MAG2 NEWS MENU

Mother's and a child hands

自分が死んだら、残された家族はいくら遺族年金を貰えるの?

自分自身が亡くなった場合に家族にいくらの遺族年金が支払われるか?気になる人も多いのではないでしょうか。今回、メルマガ『年金アドバイザーが教える!楽しく学ぶ公的年金講座』の著者で年金アドバイザーのhirokiさんが、遺族年金について詳しく解説しています。

本人が亡くなった時に残された家族に遺族年金は支払われるかの事例

1.本人が亡くなった後の遺族の生活費が心配

自分自身が亡くなった場合に家族にはいくらの遺族年金が支払われるのか?…という相談は多いです。

やはり残された家族の生活が心配になるからですね。

自分が亡くなったらという場合はよく生命保険の話はいろんなところで話題になりますし、宣伝も多いのでそれなりの知識を持ってる人もいるかと思います。

保険会社は商売なので頑張って広告なりなんなりで宣伝して売り上げを伸ばす必要があるからですね。

そういう民間保険も大事ですが、国が面倒見てくれる公的年金の事を知った上で、死亡保障を考えると無駄に高額な保険に入らないで済むのではと思います。まずは公的な保障を押さえた上で、民間保険を考えるのが正しい順番です。

せっかく20歳以降は公的年金に強制加入させられてるわけなので…(笑)。

さて、遺族年金には大きく分けて国民年金からの遺族基礎年金と、厚生年金からの遺族厚生年金があります。

前者は国民年金加入中に死亡した場合で、後者は厚年加入中に死亡した場合に貰えます(年金受給者が死亡した場合ももちろん受給できますが今回は働き盛りの間に死亡した場合を取り上げています)。

ただし、厚生年金加入中は国民年金に同時に加入しているので、厚年加入中に死亡したら同じく国民年金加入中の死亡となったりします。

ちなみに年齢が高く、老齢に近い人ほど国民年金からの遺族基礎年金を受給できる人は少なくなります。

なぜ国民年金からの遺族基礎年金をもらう人が少なくなっていくのかというと、まず大前提として「18歳年度末までの子」がいる事が必要だからです。

年金では「子」の事を18歳年度末未満の場合としている事が多いです。また、障害等級2級以上の子の場合は20歳到達日までを「子」としています。

障害等級2級以上というのは障害者手帳の等級ではなく、障害年金を認定する時の等級と同じになります。

その「子」が居なければ国民年金からの遺族基礎年金が支給される事はありません。

よって、貰える遺族は決まっており、「子のいる配偶者」もしくは「子のみ」が貰うケースしか存在しません。

子のいる配偶者というのはシングルマザーとかシングルファザーの人であり、子のみというのは両親とは住んでいないとか両親が亡くなっているというような場合ですね。

ちなみにシングルマザーの貧困率は依然として高いので、貧困を防ぐという社会保険の公的年金の役割は非常に大きいものであります。

さて、ほとんどの場合は「子のある配偶者」に当てはまる人が受給してますが、受給するのは配偶者が全額受給します。配偶者が受給してる際は「子」への年金は停止している形になります。

もし、配偶者が受給中に再婚したとか、配偶者と何らかの事情で生活を共にしなくなった(生計を同じくしなくなった)のであれば、配偶者への年金は消滅して、「子」のみが受給する事になります。

「子」がいる事が前提という事は、国民年金からの遺族年金は子育て支援の役割もあるとも言えます。どうしても子育て中というのは多くのお金がかかるからですね。

そんな遺族基礎年金はいくらもらえるのかというと、これは誰もが金額が決まっています。

まず貰う大元の金額が795,000円(68歳到達年度以降の人は792,600円)の定額で、これは老齢基礎年金を480ヶ月間納めた人の満額と同じです。

その金額の上に、子の人数により子の加算金というのが1人だと228,700円、2人目も228,700円、3人目以降は76,200円となっています。

次に遺族厚生年金ですが、これは人によっては金額が異なります。

なぜかと言うと、過去の厚生年金加入中の給与記録(標準報酬月額)を使って年金を計算するので、条件が同じであれば給与が低かった人は低い年金になり、給与が高かった人は高い年金になります。

なお、遺族基礎年金のように「子」がいる必要はなく、遺族の範囲も広いです。

本人死亡当時に本人に生計を維持されていた配偶者、子、父母、孫、祖父母の順で、最優先順位者が受給します。ちなみに夫、父母、祖父母が受給する場合は本人死亡時に55歳以上である必要があり、実際の支給は原則として60歳からとなります。

受給する人として圧倒的に多いのが、妻ですね。妻が受給する場合は年齢制限はなく、また、夫が死亡した時に40歳以上だと中高齢寡婦加算596,300円(令和5年度価額)が加算される場合もあります。

随所に妻に有利な年金となっています。

遺族厚生年金は妻が終身受給してる場合が多いです。

まあ、遺族基礎年金も遺族厚生年金も細々とした条件がありますので、それを書くとそれだけで記事が終わってしまうので実際の事例を見ながら考えてみましょう。

2.国民年金加入中に死亡

◯ 昭和59年7月5日生まれのD男さん(令和5年は39歳)

1度マスターしてしまうと便利!(令和5年版リニューアル)何年生まれ→何歳かを瞬時に判断する方法

絶対マスターしておきたい年金加入月数の数え方(令和5年版リニューアル)

20歳になる平成16年7月から平成19年3月までの33ヶ月は大学生として学生納付特例免除を利用して、国民年金保険料を全額免除していました(将来の老齢基礎年金には全く反映しない)。

平成19年4月から平成24年6月までの63ヶ月間は非正規社員でしたが厚生年金に加入できなかったため国民年金保険料を納める必要がありましたが全額免除にしました(平成21年3月までは老齢基礎年金の3分の1、平成21年4月以降は2分の1に反映します)。

平成24年7月からは厚生年金に加入して、平成30年3月までの69ヶ月間働きました。なお、この間の平均給与(賞与込み)は37万円とします。

退職して平成30年4月から令和2年6月までは退職特例免除による国民年金保険料全額免除を利用しました(将来の老齢基礎年金の2分の1に反映)。

令和2年7月から令和5年6月までの36ヶ月は未納にしており、その後は令和5年8月に病気で死亡。

——

※ 補足

国民年金保険料の納付期限はその月の分は翌月末なので、7月分は8月末までの期限となります。

8月死亡時点では7月分の期限は来ていないので、滞納が確定してるのは6月分(7月末納付期限)までとなります。なので、6月までを未納という表現にしてます。

——

死亡時に生計維持されていた遺族は妻41歳と、子10歳と6歳の2人。

さて、遺族年金は支給されるのでしょうか。

死亡時に加入していた年金は国民年金のみの時ですね。未納中ですが、20歳から60歳までは強制加入なので国民年金加入中の死亡となります。

遺族は配偶者と子ですが、それだけでは遺族年金は支払いません。

まず、死亡した夫の過去の年金記録を見ます。

亡くなるまでにあまり未納(過去に年金に加入しなければならない期間がある場合はその3分の1を超える未納がない事)があると遺族年金は貰えない場合があります。3分の1というのは33.33%なのでそれを超える未納率はダメって事ですね。

過去の記録のうち、20歳になる平成16年7月から死亡日の属する月の前々月である令和5年6月までの228ヶ月の記録を見ます。なんで死亡日の前々月までの記録なの?というのは前述したように納付期限の関係です。

この228ヶ月のうち、未納なのは36ヶ月ですね(未納率g%<33.33%)。

よって、年金記録はクリア。

次に受給する遺族である妻と子とは同居であり(生計を同じくしていた)、妻に関しては前年収入は850万円未満(前年所得が655.5万円未満でも良い)でした。この2つを満たしてる場合を「生計維持されていた」といいます。

生計維持されていたというと養ってもらっていたというイメージがありますが、そういうわけではないです。

死亡時は国民年金加入中、死亡までの死亡者本人の年金記録はOK、生計維持要件もOK。

なので、貰える遺族年金は国民年金からの遺族基礎年金となります。

遺族基礎年金は「子のある配偶者」か「子」のみですので、その条件は満たしています。

受給するのは配偶者。

あれ?過去に厚生年金に加入してるけど、それは遺族厚生年金として貰えないの?というと、これは貰えないです。厚年加入中の死亡とか(他にもいくつかありますが割愛)、未納以外の年金記録が25年以上ある場合だったら貰えてましたが、満たさないので国民年金からの遺族基礎年金のみとなります。

・令和5年8月の翌月から妻へ支給される遺族基礎年金→795,000円+子の加算金228,700円×2人=1,252,400円(月額104,366円)

・遺族基礎がもらえる人は遺族年金生活者支援給付金→5,140円(年間61,680円)

なお、給付金は所得が4,721,000円を超える人は停止となります(10月分から翌年9月分まで)。

子が2人いますが、上の子が18歳年度末を迎えると、子の加算1人分228,700円がなくなって795,000円+228,700円+給付金61,680円=1,085,380円となり、2人目の子が18歳年度末を迎えると年金は消滅して0円となります。

余談ですが、例えば妻が再婚すると遺族基礎年金は消滅するので、その後は子2人が受給する事になります。

子2人で受給となると、795,000円+228,700円+給付金61,680円=1,085,380円÷2=542,690円(月額45,224円)をそれぞれ受給します。

ただし、親と同居などで生計が同じであれば、子への遺族基礎年金と給付金は全額停止します。

3.遺族基礎年金と遺族厚生年金

◯ 昭和40年3月生まれのK男さん(今は58歳)

・昭和60年3月~平成元年3月までの49ヶ月はカラ期間
・平成元年4月~平成29年3月までの336ヶ月は国民年金未納
・平成29年4月~令和5年7月までの76ヶ月間は厚生年金加入(平均標準報酬額は50万円とします)

令和5年7月31日に病気で死亡。

厚生年金は死亡日の翌日に資格を喪失し、厚生年金期間は喪失月の前月までなので令和5年7月まで。

死亡日に生計維持していた遺族は妻39歳、子2歳、K男さんの母79歳。

遺族は妻と子が2人とも同じ第1順位者なので(ココは注意)、第2順位者である母は受給権は無し。

次に、K男さんの過去の年金記録を見ると、昭和60年3月から死亡日の前々月である令和5年5月までの459ヶ月で見ます。なお、459ヶ月のうちのカラ期間49ヶ月は年金の被保険者期間ではないので、それは省いて410ヶ月のうちの未納期間を見ます。

すると、未納期間は336ヶ月なので、410ヶ月に対して未納率81.95%>33.33%なので、満たしていません。

じゃあ遺族年金は無理なのかというと、特例として死亡日の前々月までの直近1年間(令和4年6月~令和5年5月)に未納がなければそれでもいいです。

直近1年間は厚年加入中で未納がないので、年金記録の納付要件を満たします。

よって、厚生年金加入中の死亡なので遺族厚生年金を受給する事ができます。
なお、厚年加入中は国民年金に同時加入中なので、18歳年度末未満の子がいれば同時に遺族基礎年金がもらえます。

・令和5年7月31日受給権発生の遺族厚生年金→50万円×5.481÷1,000×300ヶ月(最低保障月数)÷4×3=616,613円
・遺族基礎年金→795,000円+子の加算金228,700円=1,023,700円
・遺族年金生活者支援給付金→61,680円

よって、令和5年8月分からは妻には、遺族厚生年金616,613円+遺族基礎年金1,023,700円+給付金61,680円=1,701,993円(月額141,832円)。

その後は、子が18歳年度末を迎えると年金総額は遺族厚生年金616,613円+中高齢寡婦加算596,300円=1,212,913円(月額101,076円)となります。

中高齢寡婦加算596,300円は妻が65歳になるまで受給する事ができ、65歳以降は妻自身の老齢基礎年金を受給する事になります。

遺族厚生年金はよくある再婚などがなければ、終身で受給する事ができますが、妻自身が老齢厚生年金を貰える時は差額支給となります。

例えば妻が65歳から老齢基礎年金60万+老齢厚生年金20万円貰える場合は、遺族厚生年金616,613円から20万円を引いて416,613円を遺族厚生年金として支給します。

ところで、中高齢寡婦加算は夫死亡時に妻が40歳以上でなければならないと前述しましたが、遺族基礎年金を受給してる時に40歳以上になれば遺族基礎年金が終わった時に中高齢寡婦加算の受給が始まります。

というわけで、今回は遺族基礎年金と遺族厚生年金の一般的な計算を示してみました。

image by: Shutterstock.com

年金アドバイザーhirokiこの著者の記事一覧

佐賀県出身。1979年生まれ。佐賀大学経済学部卒業。民間企業に勤務しながら、2009年社会保険労務士試験合格。
その翌年に民間企業を退職してから年金相談の現場にて年金相談員を経て統括者を務め、相談員の指導教育に携わってきました。
年金は国民全員に直結するテーマにもかかわらず、とても難解でわかりにくい制度のためその内容や仕組みを一般の方々が学ぶ機会や知る機会がなかなかありません。
私のメルマガの場合、よく事例や数字を多用します。
なぜなら年金の用語は非常に難しく、用語や条文を並べ立ててもイメージが掴みづらいからです。
このメルマガを読んでいれば年金制度の全体の流れが掴めると同時に、事例による年金計算や考え方、年金の歴史や背景なども盛り込みますので気軽に楽しみながら読んでいただけたらと思います。

無料メルマガ好評配信中

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 年金アドバイザーが教える!楽しく学ぶ公的年金講座 』

【著者】 年金アドバイザーhiroki 【発行周期】 不定期配信

print

シェアランキング

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MAG2 NEWSの最新情報をお届け