世界の食糧生産の三分の一をミツバチに依存していることをご存知ですか? そのミツバチが絶滅しつつあるとして、世界ではミツバチを保護しようとする動きが出てきています。その詳細について、無料メルマガ『キムチパワー』で韓国在住歴30年を超え教育関連の仕事に従事する日本人著者が語っています。
人類の食卓まで脅かす恐れがあるミツバチ減少
ミツバチが消えつつある。ミツバチの減少は単に個体種に対する被害にとどまらず、人類の食卓まで脅かす恐れがある。ミツバチは植物の花粉を運ぶ役割をするからだ。世界の食糧生産の3分の1がミツバチに依存している。
生物多様性科学機構(IPBES)によると、この50年間、動物受粉に依存する農業生産量は300%増加したが、受粉媒介種の40%は絶滅の危機に瀕している。同期間、ミツバチの寿命も半分に短縮された。その原因として気候変動や殺虫剤を使う農業方式、害虫や病気などが挙げられている。これを受け、科学者たちがミツバチの再生に乗り出した。病気を予防するワクチンや蜂の巣を管理するロボットを開発するやり方だ。
オーストラリアのカーティン大学研究陣は6日、国際学術誌「太平洋保全生物学と都市生態系」に発表した論文で「都市化による生息地減少で野生蜂が減る状況で蜂の選好度を理解することが必須だ」として「蜂が好む植物を探した」と明らかにした。
研究陣は大都市パース内の14の場所を調べた。彼らは蜂がどんな花を探しているかを記録し、オーストラリア在来蜂を引き付ける花10種を探した。いずれも土着植物で、主にユーカリのようなメッキ羊科植物と豆科植物だった。在来蜂の70~80%がこの植物を訪れたことが分かった。また、在来花の割合が高いほどミツバチの繁殖成功率も高くなることを確認した。
ミツバチを天敵や病気から保護しようとする研究も出ている。米国バイオ企業「ダランアニマルヘルス」は今年初め、米国農務省から世界初のミツバチワクチンを条件付き承認された。感染するとミツバチの幼虫を腐らせる「アメリカ腐蜂病(Americanfoulbrood)」を防ぐためのワクチンだ。まだ治療法がなく、感染すれば蜂の巣を燃やして取り除かなければならない。同社が開発したワクチンは女王蜂の餌であるローヤルゼリーにアメリカ腐蜂病を起こすバクテリアを非活性化して混ぜたものだ。女王蜂の卵巣にワクチンが蓄積され、幼虫はアメリカ腐蜂病に対する免疫力を持って生まれてくる。
オーストラリア・シドニー大学の研究陣はミツバチに害を及ぼす「バロアダニ」と「小さな蜂の巣甲殻類(ミツバチに対する害虫)」だけを殺す殺虫剤を開発した。バロアダニはダニの一種で、ミツバチの体にくっついて血を吸って各種ウイルスを移す。「小さな蜂の巣甲殻類」も卵を殺して蜂の巣を破壊する害虫だ。研究陣は害虫に必須な昆虫ホルモンである「エクディソン」の受容体タンパク質作動を抑制するがミツバチの該当タンパク質は影響を受けない殺虫剤を開発した。益虫は害さず害虫だけを標的にしたわけである。
ロボットもミツバチの再生に参加した。米国企業「ロボロイヤル」はミツバチの個体数を増やし受粉効率を高めることができるロボットを開発した。ごく小さなロボットに人工知能(AI)を結合した。
ロボットはミツバチの個体数増加に最も重要な女王蜂を管理する。例えば、ロボットは女王蜂の餌を提供し、女王蜂の身だしなみをきれいに管理しながら働き蜂にフェロモンを渡す役割をする。まだ開発段階だが、近いうちに8台をガラス瓶の中の蜂の巣に配置するテストを行う計画だ。
ロボロイヤルは「機械学習などを通じて女王蜂を管理する方法を漸進的に学習する」と話した。女王蜂が卵を産む過程を最適化し、個体数を増やすということだ。米ハーバード大学など他の研究機関もミツバチを助けるロボット蜂を開発している。
日本の場合は幸い、在来種であるミホンミツバチは絶滅危惧種指定にはなっていないようである。日本の場合、養蜂業の衰退に伴ってセイヨウミツバチの飼育数が減ったため、ニホンミツバチは以前よりむしろ増えたと言われているという報道もある。韓国はミツバチの減少が深刻な状況である。なんとか絶滅を回避し元気なミツバチが飛び交う山野を回復してほしいところだ。(朝鮮日報参照)
(無料メルマガ『キムチパワー』2023年6月15日号)
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