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鳥山明と小澤征爾を過小評価。日本人が「大谷翔平クラス」の偉大な2人の功績を理解できない訳

2月6日に小澤征爾氏、3月1日には鳥山明氏と、“偉人”と言っても過言ではない2人を相次いで失った日本。彼らの訃報は海外でも大きく報じられましたが、米国在住作家の冷泉彰彦さんは日本における扱いに「非常な残念感」を抱いたと言います。冷泉さんはメルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』で今回、小澤・鳥山両氏の業績を紹介するとともに、2人が世界に与えた影響について解説。その上で、彼らを正当に評価することができない日本に対する自身の心情を吐露しています。

※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題「鳥山明氏、小澤征爾氏は大谷クラス」

大谷翔平クラスの活躍を見せた鳥山明氏と小澤征爾氏を正当に評価できない2人の母国

漫画家の鳥山明氏が死去し、その前には指揮者の小澤征爾氏の訃報もあったわけです。この2人に関しては、日本国内の反応がどうにも盛り上がりに欠ける印象で、非常な残念感があります。

多少不適切なたとえかもしれませんが、この2人は世界では大谷クラスの活躍をしているにもかかわらず、日本国内での死去報道では、せいぜい松坂、松井秀喜クラスといった感じで、良く言って野茂レベルと言う感じです。

しかし、どう考えても2人は大谷クラスだと思います。

まず、鳥山氏の場合は、『ドラゴンボール』の成功は、ミレニアル以下の世代の全世界の人々の人生を変えたといっても良いインパクトがあります。更に『ドラクエ』のデザインクリエーターとしても、世界的な影響力があったのです。ですが、日本のある世代から上になると『Dr.スランプ』の「アラレちゃん」の作者といったイメージしかなく、その影響力が正当に評価されていないように思います。

その訃報に対して、CNNやBBCが大きく扱ったり、フランスや中国の政府が公式に哀悼の意を表明したり、その存在感は巨大なのですが、国内ではピンと来ていない感じがするのは残念です。

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小澤征爾氏に対する「どうでもいい」すぎる日本メディアの評価

小澤征爾氏に至っては、全くトンチンカンな評価になっています。日本人で初めてクラシックの指揮者として欧米で活躍したとか、ウィーンの国立歌劇場総監督という業界の最高の地位にあったといった、「どうでもいい」評価が横行しているのは困りものです。

そうではなくて、小澤氏というのは、ガチンコで現代曲の複雑な譜面を徹底的に分析して、作曲家が意図したであろう演奏解釈を自分でコツコツ作っていたのです。その結果として、今では世界中の指揮者が好んで取り上げる『春の祭典』とか『マーラー8番』『トゥンガリア交響曲』などの曲については、多くの指揮者が小澤氏というパイオニアが切り開いたからこそ、演奏ができるわけで、その意味では本当に小澤無双という存在でした。

その功績に関しては、業界で疑う人はいないと思います。とにかく、日本人・アジア人でありながら欧米で成功したから偉大なのではありません。そうではなくて、それまでは演奏解釈が確立しておらず、その結果として難しくて理解されていなかった20世紀の楽曲に対して、演奏の道筋を開拓した巨大な存在なのです。

とにかく、この2人の評価が、母国である日本で正当にされないということには、ガッカリを通り越して悲しい感じがします。

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image by: 塩谷立(しおのやりゅう)公式ウェブサイト-衆議院議員(静岡8区)

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東京都生まれ。東京大学文学部卒業、コロンビア大学大学院卒。1993年より米国在住。メールマガジンJMM(村上龍編集長)に「FROM911、USAレポート」を寄稿。米国と日本を行き来する冷泉さんだからこその鋭い記事が人気のメルマガは第1~第4火曜日配信。

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