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AIを“迷惑な存在”だと思っている人は、みんな「仕事で成長したくない」説

「AIに仕事を奪われるからAIを規制すべき」という意見まで出てきている現代。本当にAIがあなたの仕事を奪うのでしょうか? メルマガ『j-fashion journal』の著者でファッションビジネスコンサルタントの坂口昌章さんは、そういう発言をする人の「仕事に対する考え方」がそう思わせている原因かもしれないと鋭く指摘しています。

「AIに仕事を奪われる」と考える人達

こんにちは。

未だに、AIに仕事を奪われるという話題がなくなりません。AIを規制すべきだ、という意見もあります。

まだ出てきたばかりのAIがそんなに怖いのでしょうか。むしろ、現段階では、皆でAIを使いまくって、その可能性について考えるべきだと思います。

人間の知能を超えるのか、といっていますが、人間の知能ってそれほどのものでしょうか。人間の知恵が足りないから、いろいろな問題が解決できないのではないでしょうか。

そんな問題意識を元に、今回もあれやこれやと考えてみました。

1.誰かに指示される仕事

あなたは自分で仕事を決めていますか。それとも、社長や上司に指示された仕事をしていますか。

自分で仕事を決めている人なら、AIに仕事を奪われることはありません。仕事にAIを使えばいいのです。AIを使って効率が10倍になるのなら、あなたは10倍の仕事ができます。

AIのお蔭で、自分の仕事の時間が10分の1になれば、他の仕事をすればいいのです。

しかし、誰かに指示された仕事をしている場合、仕事を指示する人の能力次第で、あなたの仕事が増えたり減ったりします。

そもそも我々は完璧な仕事をしているのでしょうか。営業や販売の仕事なら、もっと商品知識を身につければ、顧客に喜んでもらえるはずです。商品について詳細な情報を持つことで、顧客とのコミュニケーションが深まるかもしれません。

それが分かっていても、社員の数が足りない、時間が足りない、という理由で最低限の仕事に限定されています。仕事として取り組まなくてもいいことになっています。しかし、本来はやるべき仕事なのです。

現在は、「やるべき仕事ができていない状態なのだ」、と認識していれば、AIは大歓迎でしょう。AIを活用することで、本来の仕事ができるかもしれません。

しかし、現在の仕事が全てで、それ以上仕事を増やしたくないと思っている人は、AIを迷惑な存在と考えるでしょう。

日本人社員のライバルはAIだけではありません。外国人労働者が自由化されれば、外国人に仕事を取られるかもしれません。取られるというより、あなたに仕事をする資格があるのか、が問われます。しかし、これまでは日本語の壁と法律に守られてきました。それがいつまで継続するかは分かりません。

時代は常に変化し、仕事も常に変化します。新しい技術は次々と生まれ、新しいツールも開発されています。それらを活用して仕事をするのは当然であり、AIはそれらの可能性の一つに過ぎません。

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2.プロフェッショナルな仕事

最も問題なのは、仕事に対する考え方です。言われたことをすればいい、と考えていることが問題です。

上司が全ての業務を理解しているとは限りません。また、上司の指示が最善とも言い切れません。それでも、自分が会社全体の業務を理解していれば、上司にアドバイスすることもできます。問題は成果です。上司と自分を含むチームが会社に貢献すればいいのです。

例えば、会社の存在が、時代に取り残されている場合もあります。扱っている商品のニーズが少ない。代替えのサービスが普及しつつあり、これまでのサービスのニーズが減少しているなどの場合です。

当然ですが、こういう会社は新しい商品やサービスを開発しなければなりません。しかし、多くの社員は、「新しい商品を考える暇などない。今の仕事でさえ人手が足りない」と言うのです。

これは間違っています。優先すべき仕事は新しい商品やサービスを考えることです。そのための時間を確保すること。現在の仕事を合理化することは、その前提であり、さっさと解決すべき課題です。

それなのに、現在の仕事を変えることさえしようとしない。昨日と同じ仕事を、今日も明日も続けたいと考えているのです。

海外であれば、同じ仕事を繰り返している社員の給料は上がりせん。そして、将来性のない事業は、売却されます。

現在のルーティンだけをこなしている人は、頭を使っていません。習熟した作業を繰り返しながら、更にその熟練どを高めています。現在の業務を否定し、業務の合理化を考えるという発想がないのです。ですから、次の時代に対応できる仕事を想像する、こともしません。

本来、仕事とは、自分で考え、自分で計画を立て、自分で実行し、自分で反省して、自分で次の方針を打ち出すものです。これが個人として独立したプロフェッショナルの考え方です。

AIに仕事を奪われる、奪われない以前に、やるべき仕事ができていないのかもしれません。

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3.AIは人間の鏡である

AIが人間の知能を追い越したら、人間を征服する、と考える人もいます。しかし、人間はそれほど賢いのでしょうか。人間は本当に高度な知能を持っているのでしょうか。

もし、人間の知能がまだまだ未熟であり、人間とは愚かな行為をするもの、と認識すれば、AIに対する考え方も変わるのではないでしょうか。人間の知能を追い越したところで、常識が判断できる程度かもしれません。常識人が世界制服などできるはずはないし、人類を滅ぼすはずもありません。

人類は常に、「自分は最高の存在である」、と自惚れています。そして、自分に力があれば、「他者を蹂躙し、支配したい」と思っている人も少なくありません。そういう愚かな人間は、AIに自分の愚かさを投影し、子供じみた世界制服の野望を想像するのでしょう。

人間が本当に賢ければ、自分の利益を確保することより、利益を広く配分することを優先するはずです。その方が社会は平和になるし、人間は暮らしやすくなります。もし、AIが人間より賢いなら、もっと効率的に社会貢献する方法を教えてくれるでしょう。人間の考え方が平和であれば、AIの進化は平和につながるのです。

編集後記「締めの都々逸」

「世界征服 夢みるガキが 人工知能に 怯えてる」

国内生産が中国生産に移行した時期、日本の製造業者は中国を恨みました。しかし、恨むべきは、日本に出していた仕事を中国に振った商社、流通企業、卸売企業等です。つまり、それまで日本メーカーに仕事を出していたお得意様です。お得意様に、中国に仕事を出さずに、日本のメーカーを優先してくれ、雇用を維持してくれ、と頼むべきなのです。しかし、そんなこはいえないですよね。だから中国メーカー憎しとなる。

これ、現在のAIに似ていますね。AIが仕事を奪うのではありません。あなたの会社の社長が、あなたを雇用することより、AIを使える人を雇用する方を選ぶのです。恨むなら、効率優先の社長です。AIも下請けなんですから。(坂口昌章)

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image by: Shutterstock.com

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