生成AIが、文章を書くことも、志望動機を整えることも、当たり前のようにこなす時代になりました。しかし、そんな時代だからこそ、ロート製薬は採用の方法に疑問を持ち始めました。今回のメルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』の著者で健康社会学者の河合薫さんは、AI時代だからこそ「人」に会う。ある企業の決断は、これからの採用の在り方を考える上で、示唆に富んだ一歩だと感じているようです。
AI時代だからこその「人」
エントリーシート終焉のきっかけになるのでしょうか。
あの手この手で「学生」との距離を縮めてきた老舗企業が、27年4月入社の新卒採用から「エントリーシートによる書類選考廃止」を発表しました。
生成AIの普及により応募書類の内容が均質化してることが廃止の理由で、代わりに人事担当者との15分間の対面による選考を導入するそうです。
その名も「Entry Meet(エントリーミート)採用」。
AI 採用が広がりを見せる中、アンチAIに舵を切ったこの企業の名は「ロート製薬」。
12年前の2013年に「とりあえずシューカツ・とりあえず学生集める」といった「とりあえずやめます!宣言」をした創業126年の歴史を持つ製薬企業です。
私の取材メモによると、ロート製薬が学生の採用に疑問を持ったのは、2011年度の採用時です。
当時、エントリーシートなるものが就活の第一関門となり、何万通ものエントリーシートが人気企業には届いていました。
「ロート製薬に思いを持った人だけに会う方法はないか」ーー。
そんな思いでロート製薬は、就職情報サイトからのネット募集をやめ、応募を電話受け付けに変更します。その結果、学生からのエントリーが800人程度に減り学生と向き合える余裕はできたものの、「熱い思いを持つ学生」になかなか出会えなかったそうです。
そこで、2014年4月入社の新卒採用から「とりあえずやめます!」宣言のもと全国約30の大学に社員が出向き、直接会った学生からエントリーシートを受付ける採用に変更しました。
会社HPには「直接会ってお話をしたい」との言葉が大きく記されていました。
おそらくその後も、常に立ち止まり、もっといい採用方法を!と汗を重ねてきたのでしょう。
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