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ジャニーズ断罪も“大ブーメラン”が刺さったサントリー社長・新浪剛史氏の「呆れた人権感覚」

「45歳定年制」を口にしたり、国民皆保険制度の廃止を提唱するかのような発言で世間を騒がせた、経済同友会代表幹事でサントリー社長の新浪剛史氏。先日はジャニーズ事務所をバッサリ斬ってみせましたが、その新浪氏、いったいどのような人物なのでしょうか。今回のメルマガ『神樹兵輔の衰退ニッポンの暗黒地図──政治・経済・社会・マネー・投資の闇をえぐる!』では投資コンサルタント&マネーアナリストの神樹さんが、人権尊重を謳いながら中国進出には熱心なサントリーを批判。さらに「我が世の春」を謳歌するが如き新浪氏の言動を疑問視しています。

今さらジャニーズ事務所を批判する「意気軒昂」。サントリー社長の新浪剛史とは何者か

みなさま、こんにちは!

「衰退ニッポンの暗黒地図」をお届けするマネーアナリストの神樹兵輔(かみき・へいすけ)です。

今回は、「ジャニーズタレントCM起用問題にまで口を出す経済同友会代表幹事でサントリーHD社長の新浪剛史(にいなみ・たけし)氏とはいったい何者なのか?」」というテーマで、新浪氏のこれまでの特異な発言のあれこれを検証したいと思います。

新浪氏はこれまでも、会社員の「45歳定年制」を提唱したり、「結婚しないといけない制度でいいのか」などと結婚前提の社会制度に疑問を投げかけたりしてきました。

また、政府に来秋までに健康保険証を廃止しマイナンバーカードに健康保険証を紐づける期限についても、「納期を守れ!」などと呼びかけたりしてきました。

さらに、先月9月12日の会見では、ジャニーズ事務所を痛烈に批判した後、29日の会見では、国民皆保険の民営化推進ととられかねないような大胆な発言さえしています。

あとで誤解しないでほしい──と訂正したものの、国民皆保険の解体まで言い出しかねないほどの勇ましい勢いで、各方面への踏み込んだ発言が、とりわけ「目立つ経済人」の顔を見せまくっているのでした。

どうも、新浪氏は今年2023年4月、経済同友会代表幹事に就任したあたりから、ますます自分の発言が大きく取り上げられる反響のよさに快感を覚え、はしゃぎまくり、わざと際どい発言につながっているような危うささえ──も感じさせられるのです。

いったいこの人は何者なのか、はたまた何様なのかというのを探ってみたいと思うのです。

さて、男性アイドルプロデュース専門の芸能プロダクション「ジャニーズ事務所」の名前を目にしない日はないほど、さまざまな形での報道がなされているのが現在です。

ジャニーズ事務所・創業者の故ジャニー喜多川氏(2019年7月・87歳で死去)による所属タレントたちへの性加害問題は、マスメディアにおいて、沸騰的な報道が繰り返されています。

これまで見て見ぬフリで、一切報道することもなく、沈黙を貫いてきたマスメディアだったのに、イギリスの公共放送BBCがこの3月に報じた長編ドキュメンタリー「J-POPの捕食者:秘められたスキャンダル」の放映以降、いっせいにジャニーズ事務所の性加害問題を扱うようになったのですから驚かされます。

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ジャニーズ報道で露呈した日本メディアの権力癒着性と欺瞞性

なにしろ、この問題は、故ジャニー喜多川氏が20代の若い頃から50年以上にわたって、男性アイドルを夢見てジャニーズ事務所に集まる未成年男子や児童たち数百人に、性的虐待を加えてきた──というのですから大問題なのです(ジャニーズ事務所は創業61年にのぼる)。

すでに性加害行為自体は、ジャニーズ事務所がスタートして間もないころから発覚しており、初期に所属した元フォーリーブスのメンバー故・北公次氏が告発本まで出版していたのに、マスメディアはスルーを続けてきたのです(1988年データハウス刊『光GENJIへ─元フォーリーブス北公次の禁断の半生記』)。

当時の月刊誌「噂の真相」も、この問題を取り上げています。

また、1999年には「週刊文春」も何度か取り上げたことで、裁判沙汰となり、結局ジャニー喜多川氏の性加害に遭った少年たちの証言の真実性が裁判で認められています(2004年最高裁の上告棄却で2003年の高裁判決が確定)。

しかし、大手マスメディアがこれらを報じることはないままでした。

ジャニーズ事務所のタレントたちが、人気を集め大きく躍進するにつれ、テレビ局・新聞社・出版社などの忖度がはたらいて、ジャニーズ事務所にとってのマイナスになる報道が控えられてきた──という、いかにも日本マスメディアの権力癒着性、欺瞞性を見事に象徴する出来事となっていたのです。

つまり、日本のマスメディアは戦前と同じ体質であり、「言論の自由」もへったくれもない状況で、強いものにはすぐなびく──恥ずべき特異性を露呈していたわけでした。

ジャニー喜多川氏が亡くなってから、死人にクチナシとばかりに、うって変わって、さんざん故人を叩きまくる──という異常な構図とも見てとれます。

なんといっても、今頃いっせいに報道するというのは、カッコ悪すぎなのです。

はっきりと、ジャニーズ事務所に忖度してきました、今の自公政権に対しても忖度して、マイナス報道を控えています、そんなわけで、どうもいろいろとまことに申し訳ありませんでした──という頭を垂れた「懺悔」のひとつも欲しいところなのです。それこそ厳しい自己批判があるべきだったでしょう。

「我々にも反省すべき点があった」などと、ひとことお茶を濁したマスメディアの取ってつけた神妙ぶったセリフに騙されてはいけないのです。

まさしく確信犯だったのであり、共犯の関係だったからです。

そんな騒ぎの中、ジャニーズ事務所を通して、所属タレントをCMや広告に起用してきた大手企業が、タレントの露出を一斉に封殺する動きが続々と出てきました。

中でも、この大きな流れを作るのに、決定的といわれるような役割を果たしたのが、サントリーHD(株)社長で、経済同友会代表幹事の新浪剛史氏の発言だったのです。

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大手企業のジャニーズ事務所タレントCM起用を断罪!

新浪氏は、2023年9月12日に行われた公益社団法人・経済同友会の記者会見で、大手企業とジャニーズ事務所のスポンサー契約の問題について尋ねられて次のように語っています。

「第一にチャイルド・アビューズ(児童虐待)は絶対にあってはならない。記者会見で謝罪があったが、現体制が児童虐待に対して真摯に反省しているのか、大変疑わしい。

再発防止に向けて、ガバナンス体制を強化することを示すことができたのかどうかは大いに疑問であり、そうではないと認識している。

調査内容を受けたジャニーズ事務所の対応は不十分である。世界の企業や海外メディアからも注目を集めており、所属タレントの起用は児童虐待を認めることになるため、国際的な非難の的になる。

日本企業は断固として毅然たる態度を示さなければならない。サントリーホールディングスでは、明確なスタンスを示した」

大上段から、ジャニーズ事務所をこっぱみじんに切り捨てました。いかにも「国際派・国際通」といわんばかりの口ぶりでした。

児童虐待のことを、英語では「チャイルドアビューズ」ということなどを、この発言で知った方も多かったでしょう。

筆者などは、「えっ?」と驚きました。

サントリーは、人権侵害の常習国の中国には進出していないのか?──とふと頭をよぎったからでした。

中国では国内はもとより、新疆ウィグル自治区、チベット自治区などでの人権弾圧が有名です。

強制労働、児童虐待労働、強制収容、ジェノサイド……なんでもありの虐待国家です。

サントリーのHPを見ると、日本国内では人権尊重を第一義に掲げていますが、その割に中国進出には積極的なのです。

こういうのをダブルスタンダード(二重規範)というのではないでしょうか。

表でキレイごとはいっても、不都合にも陰でやっていることには、いろいろ理屈をつけて正当化しているのです。

なんだかなぁ……というのが、率直な感想になります。

中国政府にも毅然として、「人権侵害をやめないと、わが人権尊重のサントリーは中国事業から撤退するぞ!それでもいいのか!」などとは、けっして言わないのに、その辺はムニャムニャムニャ……ということらしいのです。

サントリーといえば、1988年東京からの首都機能移転の議論が起きた際に、当時の2代目社長だった故・佐治敬三氏(創業者の鳥井信治郎氏の次男)の舌禍事件が有名です。

いわく、「仙台遷都などアホなことを考えてる人がおるそうやけど、(中略)東北は熊襲(くまそ)の産地。文化的程度も極めて低い」などと発言して、東北地方でサントリー製品の不買運動が起きています。当たり前です。こんなトンデモ発言をしたのですから。

文化的程度が低い──と東北をこき下ろしていたのですが、「熊襲(くまそ)」というのは、古代日本の九州南部で朝廷に従わなかった勢力のことをいいます。

すなわち、東北地方のそれを指すなら「蝦夷(えぞ・えみし)」というべきで、はからずも自らの文化的程度も晒してしまい、恥の上塗りとなったのでした。

こういうことも、サントリーの伝統的所産とでもいうのでしょうか。

新浪氏の発言には、故・佐治氏の舌禍事件を彷彿させるものが感じられてならないのです。

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輝かしい華麗な経歴をたどってきた「新浪剛史」氏!

さて、新浪剛史氏とはどんな方なのでしょうか。

新浪剛史氏は、1959年1月神奈川県横浜市生まれの64歳です。

「週刊新潮」の10月12日号の報道によると、正式かどうかはともかく、周囲の評では、これまで4回結婚しているといわれているそうです。

週刊新潮の記事には「1回目の相手は三菱商事の同僚、2回目は大手航空会社のCA、3回目は巨大学校法人グループのご令嬢、4回目はローソン社長時代の秘書」とあります。

そして、3回目の相手の時には、その学校法人が経営する予備校校舎の1階に、通常の4倍くらいのコストをかけてローソンを出店したり、全国の他の校舎周辺にも出店しろ──などと、学校法人グループの令嬢への「カッコつけ」だったのでしょうか、ありえないような社長案件を号令していたそうです。

こういうのを世間の感覚では、「公私混同」というのです。

いずれにしろ、これだけ伴侶を取り換えるのが趣味のようだと、結婚にこだわるような社会制度には疑問を抱くようになるのも当然で、冒頭で紹介したような新浪氏の発言になるのも無理からぬところだったのでしょう。

新浪氏の経歴をざっと辿っておきましょう。

1974年に横浜翠嵐(すいらん)高校へ入学、卒業後に慶応義塾大学経済学部にすすみ、1980年にスタンフォード大学に留学、1981年慶応義塾大学卒業後に三菱商事(株)に入社します。

そして、1991年ハーバード大学経営大学院を修了(MBA取得)、1995年給食運営管理会社のソデックスコーポレーション(株)の代表取締役に就任、1999年には三菱商事外食事業チームのリーダー、2000年ローソンプロジェクト統括室長兼外食事業室長就任、2003年に三菱商事を退職し、(株)ローソン代表取締役兼CEOに就任します。

そしてローソン退任後の2014年にサントリーHD顧問に就いて、2カ月後にはサントリーHDの代表取締役に就任したのでした。

コンビニ代表から世界的酒造メーカー代表へと華麗な転身を遂げたのでした。

さらに、本年2023年4月には経済同友会代表幹事にも就任──となっています。

まさしくエリートコースを歩んできた人なのです。

そして、やたらと目立つ言動もお好きな方なのでしょう。

「45歳定年制」などと得意気にアピールしたのも、あたかも自分の経歴を振り返って、賞賛するような意識が底流に流れているからに他ならなかったのでしょう。

「45歳定年制」を提唱した際に、「中高年へのリストラ推進の言動だ」と批判されると、「定年制という言葉を使ったのがまずかった」などと、あとから言い訳し、真意が伝わらなかった──などと釈明しました。

しかし、45歳を定年にすれば、20代、30代の人たちが自分の人生を考えて勉強するようになる──ということが言いたかった……などだとしても、しょせんはリスキリングなどと言われても勉強に身が入らない中高年切り捨ての言動にしか響きません。

サラリーマンの立場から、早々と経営者になれた自分のことが誇らしかっただけでしょう。

しかし、こうした「得意の絶頂期」の時にこそ、人間は身を引き締めなければいけないのでしょう。

自らの処世においては誇るのではなく、謙虚に自省の人間──であらねばならなかったはずなのです。

実るほど頭を垂れる稲穂かな──の警句の実践だったでしょう。

図らずも「人権」「人権」と上から目線で、偉そうにジャニーズを断罪したことで、ここにきて、ブーメランのように新浪氏の人権感覚がほじくられてしまったからです。

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ローソン社長時代の幹部社員へのパワハラ、暴力行為の証言暴露が頻出!

ジャニーズ事務所の性加害問題の告発に便乗し、「ジャニーズ批判」を「人権」の観点から声高に主張してしまって、思わぬところから、「おまゆう」炎上になってしまいました。

もちろん、「おまゆう」とは、「お前が言うか」の略である「おまゆう」です。

先に紹介した「週刊新潮」が、新浪剛史氏のローソン社長時代の幹部へのパワハラ暴言の数々や、会議中に目標数字が未達だった幹部社員に対して携帯電話を投げつけて、上半身を骨折させたなどの暴力沙汰がクローズアップされるに至ったからです。

いやはや、新浪氏のローソン社長時代の行状を知るにつけ、この方が「人権」を語るのには、やはり相当無理があるのだなぁ──と思わされます。

あっぱれ、週刊新潮のスクープであり、お得意の注目人物の「表向きの顔」と「裏の顔」を見事にえぐり出してしまったのでした。

こうした記事の詳細は、スマホアプリでは読めないトップ記事ゆえに、ぜひ雑誌を取り寄せてお読みいただきたいと思います。

新浪剛史氏のスピード出世とともに、その人生の盛衰というものをマジに考えさせられる──よい機会だからなのです。

サントリーHD社長であり、経済同友会代表幹事の新浪剛史氏の今後の帰趨は、いかなるところに落ち着くのか──ジャニーズ性加害問題とともに、大いに注目されることと相成ってしまったわけです。

それでは、今回はここまでといたします。

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image by: 経済同友会 - Home | Facebook

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投資コンサルタント&マネーアナリスト。富裕層向けに「海外投資懇話会」を主宰し、金融・為替・不動産投資情報を提供。著書に『眠れなくなるほど面白い 図解 経済の話』 『面白いほどよくわかる最新経済のしくみ』(日本文芸社)、『経済のカラクリ』 (祥伝社)、『見るだけでわかるピケティ超図解――21世紀の資本完全マスター』 (フォレスト出版)、『知らないとソンする! 価格と儲けのカラクリ』(高橋書店)など著書多数。

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