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「タカラトミー」「すかいらーく」に学ぶ、令和の顧客ニーズ解決法

コロナ禍などを経験し、私たちの暮らす環境は大きく変わりました。その中で、企業が直面する“売れない”という問題にも変化が起きていると、今回のメルマガ『理央 周 の 売れる仕組み創造ラボ 【Marketing Report】』で発行人の理央周さんは語ります。どのようにすれば、客の心をつかめるのか? 実際の例をもとに解説します。

マーケティングは誰がすべきか? ~VUCAの時代に必要な顧客志向の実現方法

先日、SONYさんで、「マーケティングって何?に、答えれる人になろう」というテーマでの対談に登壇しました。

ここ数年、コロナ禍と、ウクライナ情勢によるサプライチェンーの分断、ともなっての素材不足や値上げなど、ビジネスを取り巻く環境は大きく変わりました。

外出制限による飲食店やホテルビジネスは、直接的な打撃を受けましたし、また、法人ビジネスにおいても、アポ無しでの訪問をすることも困難になり、仕入れ値も上がり、卸値を値上げせざるを得ない、といったように、これまで経験したことのない、変化に対応しなければななくなってきました。

そんな中で、“売れない”という問題も、大きく変わってきました。

単純な値引き、目新しい販促企画、といった、小手先の手法では、顧客の心が動かなくなってきたのです。

多くの企業が、この新しい売れない問題に、全社一丸となって取り組んでいます。いくつかの事例を紹介したいと思います。

まずは、子育て中の親のニーズを、ITを活用して製品に反映させた、タカラトミーの事例です(以下、日経新聞23年3月24日か抜粋)。

<最近のパパとママは忙しく、なかなかゆっくり読み聞かせができない。

そんなニーズを受け、タカラトミーが2022年9月に発売したのが、読み聞かせスピーカー「coemo(コエモ)」だ。

スマートフォンにAI(人工知能)音声合成技術「コエステーション」と、スピーカーと連動する、コエモアプリをインストール。

次に両親や祖父母などの利用者が、コエステーションに声を録音し、アプリと連動させる。

アプリには「赤ずきん」「裸の王様」といった、童話など60のコンテンツが入っており、好きなコンテンツをスピーカーに送信。

すると、登場人物ごとに、パパやママそっくりの声で子供に物語を聞かせれる。>

この新製品は、「いない時にも自分たちの声で、読み聞かせしたい」という顧客層の潜在ニーズを、ITの力で実現しました。

ニーズを見つけ、製品に反映させたいという、元の発想はマーケティング志向です。

実現のためにどうすればいいのか?を、考え具現化していくのは、製品開発や技術部、ITといった部署と、マーケティング部の“協業”になります。

マーケティング部が、「親の声を一度吹き込めば、その声で、物語を読み聞かせれるように、できないものかな?」と打ち上げた時に、マーケティング部以外の部署に、顧客視点が浸透していれば、「それ面白いね。やってみよう!」となりますよね。

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すかいーくHDのDX事例

もう1つ、すかいーくHDの事例を紹介します。

ガストでは、深夜営業を再開しました。この背景には、以下のような理由があります(23年3月22日のITmediaビジネスの記事より)。

<なぜ、一度廃止していた深夜営業を復活させたのか。同社の広報担当者は、「ポストコロナで、深夜の需要が回復した。働いている方を中心に、“夜に食事ができる場所が少ない”という不満がある。社会的なニーズに対応するためだ」と説明する。>

深夜営業を再開できた、1つの大きな理由は、ファミリーレストランの、ガストのネコ型の配膳ロボットでしょう。

ガストは、社員確保が難しいこと、人件費の高騰もあり、この自動配膳のシステムを導入しました。

いわゆるDXですよね。

23年3月22日のITmediaビジネスの記事によると、「導入した3,000台のネコ型配膳ロボットも活躍している。ロボットが活躍することで、ガストでは片付け時間が35%、歩行数が42%それぞれ削減されたという」とのこと。

この事例も、先程のタカラトミーと同じように、マーケティング的な発想で見つけた、顧客の潜在ニーズの実現に、障壁となる人材難を、ITの力で解決したのです。

このように、新しい取り組みの起点になるのは、マーケティング的な、顧客ニーズの解決です。

そしてその実現においては、ITの力、財源、人員の確保といった、企業が持つ、ヒトモノカネの、経営資源が必要になります。

ここでのポイントは、「マーケティングは、マーケティング部だけの仕事ではない」ということです。

市場の分析や推測、顧客ニーズの汲み取りや、差別化、ターゲティングなどの実務は、マーケティング部の仕事です。

しかし、それ以外の部署が、「なぜ、マーケティング部の戦略が、うちの会社に必要なのか」「この施策を実施すると、うちの会社はどうなるのか」というマーケティング的発想を、理解できていると、社内での企画実現もスムースになり、画期的な製品やサービスの開発にもつながります。

ヒューレット・パッカードの創業者の、「マーケティングは、マーケティング部だけに任せるには、重要すぎる」と言ったのは、今の時代、まさに的を射る言葉だと言えます。

もしあなたの会社の製品が、値引きしないと売れない、とか、いつも商談の最後でひっくり返される、という問題を抱えているのであれば、一度、部署を横断して、マーケティング、特に顧客視点の重要さが、社内に浸透しているのか、をチェックしてみるといいでしょう。

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image by:TK Kurikawa

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ビジネス・仕事に大事なのは、情報のキモに「気づき」どう仕事に「活かす」かです。トレンドやヒット商品には共通する「仕掛け」と「思考の枠組み」があります。このメルマガでは、AI、5G、シェアリングなどのニュースや事例をもとに、私の経験とMBAのフレームワークを使い「情報の何に気づくべきか?」という勘どころを解説していきます。現状を打破したい企画マン・営業マン、経営者の方が、カタくなっている頭をほぐし情報を気づきに変えるトレーニングに使える内容です。

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