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「有害図書」を愛する日本人に知ってほしい、検閲国家中国と「言論の自由を守る砦」台湾の静かな戦争

中国の空港で韓国人ビジネスマンがいきなり抑留。その原因はトランクの中にたまたまあった「地図」でした。台湾出身の評論家・黄文雄さんは、「もし台湾が中国に統一されてしまえば、アジアの書店や図書館には中国共産党礼賛本ばかりが並ぶことになる」と危惧。私たち日本人が当たり前のように享受している表現と言論の自由、それを守る砦としての台湾の奮闘ぶりを詳しく紹介しています。(メルマガ 黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」より)

中国が韓国人実業家を抑留、理由は「台湾」の二文字

1月25日に聯合ニュースが報じたところによると、中国遼寧省の瀋陽桃仙国際空港に到着した韓国人実業家が、税関検査の際、トランクに入っていた手帳の地図に、台湾が独立した国であるかのように書かれていたということで、税関に抑留されるということが起こりました。

中国の空港で抑留された72歳韓国人事業家、理由は手帳の世界地図に「台湾」表記

その地図は縦20センチ、横30センチで、台湾はハングルで「タイワン」と書かれ、台北は「タイペイ」と書かれていたとのこと。これが問題視されたわけです。

また、チベットの国境表示も曖昧だということで、税関職員がこの実業家を事務所に連れてゆき、抑留したとことです。

韓国人は大声で抗議し、瀋陽の韓国系住民に支援を要請すると、約1時間後に解放されたそうですが、地図は没収され、帰国の際に返還すると言われたそうです。

男性にとって、このようなことは初めてで、「中国語が話せるので抗議できたが、初めて中国を訪れる外国人なら、すごく怖かっただろう」と語りました。

日本人も中国で身柄を拘束される恐れ

台湾、台北という表記でNGであれば、同様の表記の日本の地図でも引っかかりそうです。また、尖閣諸島を日本領として扱っている日本地図を持っていたら、やはり抑留されてしまう可能性があるでしょう。

たとえば子供が勉強に使う地図帳を持ち込もうとしたら、大きな問題になるかもしれないのです。

言論の自由がない中国では、中国当局の言うことが絶対です。それ以外は取り締まりの対象となり、「さまざまな意見」などは許されません。

中国はすでに地図で尖閣諸島を「釣魚島」として中国領であることを明示することを義務化しています。

中国、地図に「釣魚島」明示 領土の範囲、改めて義務化

そのため、日本人が中国へ入国時に、尖閣諸島を日本領として地図を持っていれば、下手をすれば拘束されてしまう可能性があるのです。

また、先の韓国人が持っていた地図は、チベットの国境表示が曖昧だったということですが、中国とインドが国境問題で争っていることは周知のことで、そのため国境線をあえて書かない地図もあります。これも問題になってしまうわけです。

つまり、すべてが中国当局の主張通りの地図でなくては、税関を通ることができないというわけです。

もちろんこれは地図だけにとどまりません。たとえば習近平批判を展開する著書などを持っていれば、即刻逮捕される可能性もあります。雑誌や新聞にその類の記事があっても、危険です。知らずに持ち込めば大変なことになってしまいます。

「有害図書」の検閲に突き進む中国

そんな言論の自由がない中国でも、国際ブックフェアが開かれているので、驚きです。北京や上海でブックフェアが毎年開催されています。では、どのような内容かといえば、やはりかなり政治色が濃いようです。

たとえば、2021年に開催された北京国際ブックフェアでは、習近平政権が推し進める「一帯一路」の沿線国からの出展が強調され、さらに「中国共産党成立100周年を祝う」「優れた」出版物が集中的に展示されました。

言うまでもなく、このようなフェアに、中国共産党の独裁を批判する書籍が出展されるはずはなく、また民主主義を称揚するような書籍もご法度です。その一方で、「習近平新時代中国特色社会主義思想学生読本」は大絶賛。

第28回北京国際ブックフェア開催 2200社余り出展

国際ブックフェアでは、内外の書籍を多くの国々の出版社や人々が売買する場ですが、このような中国共産党礼賛本を、海外の人々が本当にほしいと思うのでしょうか。海外ブックフェアというよりは、中国共産党礼賛ブックフェアです。

また、香港でもこれまでアジア最大の書籍見本市「香港ブックフェア」を開催してきましたが、2020年に香港国家安全維持法が施行され、事実上、一国二制度が破棄され、多くの言論人が逮捕されるようになってからは、国家安全維持法に抵触しそうな内容の本については、自己規制が強まっており、すっかり言論の自由は廃れてしまいました。

運営側が力を入れて展示しているのは、アグネス・チャンなど、香港政府や中国と良好な関係を築いている「友好人士」のものばかりとのことです。

香港、狭まる出版の自由 見本市で出版社が自己検閲

今、アジアの「言論の自由」は台湾にある

現在では、台湾で開催される国際ブックフェアこそが、言論の自由が担保された、アジア最大のものとなっています。

かつて日本の東京でも毎年夏に国際ブックフェアが開催されていましたが、最近は開催されなくなってしまいました。台湾がその受け皿になったかたちです。

台湾の国際ブックフェアには、約50万人の来場があるということで、これは韓国のブックフェア約15万人に対して3倍位上の規模となっています。

今年は2月20日~25日に開催されます。これこそがアジアで数少ない、言論の自由を体現した国際ブックフェアなのです。

TiBE 台北國際書展

もしも台湾が中国によって統一されたなら、この言論の自由の拠点とも言える国際ブックフェアも消滅し、中国共産党礼賛本ばかりが並ぶことになるでしょう。

【関連】「中国を売り、日本を買う」と世界は決めた。日本経済と株価の黄金時代が間もなく到来する訳

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