世界情勢の影響で物の値段が上がり、飲食店でも値上げを余儀なくされています。無料メルマガ『飲食店経営塾』の著者で飲食店コンサルタントの中西敏弘さんは、値上げをすることには問題はないけれど、「大切なことを忘れている店がある」と、実体験を踏まえて語っています。
「利益」ばかりに目がいって、「価値」の提供を置き忘れていませんか?
先日、あるイタリアンのお店に訪れたとき。
その店は、ピザが美味しくて、僕自身デリバリーでもたまに注文するお店です。デリバリーでもいいのですが、やはり、焼き立てのピザは美味しくて、久々に知り合いと2名でお店に伺いました。
席に通していただき、メニューを拝見。グランドメニュー以外にもおすすめのメニューもあり、興味津々で見ていました。
ただ、少し気になったのが、「値段の高い商品が多いなあ…」と思いながら、前菜やサラダ、オーブン料理、そして、ピザ。こんな感じで注文を済ませました。
最初にポテトサラダが来ました。「本日のポテサラ」とメニューに記載されていたので、「どんなものだろ」と楽しみにしながら注文しましたが、味はまずまずでしたが、値段の割にボリュームがイマイチで、それに…。
「まあ、ポテサラなのでこんな感じだよね」なんて言いながら、食事を進めます。いつもは、レモンサワーが最近のお気に入りですが、今日はイタリアンなので、久々に赤ワインを注文。たしか、売価4800円(税抜き)だったと思います。
赤ワインを飲みながら、少しずつ酔いが回ってきましたが、コンサルタントという仕事をしているせいか、どうしてもお店の色々なところが気になります。
・スタッフの人数が多いなあ。しかも、まあまあサボっているし…
・トイレに行ったら、大きなゴミ箱があり、それが手拭きペーパー入れ。こういうものは、やはり、蓋つきでゴミがあまり見えない方がいいよなあ…
・スタッフの返事が少し気になる。多少怒り気味での返事だなあ…
・テーブルが狭いのに、空いた皿もあまり下げてくれないなあ…
なんて、職業病を発揮しながら食事をすすめていると、メインのピザがやってきました。
でも、なんかいつもと違う。イマイチ、生地の味もソースも違うような…。
と、約1時間半ぐらい店にてワインもなくなったので、お会計。すると、お~っと、びっくり!!!想定の1.5倍ぐらいの価格ではないか!確かに、ボトルワインを頼んだけれど、でもやっぱり高い。
知り合いと「いや~高かったね~。これじゃ次行かないね」と話しながら店を出ました。
この1~2年色々なものの値段が上がって、飲食店にとっては、客足は戻りつつあったものの、原価が上昇したり、経費(電気、ガス)も値上がり。こんな状況なので、多くのお店が「値上げ」をしています。
「値上げ」自体悪いことではありませんが、今回のお店で感じたのは、「価値」がないとどうしても高く感じてしまうということ。
お店の価値は、最後に「お金を払ったとき」に特に感じます。店側からすれば、「これぐらいの価格でないと利益がでない」と思うかもしれませんが、お客様側からすれば、それは関係ありません。値段に見合った価格であるかどうかで判断します。
今回は、厳しい言い方ですが、全く「価格に見合った価値がない店」と言わざるを得ませんでした。
値段が上がるというのは、商品そのものに対しての目が厳しくなります。単に美味しいだけでは物足りなく、盛り付けやボリューム感、ストリー性、などなど味以外のものへの要求も無意識のうちに高くなっています。また、商品以外のモノ(接客、店内の清潔感、スタッフの態度など)もすごく気になります。
これらすべてに対して価格と比較して、「納得感」があるかどうかがとても大事。「納得感」や「期待以上」であれば、再来店しますが、それ以外は違う店に行こうって必然的になりますよね?お客様自身も様々な費用が値上がりして、せっかくの外食なのに損したくありませんからね。
今は、多くのお店で「利益」を確保するために、値上げをしています。先述した通り、値上げ自体は悪いわけではありません。大切なのは、その商品に「価値」があるかどうかです。
そして、利益が最も大切ですが、売上がなければ、利益は生み出すことができません。利益ばかりを意識しすぎて、お客様満足度が下がってしまえば、客数がどんどん減少し、売上が低下するだけです。
利益も大切だけど、「価値」がある店、商品になっているか?皆さん、改めて検証してみてはいかがでしょうか?
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