中国の過酷な受験戦争。なぜ「高考」が人生の成否を左右するのか?

Chengdu,,Sichuan,/,China,-,June,7,2018:,Annual,Chinese
 

中国人の人生の成否は「高考」で決まると言われています。高考とは、中国の全国統一大学入試のことですが、その仕組みは日本の大学入試とは大きく異なっています。中国出身で日本在住の作家として活動する黄文葦さんは、メルマガ『黄文葦の日中楽話』の中で、高考について詳しく紹介し、なぜその制度が浸透し続けているのかについて語っています。

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「高考」は科挙制度の延長線上にある

6月、中国の「高考」の季節。「高考」とは中国の全国統一大学入試である。その仕組みとしては受験生が統一試験に参加、点数が公開された後、志望校を選ぶ。どんな大学に行けるかは得点で決まる。

一つの点数ですべてを決めるのは合理的ではないけれど。実際に中国は昔から「試験大国」であり続ける。「高考」は科挙制度の延長線上にあると考えられる。科挙(かきょ)とは、中国で598年-1905年、即ち隋から清の時代まで、約1,300年間にわたって行われた官僚登用試験である。

科挙制度は、その創設と発展の両面において、中国史上重要な人材選抜制度として、中国の封建的君主制の発展を示し、支配者が中央集権を強化し、政治的結束を固めるための強力かつ効果的な手段であったといえるだろう。

科挙制度は、古代中国で試験により官吏を選抜する制度である。名声と利益を追求した結果、すべてのものは劣るが、読書だけは優れているという信念が生まれた。学問と科挙を経て、やがて出世し、名声を得ていくのである。

科挙制度は一定の効果を発揮したものの、中国社会の進歩を妨げ、芽生えた資本主義の発展を阻害し、中国の政治、経済、文化の後進性に直結したことは否めない。

科挙の試験内容が現実の社会と著しく乖離していたため、文人は書物の知識のみに関心を持ち、社会の現実や政治・経済の発展を軽視し、さらに封建的な思考や文化、根深い封建的思想の蔓延を促した。

封建時代末期の科挙試験制度は、「四書五経」の追求と模倣に執着し、試験の内容や形式の硬直化は、「勉強オタク」の増加を招き、その後の社会変革に深刻な支障をきたし、人々の心の覚醒を促すことは困難であった。

昔から逃げ場のない貧しい人々が、良い暮らしをするために科挙で好成績を収め、官吏になる夢を叶えるために勉学に励むことが唯一の道であった。試験で他人と差をつけよう、出世しようという考えは今も続いている。

現在の中国の「高考」制度や公務員選抜試験制度は、社会全体で人材を選ぶ科挙制度をある程度参考にしているらしい。

「高考」で良い結果を出し、いい大学に入るために、親はできるだけ子供に様々な塾に通わせ、有名大学に入ることはエリート階級になることと同じである。「高考」の成績優秀者は、科挙と同じように「状元」と呼ばれる。貧しい家庭の子どもたちが、受験でよい結果を出すことで、地元を離れ、貧困から脱出すること。

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勿論、受験でうまくいかず、貧しい生活を続けなければならない学生もたくさんいる。また、家庭の経済的な事情で授業料が払えない、学校を休学せざるを得ない子どもたちもたくさんいる。大学受験は人生の唯一の出口ではないはずだが、貧しい家庭の人にとっては人生の唯一の出口となる。

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