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全くの無駄。なぜ大企業は「ユーザー調査」に多大な費用を使っているのか?

コンサルティング会社の仕事にはさまざまありますが、コンサルで働いている社員自らが疑問に思う仕事に「顧客調査」があるようです。素人の顧客の声を聞いてまとめた調査に数千万円を支払う企業が多いことに見解を求められたのは、『永江一石の「何でも質問&何でも回答」メルマガ』著者で、「素人の顧客の意見は聞くな」が持論の永江さんでした。永江さんさんはいまでは多くの大企業がサラリーマン上がりの社長になって、意思決定ができなくなっていると指摘。顧客調査をしていること自体がその企業の能力低下の現れと結論づけています。

コンサルの「顧客調査」の有用性について

Question

1年前からコンサルティングファームに転職しました。コンサルティングファームでよくやる「顧客調査」に関して永江様のご見解を伺わせてください。

当社ではクライアントのビジネスのサポートとして、顧客アンケートを取ったり生活者を交えたワークショップを実施するなど、「顧客調査」の名目で一発で数千万円の請求を行なっています。ただ、個人的な見解として、ど素人の顧客や生活者の声を聞いたところでそこに正解を見出せる気がせず、多くの企業が莫大な予算を投じて全く無駄なことを行なっている気がしてなりません。

こういった顧客調査を大手企業は当然のように実施しているようなのですが「素人の顧客の意見は聞くな」と提唱する永江様に、顧客調査の有用性について是非ご見解を伺わせてください。

永江さんからの回答

これは良い質問ですね。本当に売れる商品を開発するにはユーザー調査なんて不要でむしろ弊害の方が多いでしょう。調査を必要としていること自体が、日本の企業の能力低下を象徴していると思います。

おっしゃるように、アンケート調査やインタビューをしたところで、ユーザーが答えられるのはせいぜい目の前に商品を出されたら買いたいか買いたくないかくらいです。商品コンセプトや価値観を発想するなんて無理なので、その声から商品設計をしようという考え方自体が間違っています。

良い例が日本のガラケーや家電で、例えば洗濯機など日本メーカーの品は全く使わない機能が満載ですよね。きっとユーザー調査をしてケータイや冷蔵庫に何の機能が欲しいかなど聞いて、思い付きで話したものを次々と足していった結果でしょう。

言うまでもなく、ガラケーはスティーブジョブスがユーザー調査などせずに考え出したiPhoneに駆逐されています。例を挙げればキリがないですが、多数の付加機能をつけた掃除機を尻目に、電源ボタンだけのダイソンが売れていますし、ウォークマンを作ったSONYの盛田昭夫氏だって、アンケートなど取らずに自分の確信を信じて周囲の反対を押し切って実現させました。

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ではなぜ大企業がユーザー調査に多大なお金を払うかと言うと、責任者が自分で新たなサービスや商品を考えられず、意思決定の責任を負う気概がないからです。はっきりいうとオーナーではないからです。

上述のように革新的なアイデアや製品は、アメリカの企業や日本でも成長しているベンチャーなどではトップ自ら意思決定するのが普通です。もちろんユーザー調査なんてせずに、実績に基づくセンスで確実に売れると思って、自分で責任を負う覚悟で意思決定します。

かたや、主だった日本の大企業のトップや管理職は、サラリーマン上がりで、自らイノベーションに挑んだ経験も、リスクを取った意思決定をした経験もない人たちが大半です。自分で新たなビジネスを創った経験のない雇われた経営者や管理職者は、自ら商品や新たな価値を発想・企画することもできず、周囲の反対を押し切って商品化するほど信念も持てません。

そこで、ユーザー調査の結果や、コンサル会社に依頼して出てきた提言を拠り所にして、商品を企画したり意思決定をしてしまうのです。そして、コンサル会社もその会社の事業については素人で、お金をもらって提言する背景もあるので感覚ではものを言えず、自分の主張を裏付ける事実が必要なのでユーザー調査をするのです。こうしたユーザー調査はアンケートの設問設計と集計次第でいくらでも結果を左右できるので、どんどん恣意的で意味のないものになっていきます。

これってつまり、実績とセンスと自信と覚悟のない人たちが「消費者が言っているから」ともっともらしい理由を用意したいからユーザー調査をしているだけです。日本企業の意思決定力・競争力が落ちていることの象徴ともいえるでしょう。

まだ競争力が維持されている自動車などは、商品設計に8年以上の長い期間を要するので、ユーザー調査して「どんな車に乗りたいか」なんて聞かずに商品を造っているから未来があるんじゃないかと思います(ちなみに自動車業界もゴーン元会長などは自らフェアレディを復活させるなどの意思決定をしていますね)。

もちろん、そもそもいくらのお金が動いているか・利用者がいるかなど基礎的な市場データを得ることは必要ですが、商品開発や重要な意思決定のために顧客調査・ユーザーインタビューを参考にするなんて、失敗するだけでお金の無駄だと思いますね。わたしも過去の案件で大ヒットしたものは調査なんてせず絶対成功するといって進めましたし、調査のお金は広告などに回しています。

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image by: Shutterstock.com

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商品開発や集客プロモーションを手がける会社を設立し多くの企業のマーケテイングを行う。メルマガでは読者から寄せられたマーケティングのお悩みに対し具体的な解決策を提示。ネットショップや広報担当を中心に多くの購読者から支持されている。

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