「なんか私変なこと言いましたかね?」敵の心にも届いた脱力系の語り口
首相がこだわる「裏金問題の幕引き」のために、全衆院議員のみならず、国会職員も中央省庁の官僚もメディアも記者たちも、多くの人々が土曜出勤を余儀なくされる。山井氏は「予算案の成立を邪魔する考えがない」ことを強調した上で「土日を休んで週明けの4日に審議時間を確保して採決しても、別に問題ないではないか」という、極めてリーズナブルな提案をしてみせた。
それにしても、議場の議員たちに向けて「明日の採決はやめませんか?」と呼びかけるのは、国会の演説としては相当に型破りである。議場は拍手とヤジに包まれた。
山井氏はしばらく黙り込んだ。言葉に詰まったのではない。演説の時間を延ばす戦術でもない。議場の喧騒に黙って耳をすましていたのだ。そしてこう一言。
「なんか私変なこと言いましたかね?」
国会での演説らしからぬ「ぼやき漫談」のような語り口は、やがて少しずつ場の空気をつかんでいった。与党が圧倒的多数を占める本会議場で、山井氏がそういう空気を作ることに成功したのは、ひとえに岸田首相の身勝手な国会運営への介入への違和感が、与野党を超えて一定程度共有されていたことに加え、山井氏のやや「脱力系」な語り口が、政敵の心にも届く力を持っていた、ということなのだろう。
おそらく本人も想像しなかった形で、趣旨弁明はやがて「山井劇場」の様相を呈していった。
演説の序盤で相当な文字数となってしまった。「衆院史上最長の演説」なのだから、これも致し方ないだろう。続きは次回に譲ることにする。
(この記事は「無意味な抵抗戦術」と揶揄するメディアの情けなさを一刀両断する後編へ続きます)

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