全世界が失望。ハマスが受け入れたガザ戦争「停戦案」を突っぱねるネタニヤフ首相が国際社会に突きつけたモノ

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仲介国によって示されハマスが受け入れの意思を表明するも、イスラエルが突っぱねたガザ停戦交渉案。もはやこの先、ガザ地区に平穏な日々が訪れることはないのでしょうか。今回のメルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』では元国連紛争調停官の島田さんが、イスラエルとハマスの直接交渉こそが停戦のカギとなるとした上で、その実現可能度について考察。さらに調停の実施にあたり障壁となっている二国の実名を挙げています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/メルマガ原題:終わらない戦争と世界の分断‐出口の見えない混乱の時代

またも停戦交渉決裂。イスラエルとハマスの戦いは世界を分断するのか

「ついにイスラエルとハマスの終わりなき戦いにピリオドを打つことが出来るかもしれない」

主張の隔たりが大きく、双方が必要とする条件がとても相容れないものとの理解から、解決のための糸口は見いだせないだろうと思われていた紛争に一筋の“希望の光”が差したのではないかという見解は、ゴールデンウイーク明けのニュースとして伝えられました。

エジプトとカタールによる仲介努力の成果として戦闘停止と人質解放に向けた合意案が、カタールを通じてイスラエルとハマスそれぞれに提示されました。

アメリカのブリンケン国務長官は4月29日に「これはイスラエルによる非常に寛大な提案」とイスラエルを持ち上げ、ハマスに合意を迫り、いくつかの重要な修正が加えられたのち、ハマスは基本的に受け入れる方針を示しました。

最初の楽観的な認識は、その頃、多くの人たちから提示されました。

しかし、結果としてイスラエル政府は強硬姿勢を崩さず、「イスラエルとハマスの提案の間にはまだ大きな隔たりがある」と合意機運を突っぱね、国際社会が考えを改めるようにイスラエルに迫るラファへの作戦を強行しました。

これでまた緊張が高まり、さらにはイスラエルに対する国際社会からの非難も強まりました。

当初、イスラエルが合意可能とした一時休戦期間は40日間で、その間に“無条件に人質全員の開放を行うこと”が条件でしたが、ハマスは恒久停戦に向けた交渉を視野に、42日ずつの3段階に分け、段階ごとに人質解放を実施するというものでした。

この停戦案が示された際、個人的には「これはイスラエル政府的にはひとまず受け入れることが出来るのではないか」と感じましたが、ネタニエフ首相は「これはハマスの体制の立て直しに利用され、結果、さらなる悲劇をイスラエルにもたらすことになる」として、合意しませんでした。

しかし、これまでと違うのはイスラエル交渉団を引き返させるのではなく、そのまま協議が行われているエジプト・カイロに留め、必要に応じて休戦交渉に臨む姿勢を示しています。

このことから、今回、ネタニエフ首相による合意拒否と、国際社会からの非難の強まりを覚悟してでもラファへの侵攻の継続を示唆したのは、ハマスからさらに多くの譲歩を引き出そうという思惑も見え隠れしているように感じます。

個人的には、今回、イスラエルはハマスから寄せられた合意案への返答内容を一旦受け入れ、少なくとも女性や子供、病人などハマスにとらえられている人質の一部を取り戻すことにつなげ、同時に国内各都市で毎週行われる反政府デモを鎮静化させるきっかけを作れたかもしれません。さらには、ガザ地区における人道危機の深刻化に対するイスラエル批判を和らげ、“同盟国”アメリカの顔を立てることもできたかもしれません。

実際にカイロに派遣されているバーンズCIA長官も同様のことを言っていたようですし、国内大学などでパレスチナ支援および反イスラエルデモが繰り広げられ、国論が二分化されていることに危惧を抱く米議会の面々も、従来のイスラエル支持の姿勢に戻ることが出来たかもしれません。

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