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日本以上に学歴偏重。中国の若者の自殺率が10年で3倍に増えた理由

日本を上回る学歴偏重社会として知られる中国。そんな隣国は今、多くの若者たちが自死を選ばざるを得ないほどの状況となっているようです。今回のメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』では台湾出身の評論家・黄文雄さんが、中国の若者たちの自殺率が急増したことを伝えるニュース記事と、彼らが置かれている過酷な現状を紹介。その上で、若者たちにとって中国は「生き地獄」でしかないと綴っています。

※ 本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2023年7月12日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はこの機会にバックナンバー含め初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:黄文雄(こう・ぶんゆう)
1938年、台湾生まれ。1964年来日。早稲田大学商学部卒業、明治大学大学院修士課程修了。『中国の没落』(台湾・前衛出版社)が大反響を呼び、評論家活動へ。著書に17万部のベストセラーとなった『日本人はなぜ中国人、韓国人とこれほどまで違うのか』(徳間書店)など多数。

中国の若者にとって今の中国は「生き地獄」

中國總自殺率下降 青少年反増3倍(中国の自殺率は下降しているが、青少年については3倍になっている)

6月23日付のCDC Weekly Reportに発表された新しい研究によれば、2010年から2021年にかけての中国全体の自殺死亡率は大幅に減少した一方で、子供と青少年の自殺死亡率は100万人あたり2人から8人へと3倍に増加したそうです。

中国の過去の国勢調査データに基づくと、2010年から2021年にかけて、全体の自殺死亡率は10万人あたり10.88人から5.25人に減少し、また、性別、都市部と農村部、25歳以上の3つの年齢層で減少がみられたものの、最年少の5歳から14歳の自殺率は2010~2021年のあいだで年平均10%と大幅上昇、2010~2017年にかけて年率6.8%減少していた15~24歳は、その後の4年間で年率19.6%増加も増加したそうです。

研究によれば、過去10年間の中国の自殺予防努力はおおむね成功していると思われるものの、中国の親や教師の間で広まっている「学校での成績が何よりも重要」という認識は若者に大きなプレッシャーを与えており、ストレスが適切に管理されていないことが、自殺リスクの増加につながっている可能性があることを指摘しています。

中国や韓国の受験地獄の凄まじさは、日本のニュースでも時たま報道されますが、受験に間に合わない受験生を、警察が送り届けるといった、日本では考えられないような光景もよく見られます。

中国の受験戦争については、このメルマガでも以前、取り上げました。中国の人生の成否は、「高考」という大学入試試験で決まるとされていますが、現在の中国の「高考」制度や公務員選抜試験制度は、社会全体で人材を選ぶ科挙制度をある程度参考にし、「高考」の成績優秀者は、科挙と同じように「状元」と呼ばれます。

【関連】中国の過酷な受験戦争。なぜ「高考」が人生の成否を左右するのか?

ところがここ最近では、激烈な受験戦争を勝ち抜いてもろくな就職にありつけず、貧富の格差が固定化していることから、学生のあいだに無力感が広がり、「頑張らずに最低限の生活だけする」ことを掲げる「寝そべり族」が若者の間で大流行しました。彼らは、「家を買わない」「車を買わない」「結婚しない」「子どもを作らない」「消費しない」「頑張らない」という6つのことを「しない」と宣言しています。

中国の過酷な受験戦争を勝ち抜いた若者が「寝そべり族」になってしまう理由

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現在の中国では若者の失業率が20%を超えており、社会不安が広がっていることは、先日のメルマガでも取り上げました。

【関連】就職先なく、死んだも同然。中国の若者たちは習近平に見捨てられた

受験戦争に勝ち抜いても、ろくに就職できないというストレスと無力感が青少年の心を蝕み、自殺率を大幅に押上げていると考えられているわけです。

一般家庭では、子供の受験のために非常に多くの教育費がかかり、それが少子化の一因になっているということもあって、習近平政権は2021年9月から、大都市の小中学生を対象に、学校の宿題と塾通いを減らすという「双減政策」を実施しました。中国の「ゆとり政策」ともいわれるこの施策は実質的な学習塾廃止令であり、学習塾が大幅に潰れることになりました。

3歳から始まる中国の受験戦争 「学習制限令」で歯止めなるか

それでも中国の受験戦争は緩和するどころか、ますますひどくなっているようです。親世代には、受験をやめれば人生の敗者になることが決定づけられてしまうという意識が強く、さらにゼロコロナ政策による経済不振により、少しでもいい大学を出ることが、生き残る唯一の方法だと考える親も少なくないからです。しかし、こうした考えが子どもたちを追い詰めているのです。

とりわけ海外留学や、海外出張によって中国を脱出することが「中国人の夢」となっている現状では、この傾向はさらに加速していくでしょう。ゼロコロナ解除で中国人富裕層の海外移住が加速していることも、これを後押ししています。

中国人富裕層の海外移住加速、巨額資本流出の恐れ-ゼロコロナ解除で

7月7日の“ボイス・オブ・アメリカ”は、中国で最近、人生に絶望を感じている若者たちが自殺するために出会い、集団自殺する傾向が広がっていると指摘しています。今年4月、福建省、河北省、河南省、四川省の4人の若者が、湖南省張家界市の景勝地である天門山に行き、殺虫剤を飲んだ後、崖から飛び降りて自殺したという事件もありました。

中国が昨年発表した『うつ病青書』では、うつ病に苦しむ人は中国で9,500万人に上り、その半数は学生で、18歳以下は全体の30%にも達しており、一般市民のうつ病が最も深刻なのは学生だと指摘しています。

中国科学院心理学研究所が2月に発表したメンタルヘルスに関する報告書でも、中国の青少年はうつ病のリスクが高いと指摘されており、その発見率は18~24歳で24.3%、25~30歳で25.3%でした。18歳から24歳のうつ病検出率は24.1%、25歳から34歳では12.3%だとしています。

まさに、中国人に生まれた悲哀を若者たちは味わっているのです。受験戦争のみならず、言論の自由もなく、自らの意志を政治に反映させる選挙制度もない中国は、若者たちにとって「生き地獄」そのものなのではないでしょうか。

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