裏金クソメガネの思い通りにはさせぬ。野党議員が自民に2時間54分も聞かせ続けた「脱力系ぼやき漫談」の破壊力

2024.03.06
 

何が山井氏のスイッチを入れたのか。突如始めたぼやき漫談

関係者によると、山井氏に求められていたのは「自民党が1日じゅうの採決を諦めるまで、とにかく時間を稼ぐ」ことだったようだ。フィリバスター(長時間演説による抵抗戦術)に挑むことは決まったが、大量の資料を前に、演説の内容も事前には十分に定まっていなかったらしい。山井氏自身も不安を感じていたのか「同僚議員に長時間演説のコツを尋ねていた」との証言もあるほどだ。

しかし、大量の資料を議場に持ち込み、解任決議案の案文をやや頼りなげに読み上げた頃から、山井氏の何かにスイッチが入った。山井氏は原稿も資料も打ち捨て、予算委員会の筆頭理事としての自らの思いを、ぼやきを交えて延々と語り始めたのだ。

フィリバスターを単に「国会審議を妨害するための野党の戦術」と断ずる向きがあるが、少なくとも山井氏の演説について、それはあたらない。演説の中で山井氏は「円満」という言葉を何度も繰り返した。

「私はやはり、国会というのは、被災者支援、防衛、外交も含め、まあ対立するところは仕方ありませんけれど、できる限り円満に進めていく。かつ、ルールに基づいて、80時間なら80時間(質疑を)やる。それが当たり前の民主主義のルールではないでしょうか」

「80時間」について、少し説明が必要だろう。

予算案は例年、採決までに80時間の審議時間を取ることが、与野党の暗黙のルールとなっている。採決までの80時間をどう使うか、どの段階でどんな質問を繰り出すかに、野党は精いっぱい頭を絞る。ところが今回、小野寺氏は80時間まで11時間を残した69時間の段階で、野党の合意を得ずに突然審議を打ち切り、採決することを決めた。

舞台を見に行ったら、クライマックスの直前でいきなり幕が降りたようなものだ。残り11時間、様々な質問を用意していたはずの野党側としては、たまったものではない。山井氏はまず、野党側の怒りのポイントがここにあることを明らかにして、解任決議案提出の正当性を訴えた。

「今回の国会は、やはり能登の震災がありましたから、できるだけ円満にということで(自民党の)加藤(勝信)筆頭理事ともできるだけ協力しながら、円満に、円満に、質疑を積み重ねてまいりました。

しかし、私も謎なんですよね。別にね、『(採決を)1週間遅らせてくれ』とか『来年度予算を通さない(成立を阻止する)』って言ってるわけじゃ、全然ないんですよ」

能登半島地震の被災者支援や復興支援に影響を及ぼさないよう、予算案成立を阻止するために採決に抵抗する考えはないことを強調した上で、山井氏はさらに続けた。

「明日(2日)、明日ね、土曜日ですけれど、卒業式のシーズンですよね。大切な卒業式に出られる都合を立てておられる方、非常に多いと思いますよ。ここで提案しますがね、明日の審議とか採決とか、さすがにそれはやめませんか。いかがでしょうか?」

「1日採決」に野党側が抵抗する構えだとみるや、岸田首相サイドは翌2日が土曜日であるにもかかわらず、無理にでもこの日に審議をして予算案を2日に衆院を通過させる考えをちらつかせてきた。

予算案は衆院を通過して30日がたてば、参院で採決が行われなくても自然成立することが、憲法に定められている。つまり、2日までに衆院を通過させれば、裏金問題で参院の質疑が紛糾しても、予算案は年度内に成立することが決まる。

有り体に言えば、岸田首相は「裏金問題を事実上、この日で幕引きできる」と考えたわけだ。

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