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マンションの管理員はなぜこんなにも「なり手」が不足しているのか

マンションの管理員といえば、掃除から住民の苦情などを聞いたり、理事とのやりとりをするハードなお仕事のイメージがあります。今回、メルマガ『まんしょんオタクのマンションこぼれ話』の著者で一級建築士及びマンション管理士の廣田信子さんは、そんな管理員のなり手不足が深刻であるとして、管理員の雇用形態、業務形態の見直しを今こそすべきだと語っています。

管理員さんの業務を見直すときが来た

こんにちは!廣田信子です。

管理員さんのなり手不足が深刻です。

私がかかわっている都心のマンションも今の管理員さんに何とか引き継ぎをお願いしていましたが、もう定年延長も限界で、次の候補者がみつかりそうもありません。

最近は、どの会社も定年延長での就労の要望があり、そのまま会社で働き続ける人が多いのです。

お給料は下がっても慣れた世界での仕事ですから、どうしてもそちらに流れてしまいます。

ところが、マンションの管理員さんの需要は増えています。

マンションはどんどん新築が建てられていて、ストック数は、毎年1%超の伸びを持つといわれています。

築年数がいったマンションでも、依然管理員さんの需要は大きいのです。

改めて、管理員の仕事を見ると、何だか時代の変化に合った魅力を感じないのです。

受付け業務は、IT利用で管理員がいなくても可能ですし、清掃も、掃除ロボットの利用で替われます。防犯カメラの活用で、防犯対策を進めることもできます。

工事等の立会も、ビデオ撮影を依頼すれば立ち合いが必要ありません。

IT利用、ビデオ撮影の利用の威力は大きいのです。

特に100戸未満の高経年マンションでは馴染んだ管理員さんの存在が大きいと言います。

でも、今のかなり高齢の管理員さんがやめてしまったら後はどうしたらいいかわからない状況があります。

逆に、新築の敷地が広いマンションでは、管理員さんをそもそも知らないといいます。

何か用があった時はITで繋がれるようになっていればそれで充分だといいます。

今後は、ITに強く、コミュニケーションが得意な人を雇用し、その人たちに活躍してもらうという位置づけにした方がいいのではないかと思います。

その教育をしっかりして管理員(という呼び方はやめた方がいいと思いますが)を育てることができればと思います。

私が、講師を担っている管理会社の管理員さん(女性が多い)のスタッフは優秀です。ITもでき、コミュニケーションスキルもあります。

その方々の話を聞くと、高経年マンションでは、管理組合の居住者対応に苦労しているようすが見られます。

理事長は、管理員を、いつでも自分をカバーするものとして考えているし、住民は、何でも苦情を言えばいいと思っています。

理事の中には、メールをしない人もいて、全ては、口頭か文章で伝えなければなりません。

それも仕事だと割り切ってすることも必要ですが、それに時間を使うことが果たして役に立つのかと思ってしまうこともあるといいます。

その他の仕事ができなかったり残業になってしまうこともあるのです。

40歳代より若い人ほど、その落差は大きいと感じます。

そろそろ管理員の業務を見直す時期ではないでしょうか。まず、「管理員」という呼び方を変えた方がいいと思います。

大型マンションでは、管理員と言わずに、専属のフロントスタッフがいる仕組みをとっているところも多いです。

小規模マンションは、高齢者にはたいへんでも、管理員が常駐しなくてもいい仕組み考えていくことだと思います。

時代も変わり、働く人の意識も変わります。

ゴミ出しやお掃除等をすることも仕事のマンションでは、ゴミ出しのルールを徹底してもらうこともやってみましょう。

それでやっているマンションもあるのですから。

最近のハローワーク登録者や派遣会社登録者は、やる前に吟味して何か気が進まないと思えば、そこで止まります。

人気なのは、事務所内の楽な仕事。次は、仕分けの仕事です。

倉庫内や事務所内での簡単な作業です。雨風にあたらず、冷暖房完備の場所での仕事が人気です。

それでも、やりがいのため、又は経済的な理由で、管理員の仕事をする人もいます。

そういう人に対して、どういう立場で迎えて、どいう心持ちで仕事に取り組んでもらうかを本気で考える必要があると思います。

大型マンションは基本的にフル勤務(週40時間)ですので、人が集まりやすいのですが、30戸以下のマンションは、週8時間や週12時間なんていうところもあります。

このままの状態が進んだら、小規模マンションの管理は、コストに見合う大幅な値上げをお願いし、受け入れてもらえなければ、管理会社側から契約を止めることも視野に入ります。

この状況が続けば、人で成り立つマンション管理業の健全性も、そのサービスを受ける管理組合の利益も損なわれることになります。

マンションはIT化を進めて、管理会社も変わる必要がありますが、管理組合も居住者も変わる必要があります。

普通に暮らしていれば、何か手続きが必要な時に、ITを活用できれば、あとは、ルールを守って暮らせば、特に管理会社に求めることはない…ということで、管理員業務をスリム化することが可能です。

高経年マンションも、そもそも、自分たちのマンションです。

まずは自分たちでできるだけきれいに保ち、お掃除ロボットも活用して、自分たちで日常管理をしていく選択枝もあります。

かっこいい制服をつくって、数人で回してやっていくことを考えてみたらと思います。もちろん、ちゃんとお給料を払います。

マンションには、実は遠く離れたところの管理員をやっている方もいるのです。

管理員の業務をやりがいがある仕事にしていけば、居住者の「ありがとう」の気持ちをもらえれば、自分のマンションでも可能な仕事です。

居住者は、自分たちでできることはすることとし、あとは「ありがとう」の気持ちを持つことです。

高齢になっても、何か役に立ちたい、自分の仕事をしたいと考える人は少なくないのです。

管理員業務を見直し、居住者が誇りをもって、誰かの役に立ちたいという気持ちで行え、収入にも結び付けばマンション内の人材を活用できます。

実際に、そういう仕組みを作っているマンションもあります。

管理員業務を担当する人たちは、マンションをよりよくしていこうという意思をもって本当に役に立つような活動をしています。

image by: Shutterstock.com

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【著者】 廣田信子 【発行周期】 ほぼ 平日刊

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