もはや不動産バブルの崩壊が確定的と伝えられる中国。そんな隣国は今、投資家たちが公の場で不満の声を上げ始める事態となっています。今回のメルマガ『在米14年&海外販路コンサルタント・大澤裕の『なぜか日本で報道されない海外の怖い報道』ポイント解説』では著者の大澤さんが、ニューヨークタイムズに掲載された中国の不動産危機を伝える記事を紹介し、その実態を詳しく解説。苦境に陥った習近平政権が、台湾危機を急激に高める可能性もあり得るとの見方を記しています。
中国を揺るがす影の銀行
中国には膨大な数のマンションが建設されています。
すでに15億人分のマンションがあるという報道もあれば30億人分のマンションがあるという報道もあります。正確な数字もわからないのです。
それだけのマンションが建設されていて、そこにお金を支払った人がいるのです。不動産バブルの崩壊は政府を揺るがす事態になりかねません。
ご紹介するのは2023年9月23日のニューヨークタイムズ記事「中国の不動産危機が影の銀行を襲う」からです。
「経営難に陥った影の銀行(シャドーバンク)が投資家への支払いを停止し、パニックに陥る危険性がある」
ある国有企業の従業員は、自分たちの投資が政府によってバックアップされていると信じて、友人や親戚からお金を集めた。ある男性は、年間10.1%のリターンがあると言われた口座に14万ドルをつぎ込んだ。
彼らは、悲惨な現実に直面している数十万人の中国人投資家の一人である。
約20兆円の資産を運用する中国最大級の影の銀行、中植企業集団(Zhongzhi Enterprise Group Co.)とその信託銀行部門への投資が危険にさらされている可能性があるのだ。
7月から中植企業集団の関連会社は投資家への数十回に及ぶ支払いを怠った。
それは中国最大のいわゆるシャドーバンクのひとつである中植企業集団の破綻が近いのではないかという懸念を煽っている。
影の銀行は融資や投資サービスを提供する金融会社だが、通常の銀行と同じ規制は受けない。
これらの影の銀行は、建設ブームのために不動産開発業者に融資を行っていたが、現在では新築住宅の販売が停滞しているため、多くの借り手が貸し倒れを起こしている。
彼らは顧客の資金をどのように投資しているかなど、業務に関する情報を公開する義務はほとんどない。しかも巨大だ。
しかし、一部の投資家は黙っていない。
14万ドルを投資していた周氏は、7月に最初の利息を受け取るはずだった。
しかし、その資金を受け取れなかったため、彼は中国のソーシャルメディア上で実名で発言するという珍しい行動に出た。
「待っているよりも、個人的な利益のために戦ったほうがいい」と周氏はビデオで語った。「私はまた、政府が国民と投資家のために問題を解決してくれることを望んでいる。
中国の政策立案者は今、苦境に直面している。
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解説
中植企業集団は、中国の影の銀行(シャドーバンキング)グループです。
約20兆円を超える資産を管理しています。
8月にアメリカ裁判所に連邦破産法の適用を申請した恒大グループは不動産開発会社ですので問題の種類と影響力が違います。
中植企業集団の支払い停止は中国では珍しい抗議活動に発展し、警察は不満を持つ顧客の自宅を訪れ、公での抗議活動を控えるよう求めました。
しかし本記事にあるようにSNSで声を上げはじめた人がいるのです。
中国人は政治と経済を切り離して考えるところがあります。自分たちの経済活動が阻害されない限り、政治的な報道規制などは気にしないのです。
不動産の暴落は、中国人の財布、経済的な将来設計を直撃します。黙っていられる問題ではないのです。
中国人は日本人よりも投資が好きです。不動産バブルが崩壊したときに損害を受ける人の割合は日本より広範囲に及ぶでしょう。
庶民の不満をそらすために、中国政府が台湾の緊張を急激に高めるといった行動にでることもありえる話です――(この記事はメルマガ『在米14年&海外販路コンサルタント・大澤裕の『なぜか日本で報道されない海外の怖い報道』ポイント解説』9月24日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はこの機会に初月無料のお試し購読をご登録ください)
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