前回掲載の記事で、予算案の早期衆院通過を図る自民党への抵抗戦術として立憲民主党の山井和則衆院議員が行った、2時間54分という長時間演説の序盤を紹介した、ジャーナリストの尾中 香尚里さん。尾中さんは今回、その演説の締めくくりまでを取り上げ解説するとともに、毎日新聞で政治部副部長などを務めたメディア出身者として、マスコミに求めたい「気概」を記しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題「立憲民主党・山井和則、魂の大演説 後編」
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プロフィール:尾中 香尚里(おなか・かおり)
ジャーナリスト。1965年、福岡県生まれ。1988年毎日新聞に入社し、政治部で主に野党や国会を中心に取材。政治部副部長、川崎支局長、オピニオングループ編集委員などを経て、2019年9月に退社。新著「安倍晋三と菅直人 非常事態のリーダーシップ」(集英社新書)、共著に「枝野幸男の真価」(毎日新聞出版)。
野党以上にだらしないマスコミ。野党議員が2時間54分の「ぼやき漫談」国会演説で得た“戦果”も冷笑するのか?
3月1日の衆院本会議で「衆院史上最長」を記録した、立憲民主党・山井和則氏による小野寺五典予算委員長解任決議案の趣旨弁明。2時間54分の演説で特に注目したのは、対立政党から投げつけられるヤジをその場で拾い上げ、当意即妙に「対話」したことだった。
ヤジまで褒める山井氏の胆力
前編で指摘した通り、山井氏の演説のポイントは「予算案の審議は80時間行うことが暗黙のルールなのに、小野寺氏が69時間で審議を打ち切ることを、与野党の合意なく強行した」ことにある。そのことを切々と訴える山井氏に、与党から「早く終われ!」とヤジが飛んだ。
それを聞いた山井氏の長い反論が始まる。
「いや今ね、『早く終われ』とおっしゃるけれど、土曜日(3月2日)に審議とか、採決とかすると言ってるから、私はこうやって言わざるを得ないんでしょうが」
「世の中円満が一番ですよ、円満が。政策では戦う。でも、国民の皆様の幸せのために、合意するところは合意する(のが本来の予算委員会の姿だ)。(そのことが)おかしいと思われる自民党の議員っておられるんですか?おられます1人でも?いないでしょう?いないじゃないですか」
山井氏は議場のあちこちを指差しながら演説を続けた。
「私、難しいこと言ってますか?『80時間(審議を)やろう』と言ってたのを69時間で打ち切ったから、私がこの演説してるんじゃないんですか。どっちが悪いんですか?」
再び議場からヤジが飛ぶ。なんと山井氏はそのヤジを「褒めて」みせた。
「いや今ね、自民党の方、いいことおっしゃった。『80時間やっても(野党は)反対するんでしょ』って。
そりゃあね、賛成、反対はね、私たち考えますよ(反対することもありますよ)。でもね、私が言ってるのは、国会のルールなんですよ、ルール。激しい議論はするけれど、しっかり80時間審議して、賛成、反対の結論をする(結論を出す)。例年80時間議論しているところ、69時間しか審議できなかったら(中略)国会が機能しなくなるんじゃないですか?いかがですか?」
「さっき聞いた!」。またヤジが飛ぶ。山井氏は「『さっき聞いた』って、全然わかってないから、もう1回言わざるを得ないんでしょうが!」と言い返した。