安倍晋三元首相の死後、政党支部や政治団体に残されていた政治資金やパーティー券収入など約3億4000万円を、複雑なスキームによって非課税で“相続”した昭恵夫人。2017年の森友学園問題では、責任回避のために「首相夫人は私人である」と閣議決定されたにもかかわらず、いったいこの巨額資金を何に使おうとしているのでしょうか?小林よしのり氏主宰「ゴー宣道場」の寄稿者で作家の泉美木蘭さんが、最近の「アベトモ」界隈の驚くべき実態をご紹介します。(メルマガ『小林よしのりライジング』より)
3億4000万円を非課税で手に入れた昭恵夫人
安倍派をめぐる「政治とカネ」の問題は、ぐらぐらになった国会議員たちによってぐらぐらに迷走し続けているが、国会の外でも注目しておきたい話がある。
安倍が政党支部や政治団体などに残していた政治資金、生前に開いたパーティー券収入など約3億4000万円が、死後、「寄付金」という名目で安倍の資金管理団体「晋和会」に集められ、そのまま昭恵夫人が非課税で引き継いでいたという件だ。
晋和会の所在地は、議員会館から昭恵夫人の自宅に移されている。
昭恵夫人が引き継いだカネのなかには、自民党山口県第4選挙区支部に残されていた1億3700万円の資金も含まれていた。
自民党は山口第4区で吉田真次衆院議員を選出しているため、本来なら同支部はその吉田議員に引き継がれるのが筋らしいが、資金の整理が行われてさっさと解散。
吉田議員は、統一協会に与して男系に固執している安倍のコピーのようなものなので、同情もしないし落選すればよいとしか思わないが、問題は、政党助成法により、党支部を解散した場合、政党交付金の残金を国庫に返還する必要があるということだ。
同支部には、政党交付金の残金が3080万円あったが、昭恵夫人はこれを返還せずに2022年末までに全額使い切っていた。
「私人」と閣議決定された昭恵夫人が政党交付金を流用
政治資金使途報告書には、事務所の閉鎖にかかる費用が計上されているが、人件費は前年の2倍以上にあたる2130万円にものぼる。人件費の内訳は記載する義務がないため、誰にいくら支払われたのかはわからない。
昭恵夫人と言えば、2017年の森友学園問題で、責任を回避するために、むりやり屁理屈をこねくりまわして「首相夫人は私人である」とわざわざ閣議決定された記憶がよみがえる。
私人であり、国会議員に立候補する意思もない人間が、政治資金をそっくり相続して、しかも、税金が原資となっている政党交付金を勝手に使いまわしていたわけだ。
さすが、昭恵夫人ですね!という皮肉しか出てこない。
ただ、政党交付金を返納せずに使い切ったからといって、法的に罰せられる仕組みはない。そもそも政治団体の解散に関する手続きや手順が法律で定まっておらず、政治活動の実態が不確かなままでも、資金集めや資金還流を行うことができるようになっているらしい。
昭恵夫人に対しては、「一般人は、遺産相続のときに相続税を納めているのに、多額の政治資金を非課税で受け取っているなんてずるい!」という怒りの声が起きており、とても共感するのだが、一方で、知っておきたい知識もある。
政治団体の資金は、個人の資産とは異なり、「政治活動にあててほしい」という意図で渡された寄付金など、なかば公的な意味合いのカネであると判断されるため、国が手をつっこんで相続税を課すわけにはいかないのだ。
また、「政治団体に課税できるようにしろ!」という意見もあるが、憲法21条では「結社の自由」が保障されている。
一連の「政治とカネ」問題への解決策として、国が政治団体に対して課税などの形で積極的に介入できるようにしてしまうと、時の政権が、特定の政治団体を排除するべく悪用する恐れがあるため問題がある、ということも頭に入れておきたい。
報道を見ていると「なんでこんなズルい脱税行為が許されるんだよ」と思うが、昭恵夫人や、政治資金問題にぐらぐらする政治家には、道義的責任があり、それをどこまできちんと質して「まともな政治家」を輩出する土壌を作っていけますか、という点が国民にも問われていると言える。
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「安倍晋三記念館」の建設に奔走
で、法律や憲法に守られて手にした約3億4000万円を、昭恵夫人がどう使おうとしているのかというと──「安倍晋三記念館」の建設だというから、思わずのけぞった。
昭恵夫人には、「安倍の功績をみんなの目に触れる形でまとめたい」「いっそ3か所に建てたい」という夢があるらしく、地元・山口県下関市の土地を、市の予算で用意できないか、市長や安倍派市議に頼み込んでいたという。
な、なんで市民の税金で? 森友学園事件のセルフ再現ですか?
籠池夫妻の「安倍晋三小学校」となにが違うのか……。
やるなら自分で遺産を整理するなりして用意してくれよという話だが、安倍政権時代にどれだけ勝手なふるまいをしても、最高権力者である夫に守り倒されてきた私人・昭恵夫人には、公費と私費の区別もないらしい。
今月4日に死去したことが報じられた安倍の母・洋子さんは、安倍の死後、後継ぎのいる岸家だけは生き残らせようと、孫の岸信千世衆院議員に気持ちをたむけていたという。
昭恵夫人としては、「憲政史上最長の政権を握った夫の思い出」にすがるしかない心理状態に陥っているのかもしれない。
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安倍元総理を神として祀る「安倍神像神社」
もうひとつ、「森友学園事件のセルフ再現ですか?」と言いたくなる話を紹介しておきたい。
なんと昨年、長野県阿南町に「安倍神像神社」が誕生!
「晋三」と「神像」がかけられているという、どう受け取っていいのかわからない神社だが、「安倍元総理を神として祀りたい」という強い信念に突き動かされた宮司が、年金と私費を投じて建立したのが、これだ。
……このぐらいなら、そんなに害がなさそうと思える手作り感。写っているのは、奈良県は吉野山、世界遺産に登録されている由緒ある「吉水神社」の宮司・佐藤素心という人物で、80歳になり、息子に代譲りをして長野に移住し、安倍神像神社を建立したという。
動画を見てみると、しゃべり方や妙に不安定なハイテンションから、一発で「アレな人」とわかるものが漂っている。
入魂式では、安倍晋三の銅像を手に、「アメノミナカヌシ、イザナギ、イザナミなど17の神々が、ご祭神である安倍神像を護っていく」など語っていた。
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「昭恵夫人公認」の安倍晋三像は全高3メートル
この佐藤宮司、実は、かつてネット上で話題になった人物でもある。
吉水神社の由来や歴史的建造物、祭礼行事などを紹介していた神社公式ブログで、2014年ごろから「中国人、韓国人は日本に来るな!」「中国人が触った所は必ず消毒」「世界から嫌われるシナ人の下品さ!」など嫌中嫌韓感情を連日書きまくり、籠池夫妻を彷彿とさせる見事なネトウヨぶりを発揮しはじめたのだ。
その直後に『わが祖国日本への戀文』という著書を自費出版しているのだが、この本の巻頭に推薦文を寄せて、佐藤宮司を大絶賛したのが、安倍晋三なのである。
しかも宮司、神社建立に飽き足らず、次は、全高3メートルの安倍晋三像建立を目指して、自称保守系の会合に顔を出したり、奈良の駅前で演説したりして寄付金を募っているらしい。
でも、まあ、財務省に取り入るわけでも「鉛筆なめなめ」するわけでもないようなので、せいぜいがんばってね、と生温かく眺めていたら、つい2か月前にアップロードされたこんな動画があったので仰天した。
京都市で開かれた自称保守系の人々が集まる総会での一幕らしい。3メートルの安倍晋三像建立、「昭恵夫人公認」になってるし!
果たして、今でも「昭恵夫人とのツーショット」は寄付金集めの役に立つのだろうか。死後もなお、繰り返される「寄付とネトウヨと私」。生き様はこうして遺るのだ。その2に続きます――(メルマガ『小林よしのりライジング』2024年2月6日号より一部抜粋・敬称略。メルマガ最新号で間もなく配信予定の「その2」や、小林よしのり氏のゴーマニズム宣言・第523回「週刊文春はレトリックで醜悪化してるだけ。」、読者Q&Aコーナーなどメルマガ全文はご登録の上お楽しみください)
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image by: 安倍昭恵 – Facebook