なぜ「きれいなトランプ大統領」が誕生するのか?「もしトラ」に新ルート、ライバル白旗の裏で進む新・新世界秩序構築

20240206donaldjohntrump_eye
 

11月のアメリカ大統領選挙に向け、トランプ前大統領の勢いが止まりません。迷走するバイデン氏を退けて、怖いものなしの「2期目のトランプ」が過激な政策で世界を破壊してしまう「もしトラ」シナリオを世界中が警戒しはじめました。ただその一方、現地では「仮にトランプが大統領に返り咲いたとしても、意外と深刻な事態にはならないだろう」という楽観的な“新ルート”も有力視されるように。メルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』著者で、米国在住作家の冷泉彰彦さんが最新情勢を解説します。

トランプが圧倒的優位。米大統領選2024 最新情勢

まず、アメリカの政局ですが、週ごとに混沌がひどくなるのを感じます。

まず共和党ですが、とにかくアイオワとニューハンプシャーの2連勝により、予備選の序盤で、ドナルド・トランプ候補の勝利が見えてきました。勿論、ヘイリー候補は当面選挙戦を継続し、「トランプ有罪判決で世論が一気に離反した場合」に備えています。ヘイリー陣営はまだ資金もあるようです。

ですが、ここまでの結果、そして全国レベルの世論調査等を見ても、どうやらトランプの優位は圧倒的なようで、これは予想外に早い展開となっています。

ここへ来て、ヘイリー推しであった大口の献金者もトランプ勝利への「賭け金」を積み始めました。また、NYタイムスなどの見解では、2016年や2020年の選挙と比較すると、トランプ支持が高学歴者にも浸透しているそうです。

その結果として、徐々にではありますが、興味深い現象が2つ起きています。

米共和党内は「寄らばトランプの陰」状態

まず、共和党内の動きですが、議会の共和党議員団はとにかく11月に大統領選と重なる巨大な同時選挙により、上院の3分の1、下院の全議席が改選になります。

そこで、特に下院の場合に共和党として次も当選したいと思う議員は、余程の都市型選挙区でない限りは一斉にトランプ支持に回っています。

これはもう、制度が生み出した必然というしかありません。まず、11月の選挙で保守票の多くがトランプに流れるとすれば、同時に投票する下院議員の改選選挙で、その議員が「共和党だが穏健派でアンチトランプ」だと、落選してしまう可能性があります。

それ以前の問題として、そんな「アンチトランプ議員」が共和党の候補になっては困るということで、トランプ陣営は夏場の予備選でその議員を次の選挙の候補の座から引きずり降ろしてしまうでしょう。

過去に2016、18、20、22と4回の下院議員選挙ではこのような動きが繰り返されてきています。それでも、多くの共和党議員はトランプを認めずに選挙に通ってきたわけですが、今回はここまでトランプ支持が浸透している中では、もう限界というわけです。

勝ち馬に乗るというよりも、トランプ票を怒らせると選挙に通らないという危機感があるのです。

冷静に考えれば、共和党も含めた多くの下院議員は、2021年の1月6日に他でもない下院の議場をトランプ派に襲撃されて、命の危険を感じた議員もいるはずです。

にもかかわらず、ここまで広範なトランプ支持があるというのは、とにかく選挙のメカニズムと、この早い時期におけるトランプ支持の広がりということがあると思います。

ライバルも応援団化し「おこぼれ」に虎視眈々

2つ目の現象というのは、トランプに挑戦していた大統領候補たちの動向です。

徹底的にトランプを批判していたクリス・クリスティ前ニュージャージー知事は例外ですが、その他の候補たちは素早く「トランプ応援団」に変身しています。

ヴィヴェク・ラムズワミ(インド系起業家)、ティム・スコット(アフリカ系上院議員)、更には大物であったロン・デサンティス(現職のフロリダ州知事)という顔ぶれがトランプと一緒に演説会に登場しているのです。

勿論、こうした元ライバルたちには野心があるのはミエミエです。トランプ票に知名度を売って2028年に自分が大統領候補として本格参戦する際には支持を得たいとか、あわよくば副大統領候補に指名されればというような「野心」です。

この3人について言えば、そもそも予備選で戦っている時から、トランプ(ずっとTV討論では「不在」でしたが)への批判から逃げ回っていたのですが、今から考えれば先を考えての判断だったわけです。

ということで、議会の共和党議員団の間でも、そしてこの間、大統領候補の予備選を戦ったライバルたちの間でも、トランプ支持は拡大中です。

では、これでトランプ支持が強大なものととなり、いよいよ「2期目の怖いものなしのトランプ」による過激な「破壊活動」が行われていく、だから、世界中が「もしトラ」シナリオに備えてゲームプランを変更しないといけないのかというと、意外とそうでもないという声があります。

この記事の著者・冷泉彰彦さんのメルマガ

初月無料で読む

print
いま読まれてます

  • なぜ「きれいなトランプ大統領」が誕生するのか?「もしトラ」に新ルート、ライバル白旗の裏で進む新・新世界秩序構築
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け