2020年夏に販売が開始されるや、廉価グレードで50万円を切る低価格が話題を呼び爆発的な売れ行きを記録した、中国のEV「宏光MINI EV」。その後の小型EVブームの火付け役となった同車ですが、現在極度の売れ行き不振に陥っているといいます。一体何が起きているのでしょうか。日刊で中国の自動車業界情報を配信するメルマガ『CHINA CASE』では今回、その原因を詳しく解説。さらに中国における自動車業界の最新トレンドを紹介しています。
中国で一世風靡した「格安EV」が終焉へ。月に7.3万台も売れたブランドが1.5万台程度に
中国地方国有OEM五菱(Wuling。実際は上汽GMとの合弁)が発表し、一世を風靡した格安EV「宏光MINI EV」の販売が低調を継続している。
2022年12月、単月で実に7.3万台の販売を記録したが、足元の月販はわずか1.5万台程度に沈んでいる。
Wulingもこれを見越してか、一回り大きい小型HBのBEV「五菱繽果」を発売、やはり月販1.5万台程度を記録しているが、「宏光MINI EV」と合計しても3万台程度、「宏光MINI EV」の最盛期の半分にも満たない。
何が起こっているのか?
ミニ市場が衰微
まず、中国の新エネルギー車(NEV)におけるミニ市場が急速に萎んでいる。2023年1-9月、中国におけるNEV販売は前年同期比30.5%増の545.3万台。
これに対して、ミニ市場は実に同55.2%減。気軽な足代わりとして爆発的に成長したNEVミニ市場だが、やっぱり小さすぎる、機能が少ないなどが足かせになった可能性がある。
また、「宏光MINI EV」の人気ぶりに、各社が一斉にこの市場になだれ込んだことも大きい。
低速EVから転換した泡沫数社はともかく、大手でも長安「Lumin」、吉利(Geely)「パンダMINI」、奇瑞(Chery)の新型「QQアイスクリーム」など競争が激しすぎる。
売れ筋市場に乗り換え
今の売れ筋は小型BEVで、BYDの「イルカ」「カモメ」などがよく売れている。以上のNEVミニ市場の諸環境と売れ筋の変化を見越して、2023年3月に発売開始したのが「五菱繽果」だ。
このあたりはさすがのWuling、先見の明があった。しかし、全く売れない不人気車、とは言えないものの、「イルカ」、その後に「カモメ」を出したBYDの前に、この市場では全く歯が立っていないのが現状だ。
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急速な業績悪化
こうした状況で、Wulingの業績は2023年1-6月、減収減益だ。特に最終利益では、前年同期の3.51億元から89%も減少して、わずか4018.29万元にとどまっている。
「宏光MINI EV」の不調だけが原因ではないと思うが、この苦境からの脱出を「五菱繽果」だけに期待するのも、現状からみると無理がある。
こうした状況を踏まえてか、Wulingは会社史上初めてセダンをリリースする。それが先日発表された、新技術満載の「星光」だ。BEVも設定されるが、主眼はPHEVだと考えられる。
というのも、中国におけるBEVは成長が失速しており、各社こぞってPHEVに注力しており、Wulingとしてもその波に乗りたいと考えていると思われるからだ。
「宏光MINI EV」の栄光をバッサリ斬り落とし、新たな取り組みを加速させるWulingは、一面では中国の実情を反映していて興味深い。
出典: https://mp.weixin.qq.com/s/ofTidF7Zw_xVa44vQredjw
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