日本人が知らない「福岡空港」の凄い軍事力。極東有事で“敷地内の米軍”航空機動軍団は何をどう作戦するか?

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旧日本陸軍が1944年に建設し、それを戦後に米軍が接収したという歴史をもつ福岡空港。朝鮮戦争では福岡市民の頭上を戦闘機が飛び交いましたが、今や日本国民の多くが当時を知らない世代になりました。「私のまわりの30代~40代後半の福岡県民も、誰もその事実を知らなかった」と驚きを隠せないのは、小林よしのり氏主宰「ゴー宣道場」の寄稿者で作家の泉美木蘭氏。我が国の国防を考えるにあたり、決して目を逸らしてはならない福岡空港の現実をレポートしています。(メルマガ『小林よしのりライジング』より)

コンパクトシティ福岡は「国防の最前線」だった

さて、今回は福岡空港の話。

空港というものは、たいてい人里離れた広大な土地を買収したり、海の上に埋め立て地を作ったりして建設されるものだが、福岡空港は、博多駅から5分、中心地である天神駅から10分という超都市型空港だ。

はじめて羽田空港から福岡空港に降り立ったときは、中心部への近さに驚き、なんて便利な街なんだと思った。 だが、便利と引き換えに、周辺に住んでいる人は、1~2分おきに離発着の騒音を聞き続けている。

この騒音対策のために、福岡空港には「門限」がある。 原則、夜10時までに着陸できない飛行機は、Uターンして元の空港に帰るか、別の空港を探さなければならないのだ。

特に、2023年は「門限Uターン」のニュースが多く、マニラから飛んできた飛行機が、そのままマニラへ引き返すというわけのわからない珍事まで起きた。

コロナ禍で、空港はどこもスタッフを減らして運営してきたが、昨年は急激に旅客数が戻り始めたために対応が間に合わなくなり、保安検査場に大行列ができるなど各地で問題を抱えてしまった。

飛行機の発着にも影響を及ぼしており、福岡の場合は、上空で着陸許可を待つ飛行機がぞろぞろ旋回するという「着陸渋滞」が頻発したり、地上で到着機が混雑してなかなか搭乗口につけない問題も増えたりしているらしい。

福岡県民も知らない福岡空港の歴史

福岡空港は、1944年2月、戦争のさなかに旧陸軍の飛行場として、急遽建設されることになった。

1945年5月に「席田飛行場」として完成するが、8月には敗戦、米軍に接収されて「米軍板付基地」となり、周辺の山間部も米軍に接収されて、射撃場や弾薬庫が作られた。

以来、米軍が1957年ごろまで空港周辺の土地を5回に渡って接収していき、現在の福岡空港とほぼ同じ大きさに拡張された。

1950年6月に朝鮮戦争が勃発し、板付基地は偵察や出撃の拠点となり、昼夜を問わず、多くの米軍機が飛び立つことになる。「福岡市民の頭上を1時間に50機の戦闘機が飛んだ」という話も残っている。

ところが、私が当初、福岡の地元紹介を調べはじめたときは、朝鮮戦争当時について「朝鮮戦争特需と言われる好景気になり、製造業や石炭産業が伸びた」ということは紹介されていても、現在の福岡空港が米軍基地であり、戦闘機がバンバン飛んでいたという事実は見かけなかった。

たまたま、ネットで見つけて読んだ空港の歴史にそのことが書かれていて、びっくりしたのだが、私のまわりの30代~40代後半の福岡県民も、誰もその事実を知らなかった。

現在の福岡空港国際線ターミナルから見える、AMC AIR TERMINAL(米航空機動軍団)の看板を掲げた米軍板付基地の施設。撮影:泉美木蘭氏「警備員にじろじろ見られてあまり近づけなかった」

九州大学電算センターファントム墜落事故(1968年)

米軍基地だったことを知らないのだから、米軍機が九州大学に墜落したことも、もちろん知らない。

1968年6月2日夜10時45分、ベトナム戦争の激化に伴って、重要拠点となっていた板付基地から発進した米軍機が、福岡市東区にあった九州大学キャンパス内の「大型計算機センター」に激突。 6階建ての建物の5階部分に頭から突っ込んで、炎上した。

墜落したのは日曜日の夜で、建物は建設中でもあったため、人身被害はなかったが、墜落1時間半後の深夜1時には、事故現場に多数の学生が集まっていたという。

この時、米兵たちがカービン銃を手に、いきなり無断で構内に踏み入ってきたために、学生たちは激昂。 軍用車を取り囲んで押し問答になった。

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