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HANGZHOU, CHINA - SEPT. 4. 2016 - Chinese president Xi Jinping (R) welcomes Russian President Vladimir Putin (L) in G20 summit in Hangzhou.

隙あらば沖縄を奪いにくる中国。プーチンと酷似の“狂った”領土観

長引くウクライナ戦争に関する報道を目にすると、ついつい当事者の問題ばかりを見てしまうものですが、「日本にとってはどうか?」という見方の重要性を語るのは、無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』の著者で国際関係ジャーナリストの北野幸伯さんです。北野さんは、戦争の勝敗がもたらす日本への影響と、ロシアが勝利した場合に注意したい、独裁者・プーチンと同じ“領土観”を持つ中国の危険性について解説しています。

中国が【全沖縄】を狙っている証拠

私たちは今、「ウクライナ問題」ばかり見てしまいがちです。リアルな戦争が続いているので、仕方ないでしょう。

何事も「日本にとっては」という視点をもつことが必要です。ウクライナ戦争でロシアが勝てばどうなるでしょうか?習近平は、「ウクライナを侵略したプーチンは勝った。俺が台湾侵攻を決断しても、勝つことができるだろう」となり、台湾有事の可能性が大いに高まります。そうなると日本も、アメリカと共に台湾防衛のために戦うことになる。大変です。

逆にウクライナ戦争でロシアが負け、プーチンが失脚したらどうなるでしょうか?習近平は、「ウクライナに侵攻したプーチンは負けた。俺が台湾侵攻を決断すれば、同じように負けて、失脚する可能性が高い」となり、台湾有事の可能性が減るでしょう。

結局、日本と欧米がウクライナを支援するのは、「台湾有事」「日中戦争」「米中戦争」を「起こさないため」なのです。だから、日本は、ウクライナを助けることで、「日本自身を助けている」ことになります。

「ウクライナ支援は、台湾有事を起こさないため」

この視点が絶対的に大事です。

そして、中国の動きにも、引き続き注意が必要ですね。最近、沖縄がらみで動きがあります。7月3日から7日、沖縄の玉城デニー知事が訪中しました。この訪問について、TBS NEWS DIG 7月7日を見てみましょう。

今回の玉城知事の中国訪問を前に注目されたのが、習近平国家主席のこの発言。

習近平国家主席(人民日報より)

「私は福州で勤務した時、福州に琉球館・琉球人の墓があり、琉球と深い付き合いがあることを知った」

中国共産党の機関紙「人民日報」によると、習主席は先月、資料館を視察。沖縄県の尖閣諸島は「中国に属する」との文書の説明を受けた際、かつての「琉球」との交流の歴史に言及したのです。

習近平が沖縄について、「私は福州で勤務した時、福州に琉球館・琉球人の墓があり、琉球と深い付き合いがあることを知った」と発言したそうです。これは、どういう意図があるのでしょうか?

この発言について専門家は。

林泉忠琉球大学元准教授

「玉城知事の訪中を強く意識したのではないか。沖縄を取り込むというか良い関係をつくっておいて、ある意味では日本を牽制する思惑があるのでは」

そして、日本が台湾問題に深く関わった場合には「沖縄の領有権を認めない」と主張する可能性もあると指摘しました。

林泉忠琉球大学元准教授は、

<日本が台湾問題に深くかかわった場合には、「沖縄の領有権を認めない」と主張する可能性がある>

とおっしゃっています。

 

 

「相対的」な独裁国家の「領土観」

私が本当に「嫌だな」と思うのは、「黒化勢力」「独裁国家」の「領土観」です。「俺の物は俺の物、おまえの物も俺の物」といった感じ。まさに「ジャイアン的」な「領土観」をもっています。

たとえば、「ディープステイトと戦うナショナリストの英雄プーチン」の領土観は、どうでしょうか?この方は、2008年時点で、「クリミアはウクライナ領であると」断言していました。証拠動画もあるので、特に「親プーチン派」の人は、注目してみてください。英語の字幕がついていますので、ロシア語がわからなくても理解できるはずです。

● Неужели это Путин? – “Крым не является спорной территорией”
https://www.youtube.com/watch?v=i_yhNBBvt6k

この動画の中で、プーチンは、「クリミアは、係争地ではない」と断言しています。「ロシアはかなり前に、今のウクライナの領土を承認した」とも。ところが、このインタビューから6年後、プーチンはクリミアを奪いました。

その後は、「ルガンスク、ドネツクのロシア系住民を救わなければ!」などといいながらウクライナに侵攻した。そしてちゃっかり、ルガンスク、ドネツクだけでなく、ザポリージャ州、ヘルソン州も併合したのです。どういう根拠で、ザポリージャ、ヘルソンを併合する!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?「親プーチン派」の人たちは、「英雄」のこの動きをどう説明するのでしょうか?

さらにロシアは、【 北海道はロシア領だ 】という主張をはじめています。ロシア政府の高官がどんなことをいっているか見てみましょう。時事2022年4月9日。

ロシアのウクライナ侵攻を受けて日本が対ロ制裁を科す中、ロシアの政党党首が「一部の専門家によると、ロシアは北海道にすべての権利を有している」と日本への脅しとも受け止められる見解を表明した。

【 北海道はロシア領 】だそうです。こういう発言をしているのは、クレイジーな下っ端政治家なのでしょうか?いえいえ。

見解を表明したのは、左派政党「公正ロシア」のミロノフ党首で、1日に同党のサイトで発表された。公正ロシアは政権に従順な「体制内野党」。ミロノフ氏は2001~11年に上院議長を務めた。(同上)

「北海道はロシア領」発言をしたのは、「元上院議長」です。いってみれば、大物政治家。そのロジックが、驚愕です。

「どの国も望むなら隣国に領有権を要求し、正当化する有力な根拠を見いだすことができる」と明言した。(同上)

これ、わかりますか?ロシアが、他国の領土を欲しくなった。その時、「正当化する有力な根拠を見出すことができる」というのです。

たとえば、プーチンが「北海道を手にいれたい」と思った。その時、「北海道はロシア領である」という「有力な根拠」を見出すことができる。要するに、「作り出すことができる」「でっちあげることができる」と。

これ、プーチンが今まさに、ウクライナについてやっていることですね。これが、「ディープステイトと戦うナショナリストの英雄の領土観」です。

そうそう、中国の話でした。基本的に中国の領土観もロシアと変わりません。

「尖閣は中国領だと主張しよう」
「沖縄は中国領だと主張しよう」

なぜ?

「欲しいから」
「奪える可能性があるから」

ということでしょう。

はっきりいうと、ロシアと中国は、同じ価値観を持っています。それは、「力がすべて」「力があれば、理由は後付けでOK」いう価値観です。

中国は、日本の【 沖縄領有権 】を認めていない!

さて、林泉忠琉球大学元准教授は、

<日本が台湾問題に深くかかわった場合には、「沖縄の領有権を認めない」と主張する可能性がある>

とおっしゃりました。これは、「そのとおりだろう」と思います。しかし、実をいうと、中国は【すでに】日本の沖縄領有権を認めていないのです。証拠もあります。証拠とは、2012年11月15日「ロシアの声」に掲載された、「反日統一共同戦線を呼びかける中国」のことです。何が書かれているのでしょうか?一部引用します。

郭氏は対日同盟を組んでいた米国、ソ連、英国、中国が採択した一連の国際的な宣言では、第2次世界大戦後、敗戦国日本の領土は北海道、本州、四国、九州4島に限定されており、こうした理由で日本は南クリル諸島、トクト(竹島)、釣魚諸島(尖閣諸島)のみならず、沖縄をも要求してはならないとの考えを示した。

どうですか、これ?中国はロシアと韓国にはっきりと、日本は【 沖縄をも要求してはならない 】と断言しています。さらにものすごい話が続きます。

こう述べる郭氏は、中国、ロシア、韓国による反日統一共同戦線の創設を提案している。日本に第2次世界大戦の結果を認めさせ、近隣諸国への領土要求を退ける必要性を認識させるために、この戦線には米国も引き入れねばならない。(同前)

中国は、ロシア、韓国に、【 反日統一共同戦線創設 】を提案しました。そしてそこには、【 アメリカ 】も引き入れなければならない。記事全文を読みたい方はこちら。

● 反日統一共同戦線を呼びかける中国
https://rpejournal.com/rosianokoe.pdf

11年前の記事ですが、中国の本質は、当時から何も変わっていません。

もちろん中国と意図的に対立する必要はありませんが、「中国は、隙あらば全沖縄を奪おうとしている」ことを、常に忘れないでいる必要があるでしょう。

(無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』2023年7月17日号より一部抜粋)

image by: plavi011 / Shutterstock.com

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【著者】 北野幸伯 【発行周期】 不定期

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