水俣病被害者マイク音オフ問題で露呈した、岸田自民「謙虚さ」も「聞く力」も喪失した深刻な現状

2024.05.13
 

改めて自民党の惨憺たる現状を感じさせた「ある会見」

環境省の「マイク切り」問題で伊藤氏が謝罪に追い込まれたのと同じ8日、徳島市で一つの記者会見があった。立憲民主党が次期衆院選の徳島1区への擁立を決めた新人、高橋永氏の出馬会見だった。高橋氏はかつて自民党で「クリーン三木」と呼ばれた三木武夫元首相の孫にあたる。会見で高橋氏は「政治への信頼を回復し、三木武夫や母(元参院議員の高橋紀世子氏)も目指したクリーンな政治を実現したい」と語った。

裏金問題に揺れる自民党に三木氏のような人物が残っていれば、とも思うが、ここでは違うことに触れたい。

首相就任前に副総理兼環境庁長官を務めていた三木氏は、1973年に水俣を訪れ、胎児性水俣病患者の女性をその手に抱きかかえながら被害者の話に耳を傾けた。三木氏は被害者に対し、国の事業として水俣病の研究を行うことを約束。これが5年後の78年に設立された国立水俣病研究センター(現・国立水俣病総合研究センター)である。

こういう政治家と縁のある人物が、自民党ではなく野党の立憲民主党からの出馬を選んだこと自体に、改めて自民党の惨憺たる現状を感じるのは筆者だけだろうか。

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尾中香尚里

プロフィール:尾中 香尚里(おなか・かおり)
ジャーナリスト。1965年、福岡県生まれ。1988年毎日新聞に入社し、政治部で主に野党や国会を中心に取材。政治部副部長、川崎支局長、オピニオングループ編集委員などを経て、2019年9月に退社。新著「安倍晋三と菅直人 非常事態のリーダーシップ」(集英社新書)、共著に「枝野幸男の真価」(毎日新聞出版)。

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