6月27日、歌舞伎役者の市川猿之助(本名、喜熨斗孝彦=きのし・たかひこ)容疑者(47)が、母親への自殺ほう助の疑いで逮捕されました。事件の謎はいまだに多く、父・市川段四郎さんの死亡に関して、何かしらの容疑で再逮捕の可能性を報じるメディアもあります。芸能記者歴30年のベテランジャーナリスト・芋澤貞雄さんは、“憑依型”の役者だった猿之助容疑者の才能を惜しみつつ、今後、警察がどこまで真実に迫る事ができるのかを注視しています。
週刊誌が“再逮捕”の可能性を報じる
ドラマファン…特に“役者・市川猿之助”ファンにとっては何とも悲しいニュースが飛び込んできました。
実母に対する自殺ほう助容疑で逮捕された市川猿之助こと喜熨斗孝彦容疑者が出演した『鎌倉殿の13人』他8作品を、『NHKオンデマンド』が7月1日23時59分で終了すると発表したのです。
どんな理由があれ、実母を手に掛けるという行為は許されるものではないでしょう。
そんな犯罪者の顔は見たくない…という気持ちも十分理解できますが、個人的に私は何とも複雑な心境です。
『鎌倉殿~』の、行動力はあるものの乱暴者で無学な謎の怪僧・文覚ともう永久的に会えないのか…と思うと、胸の中から何か甘酸っぱいものが込み上げてきます。
毎週欠かさず観ていた名作が、記憶からフェードアウトしてしまうのは本当に残念でなりません。
もしかしたらNHKも、ファンミーティングであんなに盛り上がった作品ですから、続編とかSPとかの構想も考えていたのかもしれません…皮肉にも配信停止を予想して注文が殺到していたといわれるDVD・Blu-rayも、今は再入荷の見込みが立っていないといいます。
『劇場版 緊急取調室 THE FINAL』(テレビ朝日/東宝)には総理大臣役で出演していた猿之助ですが、こちらは代役で撮り直すことが決まっているものの、“猿之助の代役”に役者が決まらず、総理大臣を女性にしたり、脚本自体を書き直して取り直すプランも出ているそうです。
しかし取り直すとすれば、主演の天海祐希他のスケジュールも押さえなければいけなくなるわけですから、ほぼほぼお蔵入りゾーンに突入しているような状態でしょうね。
他にも『テレビ東京』は出演部分をカットした『カンブリア宮殿』を『テレ東BIZ』で配信する事にしたり、『TBS』では『半沢直樹』の配信を停止か継続か検討中だといいます。
“作品に罪はない”とか“有料配信なら観たいと思う人が観るだけ。それを提供する側が停止してしまうのは違うと思う”等の意見も多々聞かれますが、いずれにせよ猿之助出演作品に関わった全ての関係者は今、てんてこ舞い状態でしょう。
さて、喜熨斗容疑者の逮捕を受けて『女性セブン』と『FRIDAY』は立て続けに“再逮捕”の可能性を報じています。
取り調べで、両親の死因に繋がる薬物やビニール袋、コップまでを秘密裏に処分していたことが判明した喜熨斗容疑者。
家族会議で自分が後始末をすることになったと話しているそうですが、何故自宅ではなく“自宅近くのごみ集積所”に持って行く必要があったのか…。
御両親が亡くなってしまった今、御両親が遺した文章や映像が見つからない限り“死人に口なし”です。
そこまでして何かを隠したいのかはわかりませんが、猿之助が一流の歌舞伎役者であり、一流の演者だったことは紛れもない事実です。
“憑依型”の役者であることは前出した、観ている側に鳥肌さえ立たすような芝居を見れば一目瞭然ですし、もしかしたら取調室にいる“役者・市川猿之助”を、“喜熨斗孝彦容疑者”がどこからか傍観しているような感覚さえ持っているかもしれません。
“殺人容疑をかけられている良家の子息”を演じている猿之助を楽しんで見ている喜熨斗容疑者が…。
入院先の病院で「死にたい…死にたい!」と錯乱
移送されるまで入院していた病院では、「死にたい…死にたい!」と繰り返し、半ば錯乱状態だったとも捜査関係者から聞いています。
その理由は自分だけ残ってしまったことへの後悔なのか、もう2度と舞台に上がれない無念なのか、モラハラやセクハラが公になってしまったことや離れて行った最愛の人への懺悔なのか…。
個人的には大名跡の歌舞伎一家が家族会議で“3人で死んで生まれ変わろう”を決めるのか…とさえ思ってしまいます。
輪廻転生を信じているというような話もしている喜熨斗容疑者ですが、宗教的概念や家族関係とは最も遠いポジションに位置していた役者だという印象を、私は今までの取材から勝手に感じるのです。
これからの取り調べは“肝臓がんがステージ4で要介護、認知症も発症していた”という実父の状態を見極めた上での自殺ほう助、自殺教唆、承諾殺人、殺人罪の確定が焦点になるでしょう。
限られた勾留期間の中で、捜査当局がどこまで真実に迫る事ができるのか。
また喜熨斗容疑者の口から何が真実として語られるのか…亡くなった御両親の魂が成仏できることを祈るばかりです。
プロフィール:芋澤貞雄
1956年、北海道生まれ。米国でテレビ・映画のコーディネーター業を経て、女性週刊誌などで30年以上、芸能を中心に取材。代表的スクープは「直撃! 松田聖子、ニューヨークの恋人」「眞子妃、エジンバラで初めてのクリスマス」。現在も幅広く取材を続ける。https://twitter.com/ImozawaSadao
image by:Chris 73 / Wikimedia Commons, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons