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「エリート街道」の終着点に問題。日本の経済が停滞し続けるワケ

広く教育が行き届いているはずの日本の経済が30年も停滞しているのはなぜなのでしょうか。この疑問の答えが「エリート街道」を進む人たちの行き着く先にあると考えるのは、メルマガ『東南アジアここだけのお話【まぐまぐ版】』著者でマレーシアに11年以上滞在する文筆家で編集者の、のもときょうこさん。受験エリートたちのほとんどが、官僚を含む勤め人か資格が必要な士師業を目指し、起業家を志す人が少ないと指摘。その背景として、偏差値至上主義による塾通いが当たり前になったことによる影響ではないかと分析しています。

なぜ高学歴社会と経済発展が結びつかないのだろうか

教育について話してみると、日本の教育はレベルが高いはず、とおっしゃる方、多いのですね。確かに、PISAランキングなどの標準化テストをやってみると、中国やシンガポールなどの東アジア勢には劣るものの、相変わらず、割と上位にいます。(このPISAランキング自体が古いのでは、という話は集英社新書の「子どもが教育を選ぶ時代へ」に書いています)。

ところが、その日本でなぜか、経済が30年も停滞しています。「学力は経済力とは別のものだ」とおっしゃる向きもあるでしょうが、多くの人が「良い大学に入って、良い会社に入って、良い暮らしをするために」大学に行くとしたら、これまた不思議です。

では、この高学歴偏差値社会を「勝ち抜いた」人たちは、いったい何をしているのでしょうか。今日のテーマはこれです。

学歴と経済がなぜ結びつかないのかの仮説

同じように学歴と経済について書いたQuaraの回答がなかなか面白いなと思いました。日本経済がここまで停滞してしまったのは、みんなが目指す「私立高校→東大卒」の人の進路が安定した「資格職」や「会社員」になっていってしまうから、という話です。

数十年前、東大などの名門大学に入って成功する人は地方の公立高校出の人が多かったにも拘らず、今は都会の私立学校出身の人が多くなっていることは、教育格差の再生産が進んできたことの証左ですか? – Quora

本質的問題の核心に迫った鋭い質問だと思います。
教育格差と言うより、日本全体の凋落=日本とその他先進国との国力格差が進んだ元凶です。数十年で一気に広まった一見典型的なエリート街道は、実は日本の価値を創造する本当のエリートは創造しないのです。つまり教育落差の証左です。

この回答を読むと、停滞が始まったのがちょうど私の世代です。「エリート街道」には起業家も、研究者も少ないというのです。

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以下は有名企業の社長の学歴です。

以上、日本のクリエイティブな成功者を見てきましたが、必ずしも都会の私立学校→東大出の成功者の経歴は多くないですよね。いやそれどころかゼロです。

以来、高偏差値の大学や高校こそ名門と盲目的に捉える偏差値信仰が広まっていったのです。これが主に1980年代、1990年代以降のことです。
https://core.ac.uk/download/pdf/147574743.pdf
あれ?なんだか見事に受験偏差値が始まった受験生の世代と、日本の凋落=失われた30年がモロかぶりしてますよね。でもこれは一切偶然ではないと思います。

受験戦争の結果、みんながなりたがるのは「安定したサラリーマン」または「資格職」なので、会社を作る人(起業家や研究者)がいない。だから、社会が伸びない──そう言われてみると、私の周囲にも起業家や研究者は少なかった気がします。

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みんなが会社員になりたがる不思議な国

80年、90年というと、まさに私が学生だった時代が被るのですが、実際に早稲田大学の同級生を見ていても、多くが就職活動で会社員か資格職、安定を狙って銀行や証券会社に就職していきました。

もしくは弁護士などの士業です。当時はITなんてむちゃくちゃ蔑まれていた時代で、IBMやNECに行くと「なんで???」と聞かれました。退職して「外資系」にいったり、「起業」なんてするのはとんでもない、と思っている人が、まだまだ私の世代には多いと思います。

90年代のインターネットが広まった頃に、熱狂していたのは、アウトロー的な若者たちでした。アスキーの西さんも大学中退組ですし、当時のコンピュータはイロモノ扱いでした。だからこそ、私が会社を辞める時には風当たりがむっちゃ強かったのです。そういう時代だったのです。

一見したエリート街道は、安定職と言う守りの人生を進むのは得意なのですが、一から始めるスタートアップや創造性の突出したノーベル賞受賞者は輩出しない傾向にあります。創造とはどれもリスクを取る作業です。No risk, no return そして No pain, no gain です。全部トレードオフです。

みんな塾のマーケティングに踊らされすぎではないか、と私は思ってしまいます。公立学校が古い教育をしているのはおそらく事実でしょうが、私立の方も同じ指導要綱を使っているので、五十歩百歩では。それよりも、子どもの時期から塾に行かせて自由時間がなくなった結果、ほぼ「全員」リスクが取れなくなっているのが、現在の日本の姿なのかなと思いました。ご意見あればぜひ伺いたいです。

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image by: Shutterstock.com

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文筆家・編集者。金融機関を経て95年アスキー入社。雑誌「MacPower」を経て以降フリーに。「ASAhIパソコン」「アサヒカメラ」編集者として主にIT業界を取材。1990年代よりマレーシア人家族と交流したのときっかけにマレーシアに興味を持ち11年以上滞在。現地PR企業・ローカルメディアの編集長・教育事業のスタッフなど経てフリー。米国の大学院「University of the People」にて教育学(修士)を学んでいます。 著書に「東南アジア式『まあいっか』で楽に生きる本」(文藝春秋)「子どもが教育を選ぶ時代へ」「日本人には『やめる練習』が足りていない」(集英社)「いいね!フェイスブック」(朝日新聞出版)ほか。早稲田大学法学部卒業。

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【著者】 のもときょうこ 【月額】 ¥1,320/月(税込) 初月無料 【発行周期】 毎週 木曜日

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