水俣病被害者マイク音オフ問題で露呈した、岸田自民「謙虚さ」も「聞く力」も喪失した深刻な現状

2024.05.13
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5月1日に行われた水俣病の患者・被害者らと伊藤環境相との懇談の際、被害者の発言中にマイクの電源を切り大きな批判を浴びることとなった環境省。何が彼らをかような「暴挙」に走らせたのでしょうか。今回、毎日新聞で政治部副部長などを務めた経験を持つジャーナリストの尾中 香尚里さんは、謙虚さを失った自民党の姿勢に原因があると指摘。その上で、聞く力を喪失した同党にはもはや「ごく普通の政権運営ができる能力」すら見出すことはできないとの厳しい見方を示しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/メルマガ原題:環境省の「マイク切る」問題

プロフィール:尾中 香尚里おなか・かおり
ジャーナリスト。1965年、福岡県生まれ。1988年毎日新聞に入社し、政治部で主に野党や国会を中心に取材。政治部副部長、川崎支局長、オピニオングループ編集委員などを経て、2019年9月に退社。新著「安倍晋三と菅直人 非常事態のリーダーシップ」(集英社新書)、共著に「枝野幸男の真価」(毎日新聞出版)。

以前から準備していたシナリオ。何が環境省「水俣病被害者マイク音オフ」問題を招いたか

水俣病の患者・被害者らと伊藤信太郎環境相との懇談の席(1日)で、環境省の職員が被害者の発言中にマイクを切って発言を遮り、1週間後の8日になって伊藤環境相が謝罪に追い込まれた問題が、大きな批判を受けている。マイクオフ自体もさることながら、さらに驚かされたのは、同じ8日の衆院内閣委員会で、環境省が今回の対応について「以前から準備しており、今回初めて発動した」ことを認めたことだった。

今回の問題でまず思い出したのは、前身の環境庁時代の1977年、石原慎太郎環境庁長官が水俣病患者に対し「IQが低いわけですね」などと差別発言し、謝罪に追い込まれたことだったが、あれは多分に石原氏個人の資質の欠如とみることもできた。環境省が「以前から準備していた」のを認めたことで、今回のマイクオフ問題は、より組織的な問題だったことになる。

百歩譲って「官僚が勝手に暴走した」としても、現場にいた伊藤氏は「私はマイクを切ったことについては認識しておりません」と述べ、事務方をたしなめることも、患者側に改めて発言を促すこともせずにその場を立ち去った。こうなるとそれはもう閣僚としての問題だし、岸田文雄首相が伊藤氏の続投を認めたのは、内閣全体の姿勢の問題と言わざるを得ないだろう。この問題を国会で取り上げた立憲民主党の中谷一馬氏は「岸田政権の『聞く力』のなさを体現している」と批判したが、同感だ。

こういう場面に接するたびに思い出してしまうのが、中谷氏の「師匠」でもある菅直人元首相の、民主党政権時代の対応だ。東京電力福島第一原発事故で避難を強いられた住民の避難所を訪ねた時に、避難所を去ろうとした菅氏に被災者から「もう帰るんですか!」と声をかけられた場面である。

この場面は当時から、テレビやネットなどで何度となく繰り返された。「被災者に冷たい首相」のイメージが、これでもかとばかりに喧伝された。現在でもこのイメージを持ったまま、今回の伊藤氏の姿と重ねる人もいるかもしれない。

しかし、このエピソードには「続き」がある。

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