裏金クソメガネの思い通りにはさせぬ。野党議員が自民に2時間54分も聞かせ続けた「脱力系ぼやき漫談」の破壊力

2024.03.06
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十分な審議を尽くすこともせず、新年度予算案の衆院通過を画策した自民党。これに対して野党は採決を遅らせるため、フィリバスターと呼ばれる長時間演説による抵抗戦術に出ました。フィリバスターについては「議事妨害」との批判も多々聞かれますが、1日に立憲民主党の山井和則衆院議員が行った演説はそれには当たらないとするのは、毎日新聞で政治部副部長などを務めた経験を持つジャーナリストの尾中 香尚里さん。尾中さんは今回、そう判断する理由を解説するとともに、2時間54分という衆院での最長を記録した山井氏の演説内容を紹介しています。

※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題「立憲民主党・山井和則、魂の大演説」

プロフィール:尾中 香尚里(おなか・かおり)
ジャーナリスト。1965年、福岡県生まれ。1988年毎日新聞に入社し、政治部で主に野党や国会を中心に取材。政治部副部長、川崎支局長、オピニオングループ編集委員などを経て、2019年9月に退社。新著「安倍晋三と菅直人 非常事態のリーダーシップ」(集英社新書)、共著に「枝野幸男の真価」(毎日新聞出版)。

ヤジとも「対話」。関係者すら意外な展開と驚く一級品の演説 前編

自民党の派閥の政治資金パーティー裏金事件をめぐり、迷走を続けている通常国会。自民党が野党の追及をいかに逃れ、裏金事件を「終わったこと」に持ち込もうと右往左往しているさまは目を覆うばかりだが、そんな国会で1日、日本の国会の歴史に残ると言ってもいい名場面が生まれた。立憲民主党の山井和則衆院議員による、小野寺五典・衆院予算委員長(自民党)解任決議案の趣旨弁明である。

2時間54分にわたった趣旨弁明は、同じ立憲民主党の枝野幸男代表(当時)が2018年7月に衆院本会議で行った安倍内閣不信任決議案の趣旨説明(2時間43分)を超え、衆院で最長を記録した。しかし、注目すべきは長さではない。誰にでもわかるやさしい言葉で「国会の役割とその素晴らしさ」を語り、議場のヤジとも「対話」して場の空気を支配していった、その弁論術に感銘を受けたのだ。

久々に「政治における言葉の力」を感じた。時間のみならず、内容の面からも一級の演説だった。

この趣旨弁明が発生するまでの流れを簡単に振り返る。

裏金事件をめぐり、野党はパーティー収入の還流(キックバック)を政治資金収支報告書に記載しなかった安倍派、二階派の衆院議員51人に対し、衆院政治倫理審査会(政倫審)への出席を求めた。51人のうち誰が出席するか、政倫審公開か非公開かなどをめぐり自民党が迷走を極めるなか、岸田文雄首相は突然、呼ばれてもいないのに自らが政倫審に出席すると表明した。

首相の突拍子もない発言の狙いが、2024年度予算案の年度内成立に向け、問題の「幕引き」を図ることにあるのは明らかだった。首相は2月28日、何一つ新しい事実を明らかにすることなく政倫審を終えると、翌29日に衆院予算委員会の小野寺氏が、これも突然、予算案を1日に採決することを委員長の職権で決めてしまった。

「トップが政倫審に出たんだから、裏金なんてもういいだろ?予算案は年度内に成立させてもらうよ」と言わんばかりの自民党に、立憲民主党の安住淳国対委員長も「最低の総理大臣」と口走った。立憲は1日朝、小野寺委員長の解任決議案を衆院に提出。そしてこれが、関係者すら「意外な展開」と驚く歴史的な演説を生むことになったのだ。

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