一本化されていないロシアと中国。人工衛星打ち上げを「予告」した金正恩の狙い
by 『宇田川敬介の日本の裏側の見えない世界の話』
5月31日、北朝鮮が人工衛星を打ち上げました。今回は、異例ともいえる打ち上げの「事前予告」をしたことでも話題になっています。北朝鮮が取った行動の狙いとは?メルマガ『宇田川敬介の日本の裏側の見えない世界の話』の著者でジャーナリスト・作家として活躍中の宇田川敬介さんは、北朝鮮の行動を、実は「一本化」していないロシアと中国を繋ぐためのものだったのではないかと考えています。
北朝鮮が「人工衛星打ち上げ」を失敗した件の奥の事情 なぜ南に撃ったのか
5月31日に北朝鮮が「軍事用」の「人工衛星の打ち上げ」を、それも事前に予告し、なおかつ落下物の区域を設定して警告したのちに、打ち上げたのです。
失敗したということは、別にしても、事前にこのような手続きをしっかりと行った事は珍しいことになります。
そこで、その内容についてお話して見ましょう。
さて、ここで北朝鮮が本当に「アメリカと対立関係にあるのか」ということを検討しなければならないのかもしれません。
日本の報道機関は、常に「勧善懲悪」というか「善と悪」というような二元論的な報道をしてしまいます。
そのために完全に「二元論」にならない、中道の報道は日本の報道機関は苦手であるということが言えます。
日本の報道機関は多元論的な報道が本当にできないので、日本の政治の記事に関しても「与党vs野党」というような内容でしかできていないのです。
なぜ野党に多くの政党があるのか、また、なぜ与党に自民党と公明とがあって、その違いが何なのか、ということも全くうまく報道をされてないということになります。
さて、このようなことを言うのは「ロシアと中国」は必ずしも「一本化されていない」ということを見なければならないと思います。
要するにロシアと中国は「どちらが上なのか」ということで対立を続けているのです。
そして北朝鮮は、そのどちらかにつくというようなことになっています。
これはNATOというような条約機構がありながらも、イギリス・フランス・ドイツがすべて別な立場で物事を行っているのと同じです。
そのように考えれば、中国とロシアが「反アメリカ」ということでは同じかもしれませんが、しかし、その他の分野では対立するところも少なくないということになるのです。
その微妙なときに、軍事衛星を打ち上げるということになります。
さて、中国は現在台湾侵攻をすると噂されています。そこにアメリカも様々な手を打っています。
そのような所に北朝鮮がミサイルを撃ち込んだらどのようになるのでしょうか。
そのうえ、そこにロシアが関係していたらどのようなことになるのでしょうか。
そのようなことを危惧して、先に中国やアメリカに対して「飛翔物が飛んでも敵対する意思があるわけではない」と言うことを先に表明していたということになります。
同時に、その内容は、ロシアに関係しているということを、示唆しているということになるのではないでしょうか。
逆に、そのことがクローズアップされれば、ロシアがウクライナとは別に東シナ海や南シナ海に介入するというようにも見られることになり、窮地に立たされることにもつながります。
また、微妙な関係である中国との関係を見れば、中国からの支援が細くなる可能性もあるのです。
そのように考えれば北朝鮮は「ロシアの立場」を考えて事前の予告をしたということになるのでしょう。
では、その結果はどのようであったのでしょうか。
上記にあるように「二段ロケット」であるということは大陸間弾道弾と同じような構造になっていて、その二段目で進路を変えるというような形になっています。
つまりかなり複雑な内容になります。
応用すれば、北朝鮮から南シナ海方面を経由して中国を攻撃することも、台湾を攻撃することもできるということになるのです。
そのような内容を、見せないようにするために、そして、北朝鮮とアメリカが対立していることを誇示するように、今回の発表がなされたのです。
つまり北朝鮮が反アメリカの鎹的な内容になって、決して一枚岩ではないロシアと中国を繋いでいる姿を見ることができるのではないでしょうか。
(メルマガ『宇田川敬介の日本の裏側の見えない世界の話』2023年6月5日号より一部抜粋。続きはご登録の上、お楽しみください。初月無料です)
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image by:Salma Bashir Motiwala