ウクライナへの蛮行を続けるプーチン大統領が、唯一耳を傾けると言われる習近平国家主席。そんな習氏率いる中国に対して、欧州各国がウクライナ戦争の和平提案を期待するなど、国際社会の重心が徐々に中国に傾きつつありますが、その先にはどのような事態が待ち受けているのでしょうか。今回のメルマガ『国際戦略コラム有料版』では日本国際戦略問題研究所長の津田慶治さんが、「自国が世界の主役」と中国が判断した場合に起こりうる局面を解説。さらに中東で戦火が上る可能性についても考察しています。
中国への期待と危険性
中国は、米国流世界秩序を崩すために、欧州との関係を構築したい。そのためには、影響力のなくなったロシアへの対応を厳しくする必要がある。
このため、中国の国連大使は、「中国はウクライナでの紛争を支持しないし、クリミア半島をロシア領と認めないし、秋の住民投票は違法だとみて、ロシアに軍事支援はしない」とした。というように中国は中立的な立場にするしかないようだ。
その上、2023年の中ロ共同声明にある限界なき共同関係とは、修辞的な言葉であり、実体は中ロの協力関係であり、それ以上ではないとも言う。核拡散についても反対して、ロシアのベラルーシへの戦術核配備に反対の立場を述べている。
逆に、フランスも、2024年トランプ大統領になった後を考える必要になっている。このため、マクロン大統領は訪中したのである。2024年までには、ウクライナ戦争を停戦にして、トランプ政権になった米国がウ軍支援を抜けた後、欧州だけではウ軍支援はできないからでもある。
このため、中国の和平提案を期待している。
マクロン仏大統領は、「ロシアを理性的にし、すべての人を交渉のテーブルに戻すうえで、あなたを頼りにしている」と習近平に伝えた。これに対して、習近平は、中国とフランスには世界の平和を守る「能力と責任」があると述べた。
フォン・デア・ライエンEU委員長は、中国がロシアに武器を提供すれば国際法違反となり、欧州連合EUと中国の関係を「著しく損なう」ことになると強調した。
そして、4月6日に習近平主席との会談で、フォン・デア・ライエンEU委員長は、台湾問題を提起したのに対し、マクロン仏大統領は、台湾に触れなかったばかりか、持論である米国とは一線を画す政策「欧州の戦略的自立」を繰り返した。
これに対して、習近平は「条件とタイミングが合えば」ゼレンスキー氏と話す「意思があると表明した」。ただ、「ウクライナの情勢は複雑で、今のところ平和的解決の見込みはない」と発言。ロシアには戦争を続ける以外の「選択肢はない」と付け加えた。
中国は、ロシアに対して、ウ軍の春大攻勢でロ軍敗退が、ある程度見通せた時期に、仲裁案を出すとみる。その時期まで様子見だ。
ロシアが民主化するのも困るので、ロシアがウ軍の攻勢で負けそうになったら、停戦を呼びかけて、専制主義国家ロシアを守るしかないが、中国の選択も難しいことである。停戦までに、ロシアがクーデターで民主国家になる可能性もあるし、ロシアが分解して、多くの民主国家になる可能性もあるからだ。
このような中国に対して、ウクライナのポドリャク大統領府長官顧問は、中国はロシア・ウクライナ戦争で積極的に自らを示していくのか、あるいは傍観するのか、選択すべきだの考えを示した。
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現在、中国が世界秩序変革の主役として行動を起こしている。ブラジルのルラ大統領は、海外との決済に全面的に、人民元決済システムCIPSを利用するし、フランスの石油企業であるトタルも人民元での決済をするとした。
また、ロシアはルーブルでの決済ができない場合は、人民元を利用など、世界的にドル決済システムSWIFTの利用が減ることになる。ドルが世界の基軸通貨ではなくなる方向である。
また、中国が肝いりで進める上海協力機構に、サウジが加盟表明し、イランが正式加盟し、エジプトとカタールも加盟するとした。
台湾情勢では、前総統の馬氏が中国に訪問し、蔡英文総統が米国経由で、南米を訪問後、帰りの米国ではマッカーシー下院議長と会談した。中国は、これに対して制裁を仄めかしていたが、台湾海峡に空母を送ったが、あまり大きな圧力にしなかった。しかし、その後、中国軍が台湾周辺で大演習を8日から10日に行うとした。
この理由が、欧州から、フォン・デア・ライエンEU委員長が来たからのようで、帰ったら本格的に軍事演習をするが、台湾包囲作戦であり、戦争を始めることもできるような攻勢である。中国は、自国が世界の主役となったと判断したら、攻撃してくる。米国は何もしないと、中国は台湾併合に動くことになる。
このため、米国防総省は8日「中国の台湾に対する軍事、外交、経済、法的な圧力を懸念しており、(軍事演習を)注視している」との声明を出したが、軍事的行動も必要である。台湾軍の地対艦ミサイル部隊も戦術位置に移動を展開した。戦争一歩手前の状況だ。
世界情勢は、米国と中国が中心である。しかし、米国の意図とは大きく違う世界の動きにもなってきている。徐々に重心が中国に傾いている。非常に危険な状況になっている。
欧州は米国の今後に疑念を持っているからである。トランプ氏が大統領になったら、欧州切り捨てを行うことは確実であり、欧州も準備が必要になっているからである。
逆に、サウジは、今のバイデン政権がサウジを蔑ろにしていると感じて、中国を介して、敵であるイランと和平を行い、米国の意向とは反対のことを行っている。このため、トランプ氏が大統領になれば、親米に復帰する可能性もある。
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イスイラ戦争か?
イスラエルは、イランの核兵器開発に危機感を抱いているが、ここ数日、イスラエルにロケット弾が、ガザからとレバノンから発射されている。8日には、シリアからイスラエルに向けてロケット弾3発が発射された。裏でイランが関与しているようだ。
レバノン南部からのロケット弾攻撃に関与したとみられるイスラム組織ハマスへの報復として、パレスチナ自治区ガザに空爆した。レバノンのヒズボラがロケット弾を発射したのに、それをハマスがしたとイスラエルは強弁している。
レバノンのヒズボラを相手にしたくないからで、過去イスラエルがレバノンに侵攻した作戦の失敗に懲りているからだ。
本来、イスラエルは、イラン攻撃をする予定が、サウジとイランの和平合意になり、孤立する可能性があると、一旦攻撃を中止したが、イランは核濃縮を80%まで高めている。このため、核兵器に必要な90%以上に、限りなく近づいている。タカ派のネタニヤフ首相は、イラン攻撃のチャンスを狙っている。
しかし、イスイラ戦争が中東で起きると、ホルムズ海峡の封鎖になり、アジア圏での石油不足が起きることになる。イスラエルは、キプロス沖での石油・天然ガス田があり、自国の石油供給には問題が出ない。
このため、日本はサハリン2の天然ガスの輸入を止めることができない。それも、欧米が定めた上限価格の上で買っている。サハリン2への投資も行っているし、水産物の輸入も止めないし、中古自動車の輸出も止めない。その理由がイスイラ戦争での中東石油輸送停止による石油不足が起きるからである。米国も日本にロシアからのLNG輸入を認める理由でもある。
中国やインドがサウジの石油だけではなく、ロシアから石油を買う理由でもある。イスラエルのイラン攻撃を世界が危惧している。このため、中国はイスラエルの裏をかいて、イランとサウジを和平させたのである。世界の目はイスラエルの動きに集まっている。
というように、2024年までの戦争と選挙により、世界が激動の時代になってきたと、ヒシヒシを感じている。
さあどうなりますか?
(『国際戦略コラム有料版』2023年4月10日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)
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