が推進する「リアルの強みを活かすDX」を詳しく紹介。アナログベースだった顧客をデジタルへと導く、華麗ともいうべき戦略を解説しています。

※ 本記事は有料メルマガ『週刊145マガジン「腹割って話そうぜ!」まぐまぐ!出張版』2023年3月13日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

パートと正社員「完全同待遇」で話題のイオン、リアルの強みを活かすDXとは?

リアル店は何を転換すべきか

海外ではウォルマートを筆頭に、リアルのお店がDXを進めています。デジタル企業に対抗してきて、その存在感を発揮しています。それは単純にデジタルだけでは進化しきれないという実態をよく示しているように思います。

国内も徐々にそこに近づいていて、イオンでDX推進に関わる菓子豊文さんの話です。

彼らはリアル店を持ち、お客様と直接、接点を持つことを強調して、その中でどう変えるのかとして、こんなデータをあげてくれました。

お客様へのアンケートでは、リアルにいながらスマホで情報収集をしている人が、全体の55%。また、スマホ決済「PayPay」でクーポンを利用している人の数は1,000万人を超えます。つまり、リアルで商品を手に取るその瞬間も、購入シーンでも、スマホでチェックしているわけです。

強みを踏まえたデジタル化であることが大事

もう一つの視点。その一方で、使うお客様の定義も変わってきています。Facebookでは、属性を男女、その他にとどまらず、58種に分類して、人を理解しているといいます。

つまり、企業側もその向き合い方として、その多様性を受け入れる体制を並行して、整えなければならないとしたわけですね。だから、情報発信と決済、そしてパーソナライズという側面でデジタルが補完していくことが、たとえリアルでも必要になっているわけです。

スマホを使った自らの決済と有益な情報により購買を促すとともに、細かくそのお客様のパーソナライズデータを構築して、リアルの顧客体験を補完していく。彼らの場合、これが大事なのですね。

強みを活かすDXとはなに?

強みを活かすという部分で最初の「リアル店を持っていて、接点を直に持っている」という話に戻ってきます。イオンの場合、リアル店は2万店を抱え、発行されているレシートは1,200万枚に及びます。

それらのジャンルはスーパーマーケットに限らず、ヘルス&ドラッグなど、生活全般に及んでいます。だから、自らのリソースを活用すれば、実は、お客様の特定をしやすい環境にあります。

最終的には、彼らの場合、スマホアプリを起点にすることにしました。リアル接点の補完として情報を発信して、決済を通して、データを収集できれば、今まで培ってきたリソースを最大化できることになります。

そこで、イオン系列のお店ごとに、バラバラで管理されていた会員の仕組みをすべて、「アイイオン」に統合していくわけです。

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ネットスーパーからデジタルへと誘う

とはいえ、今までアナログをベースにしていただけに、ライフスタイルを転換させるには、それなりのメリットが提示できないといけません。

そこで彼らが着目したのは「ネットスーパー」でした。これならば認知があり、既に実績が伴っていて、これを強みを、アプリを軸としたデジタル化へと導きやすくなります。

その強みの最大化として、彼らが注目したのは物流です。

そもそも、リアルなお店の品揃えは彼らにとっての強みですが、倉庫も並行して強化したのです。

物流拠点に、24時間稼働できるロボットを投入して、BtoBとしてだけの使い道だった倉庫をBtoCにも注力して差別化要因に変えるべく、そこに投資をしたわけです。

そして配達時間に柔軟性を持たせました。これまではリアルの店に合わせていたから、AM11時からPM10時まで。でもその対応を、AM8時からAM0時までに伸ばすわけです。

リアルの環境も「スキャン&ゴー」を活用し、レジを使わず、またデータとして補完しやすく転換を図ります。ネットスーパーが呼び水となって、自然にお客様のデジタル化を進めていく。

PBブランドで顧客の行動を読む

ゆえに商品とお客様の行動を紐づけて、俯瞰的にデータを把握し、それを施策に活かしていくことができます。結果、そういう視点でのデータがこれまでにない気づきをもたらしてくれたることを明らかにしています。

例えば、原材料の高騰で値上げが起こりました。ただ、彼らの施策としてプライベートブランド「トップバリュー」では料金の据え置きをしたのです。

数としては以前より売れましたが、問題はそこではありません。従来品を買っていたお客様が、「トップバリュー」に移行した人数で出してみたわけです。するとその数は100万人以上に及んでいました。

そのお客様のうち、複数回、トップバリューを購入した人は36%にも及んでいます。面白いのは、特に男性で45歳から65歳の人が移行しやすく、デリカ・お酒好きな人にその傾向がみられると。世のお父さんの悲しき実態がうかがえたり。

また、グロサリーで定着した顧客に関して見るとなお面白い。他のトップバリュー商品も含めたPB商品で構成された率は20%増加しているのです。つまり、惣菜でPBを買った人ほど、他の商品でもPBを買っているということです。

しかも、その構成された率が増加しているお客様は、定着顧客の69%も占めています。

商品軸から顧客軸へ

こうやって見えてくるデータはPOSで分析をしたものとは大きく異なりますよね。顧客を起点にデータを分析をし、そこから戦略を分析するわけです。

これまでは、産業化で大量に物を動かし、その売れた数を追いかけていました。けれど、データの引き出しが変わってより人間的で、生産性の高い処理に近づいたのです。

だから、逆にいうと、彼らは「アイイオン」を軸に、極力、そのリソースを集中させて、そのデータとしての精度を高めていく。それが、結果、リアル店を含めた生産性を高めていくことになります。

何も経営を安定させるからということではなく、そのデータの分析により、顧客接点を最大化できるという視点で、ロイヤルカスタマーが大事になっているのです。

もはや小売はパーソナライズが重要です。それが全体の生産や出荷、店の体制にまで影響を及ぼし、企業としての“トランスフォーメーション”はこれからも続いていくことでしょう。

※ 本記事は有料メルマガ『週刊145マガジン「腹割って話そうぜ!」まぐまぐ!出張版』2023年3月13日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ

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image by: yu_photo / Shutterstock.com

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