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自民党のイメチェン大作戦「上川、高市、進次郎」選挙の顔すげ替えへ?当たりクジなし政治賭博 裏で糸引く黒幕魂胆

「裏金議員を厳しく処分しろ」の批判もどこ吹く風、まったく生まれ変わる気配がない自民党。彼らに旧来の金権政治を刷新する覚悟は微塵もないようです。一方、今の低支持率では“下野”もあり得るという危機感から、うわべだけのイメージチェンジ作戦は着々と進行中。岸田首相、麻生副総裁、茂木幹事長、菅前首相ら懲りない面々が、自らの保身と生き残りを賭けて“選挙に勝てる、自民党の新しい顔”を模索しはじめました。上川陽子、高市早苗、そして小泉進次郎…誰が選ばれても嫌な予感しかない自民“次の一手”について、メルマガ『国家権力&メディア一刀両断』の著者で元全国紙社会部記者の新 恭さんが詳しく解説します。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/メルマガ原題:生まれ変われない自民党。口つぐむ裏金議員の処分にも及び腰

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自民党がすげ替えを急ぐ“選挙の顔”

政倫審における自民党の安倍派や二階派の議員たちの知らぬ存ぜぬ発言に、ますます国民は不信感を募らせている。知らないはずがないからだ。

“裏金議員”を早く処分してほしい」。有権者の罵声を浴びる地方議員たちの訴えは切実だ。

4月28日には衆議院の補欠選挙が3つ控えている。東京15区、島根1区、長崎3区。このままでは全敗の可能性だってある。

そうなれば、岸田首相の命運は尽きたも同然だ。自民党は、なにがなんでも“選挙の顔”を変えようとするだろう。

党総裁選は半年後に迫る。岸田首相に残された道は限られてきた。通常国会が閉会する6月までに衆院解散・総選挙に持ち込めるかどうかだが、できることなら、衆院3補欠選挙に合わせてやりたいところだ。

生まれ変われぬ自民。茂木幹事長がサボタージュか

その意味で、岸田首相にとって、3月17日に開かれた自民党大会は、これまでにない重要な意味を持っていた。自民党が生まれ変わる日にしたかったのだ。

岸田側近が描いたベストシナリオを以下のように想像してみた。

党大会までに、“裏金議員”に対し、除名、離党勧告、党員資格停止などの処分を決定し、党大会で新しい党のルールを定めて、党再生への第一歩をしるす。それによって、内閣支持率が明らかな上昇に転じれば、間髪を入れず衆院解散を断行する。

これら全てを鮮やかに運ぶことができれば、なんとか自公で過半数を確保し、総裁選で岸田首相が再選される可能性が高まるという算段だった。

しかし、現実には“裏金議員”の処分が決まらないまま党大会を迎えた。

党大会の挨拶で、岸田首相は「先日、幹事長に対し、関係者に対する党としての処分について結論を得るよう指示をした」と述べた。茂木幹事長も「早期に厳正な対応を取っていく」と表明してはいるが、表情はさえない。

岸田首相の独断専行に反感を抱く茂木幹事長がサボタージュを決め込んでいるというのが、永田町界隈で囁かれる処分難航の原因だ。

緩い対処では世間が納得しないだろうし、厳しい処分だと安倍派や二階派の間から反発が強まるだろう。

だがこのまま放置しておくと、自民党は自浄能力がないとみなされて自滅する。近いうちに処分を下さねばならないのは確かだ。

しかも、岸田首相、茂木幹事長、いずれにとっても、萩生田光一氏、西村康稔氏、世耕弘成氏といった安倍派の実力者たちを厳しく処分することは、権力闘争のライバルを蹴落とすことでもある。

だが、派閥存続にこだわる麻生副総裁と茂木幹事長は、党大会にかける岸田首相の意気込みを苦々しい思いで受けとめていたかもしれない。岸田首相は「派閥解消」を党改革の柱としてきたからだ。

党改革を骨抜きにする麻生副総裁

岸田首相は党に自らをトップとする政治刷新本部を設け、中堅若手議員を中心とする三つのワーキンググループで、大会に提案する改革案を練ってきた。

各グループに懐刀の木原誠二氏を幹事として送り込むほどの周到さで、「派閥解消」への議論の流れをつくった。

その結果、党則やガバナンスコードは、派閥に関し下記のような原則を付け加えるよう改定され、党大会で採択された。

資金力と人事への影響力を背景に議員を集め、数の力で影響力を強めようとする組織を「派閥」と定義し、こうした旧来の「派閥」の存続及び新たな設立を禁止する。

そのうえ、政策集団の政治資金パーティーや夏冬の「氷代」「もち代」といった手当を禁止し、資金の流れの透明化をはかることになった。

むろん、これで派閥が完全に無くなると考えるのは、いささか気が早い。政策研鑽や人材育成を担う「政策集団」としてなら存続できるとされており、麻生派や茂木派はすでに「政策集団」への移行を決めている。

派閥のパワーバランスを権力の土台としてきた麻生副総裁や茂木幹事長も、当面、この決定で困ることはないだろう。

しかし、「政策集団」という名のもとに実質、以前と変わらない派閥運営をするつもりだっただけに、今後やりにくくなるのは確かだ。

生き残りを模索する麻生太郎副総裁の“女性総理”推し活

岸田政権を支えてきた岸田派、麻生派、茂木派の三派連合は今や微妙な関係にある。

麻生氏は岸田首相に見切りをつけている。さりとて、これまでの方針通り、茂木氏をポスト岸田に担ぐかというと、そうもいかない。

なぜなら、裏金問題をきっかけに、国民が旧来の自民党体質に嫌気を示しており、茂木氏を総理にする動き自体が反発を招きかねないからだ。

そこで、麻生氏はキングメーカーとして生きながらえるため、別の方法を模索し始めたフシがある。

地元・福岡での講演のなかで、上川陽子外相のことを取り上げたのも布石の一つだ。

「そんなに美しい方とは言わない」と余計なひと言をつけたためメディアの批判を浴びたが、「新しいスターがそこそこ育ちつつある」と上川氏を評価した。

結果的にこれが上川氏の存在を広く世に知らしめるきっかけとなり、麻生氏の推す女性総理候補として急浮上した。オッサン政治で汚れた自民党の苦境を救うのは女性しかいないという判断もあるのだろう。

岸田首相と「二人で院政を敷こう」?

上川氏は岸田首相と同じ宏池会出身である。麻生氏がその名前をあげたのは、単なる思いつきではない。

「自分で潔く引き際を決めれば、後継者を選ぶことだってできる」(3月13日現代ビジネス)と岸田首相にアドバイスしたとも伝えられている。二人で院政を敷こう、ということか。

岸田首相としては、あくまで自らの手による衆院解散・総選挙が最優先事項である。しかし、それが叶わないと情勢判断すれば、麻生氏の助言に従い、総裁選の前に後継者を選んで自ら身を引くということも視野に入れているに違いない。

虫のいい思考法だが、鈍感力としぶとさこそが岸田首相の真骨頂だ。

高市早苗氏、自民総裁選立候補に準備着々

もちろん、いかに自民党が人材難といえども、そうやすやすとコトが運ぶはずはない。

今後の動きが注目されるのは、無派閥であるがゆえに存在感を増す菅義偉前首相と、保守系議員の支持を集めるであろう高市早苗・経済安全保障相だ。

高市氏は昨年11月、外交・安全保障などに関する勉強会「日本のチカラ研究会」を設立し、総裁選に向けた準備を進めている。今のところ、参加者は10人を少しこえるていどだ。

今年2月8日には、保守系議員グループ「保守団結の会」の勉強会に講師として招かれている。同会と「日本のチカラ研究会」の連携でどれだけ数を上乗せできるかが焦点だ。

総裁選立候補に必要な推薦人数の20人に達するかどうかは今のところ微妙だが、おそらく出馬にこぎつけるだろう。

菅義偉前首相「そろそろ進次郎という選択肢」

菅前首相は3月1日夜、東京・港区の料亭に姿を見せた。二階派の武田良太氏がセットしたその会合には、武田氏のほか萩生田光一、加藤勝信、小泉進次郎の各氏が集まり、菅氏を囲んだ。

武田、萩生田、加藤の3氏は菅政権を閣僚として支えたメンバーだ。名前の頭文字から「HKT」とも呼ばれ、しばしば会合を開いている。そこに、菅氏と、菅氏に近い小泉氏を招いた形だ。

武田氏が地元福岡の政界で麻生氏と対立関係にあることはよく知られている。加藤氏は茂木派ではあるが、茂木幹事長との仲はあまりよくない。

会合では終始、岸田政権のガバナンスのなさが話題になり、菅氏から「そろそろ進次郎という選択肢はどうか」という話が出たといわれる。

小泉氏はまだ42歳。老人が幅を利かす日本政界では若輩の部類だし、父、小泉純一郎元首相も「首相になるのは、50歳になってからでもいい」と言っている。

そんなわけで小泉氏が出てくる可能性は低いとみられるが、党再生のために新しい“選挙の顔”を求めている自民党の現状からチャンスありと菅氏は踏んでいるのかもしれない。

もちろん菅氏の選択肢には、石破茂氏や河野太郎氏も含まれるだろうし、場合によっては菅氏の再登板を促す声が党内で出てくることもありうるだろう。

“カネに綺麗な自民党”は実在しうるか?

むろん、誰が総裁になろうと、自民党の金権体質が解消される保証はない。結党以来、カネが政治活動の拠り所となってきたからだ。

これほど党が危機に瀕してさえ、岸田首相にも、安倍派の幹部たちにも、捨て身になって旧来の政治を変えようという気迫は感じられない。

ANNが3月16、17日に行った世論調査では、「政権交代を期待する」が46%で、「自公政権の継続を期待する」の38%を上まわった

党という“ムラ社会”のなかで、自分の身を守るのに汲々とする政治屋たちの姿に、国民がどれほどうんざりしているかが、ようやく数字になって表れてきたといえる。

野党が頼りないからこちらを選ぶという定番的な投票行動をあてにしていたら、自民党のその慢心は次の衆院選で木っ端みじんに吹き飛ばされるかもしれない。

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