「イメチェン」はトランプ陣営にも利益大
楽観的な予測になるかもしれませんが、こうした「大応援団」というのは、もしかしたらNATO解体とか、日米同盟破棄といった極論にストップを掛ける存在になるかもしれません。
今まだ撤退していないニッキー・ヘイリー候補のように真正面からトランプと対決するのではなく、オール共和党がトランプ与党になることで、トランプに乱暴な判断を止めさせるという構図になる可能性が出てきたということです。
そこで鍵を握るのは、トランプ候補がやがて指名することになる副大統領候補の名前です。恐らくトランプはこの問題については相当に悩んでいると思われます。
まず、前回のマイク・ペンスのように、肝心なところ、つまりトランプが2020年から21年にかけて、バイデンの当選を認めずにホワイトハウスに居座ろうとした際のような「トランプの勝負どころ」で「裏切る人材」では困ると考えているはずです。
副大統領のレベルではありませんが、トランプは、前政権の際に「連邦政府の高級官僚が言うことを聞かなかった」ことを根に持っているようです。
そこで、忠誠を誓うかの踏み絵を踏ませて、政治任用で指名できるレベルだけでなく、広範な中央官僚を「忠誠を誓った人物」にする計画を持っているとされています。
副大統領も、当然「ペンスのような普通の共和党政治家」では裏切ると思っているはずです。
その一方で、ここまで支持層が幅広くなってくると、流石にギンギンの右翼にするわけにはいかなくなるという問題もあります。また、中間層の離反ということを考えると、少なくとも本選を意識した際には、「まともな」候補でないと選挙戦には不利という計算もあるはずです。
更に、この次に当選した際には、その新政権には、長女のイヴァンカ夫妻は参加しないわけで、そうなると「現実世界」との連絡ができる人物がいなくなって政権が回りません。
そんなわけで、例えばですが、セラ・ハッカビー=サンダース氏(現アーカンソー知事、元ホワイトハウス報道官)、エリス・ステファニク氏(現職の下院議員、共和党議員団幹部)、マイク・ポンペイオ氏(元国務長官)など、純粋トランプ派ではない「イザという時は正気になる人」を指名する動機が出てきます。
仮にこうした「実務の分かる」副大統領候補が指名されれば、そこを突破口としてトランプ政権を「普通の共和党政権」レベルまで「毒消し」することは可能になってくるかもしれないわけです。
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