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まるでアニメ。「清楚なお嬢様の毒殺魔」と「貴族女性の吸血鬼」は実在した!

毒殺魔と吸血鬼、どちらもフランスに「実在」していたそうです。今回のメルマガ『歴史時代作家 早見俊の無料メルマガ」』では時代小説の名手として知られる作家の早見俊さんが、清楚なお嬢様の毒殺魔と貴族の娘の吸血鬼だった彼女たちの背景を紹介しています。

毒殺魔と吸血鬼貴族女性

イギリスのミステリ作家ディクスン・カーの代表作の一つに、「火刑法廷」があり、作中には実在した毒殺魔が登場します。マリー・ブランヴィリエ侯爵夫人、十七世紀フランスに実在した貴婦人でした。

マリーは司法官を務める父親の下、厳格に育てられます。家は裕福で、マリーは良家の清楚なお嬢様でした。しかし、それは表の顔、実際の彼女は父親への反発なのか、生まれ持った淫乱の血がそうさせたのか、弟たちと近親相姦に耽っていました。連日連夜セックス三昧の日々が収まったのは二十一歳の時でした。陸軍士官だったブランヴィリエ侯爵と結婚したのです。

侯爵との結婚生活は決して幸福ではありませんでした。夫にとってマリーとの結婚は持参金目的、彼は大のギャンブル好き、浮気もし放題でした。弟たちとのセックスで熟したマリーの体は火照り、性欲は抑えられず、大勢の男を漁ります。

その中から気に入ったのが夫の友人、ゴーダンでした。ゴーダンとの不倫は父親の耳に入り、怒った父親はゴーダンを投獄しました。

ゴーダンは獄中で知り合った犯罪者から毒薬の調合を教わります。出所後マリーに伝え、ここに稀代の毒殺魔が誕生したのでした。

マリーは父親を毒殺し財産を奪おうと企てます。毒の効果を確かめるため慈善病院の患者を実験台にしました。差し入れた菓子の中に毒を入れ、致死量を確認してから父親を毒殺。巧妙なことに、一度に殺さず、少しずつ食事に毒を混入し病死したように装いました。次に弟たちも毒殺して財産を独り占めにし、野望の仕上げに夫を殺そうとします。

しかし、夫毒殺はゴーダンに反対されました。実はゴーダンと夫は男色の関係にあったのです。

やがて、ゴーダンは事故死し、遺品の中からマリーとの殺害計画を記した手紙が見つかり、彼女は修道院に逃げ込んだものの、警察に逮捕されます。

犯行を否認しましたが、魔女、毒殺犯を火刑に処する火刑法廷で口に漏斗を咥えさせられ、水を飲まされ続けるという拷問により白状しました。マリーは斬首刑に処せられ、遺体は火で焼かれました。火刑に処せられる法廷で水責めにされ、毒にも薬にもならない水に屈した毒殺魔でした。

毒殺魔の次は吸血鬼を紹介します。

16世紀から17世紀に実在した名門貴族のエリザベートです。彼女が歴史に名を残すのは吸血鬼ドラキュラのモデルであり、有名な拷問道具、「鉄の処女」の発明者、つまり血に飢えた殺人鬼であったからです。

エリザベートの一族は財産を守るため近親相姦を繰り返した結果、悪魔崇拝者や色情狂と見られる者たちもいました。そうした血が彼女をして殺人鬼にしたのでしょうか。六百人を超える犠牲者はいずれも若い娘ばかりでした。エリザベートは自分の美貌を保つために、若い娘の生き血を求めたからです。

夫はオスマン帝国との戦争で忙しく、留守がちでした。広大な城で暇を持て余したエリザベートは多くの愛人と淫蕩に耽っていましたが、それでは飽き足らず、そして美貌を保とうと若い娘の血を求めます。初めの内は所領の農民の娘を城に幽閉し、内部に棘のある駕籠に押し込んで滑車で吊るし、飛び散る娘の血を浴びていました。夫の死後はエスカレートして下級貴族の娘を行儀見習いと称して城に連れ込んで殺害していきました。

鉄の処女と呼ばれる拷問道具は中が空洞になっていて無数の棘が設けてあります。娘を中に入れて搾り取った生き血でエリザベートは入浴したのでした。まさしく吸血鬼です。この頃になると美貌を保つ目的に加えて苦しみ悶える娘たちを見て快楽を得るようになったのでした。

そんな残忍無比の行為を繰り返しながら罪を問われなかったのは、ひとえに名門貴族だったからです。しかし、幽閉した貴族の娘が逃亡し、ついに罪が発覚して逮捕されました。名門貴族ゆえ死刑にはならず、終身禁固刑を言い渡されます。一切の光が差さない暗黒の塔に閉じ込められ気が変になって死亡したとか。

ドラキュラが太陽光に弱いのはこれがモデルかもしれません。

image by: Shutterstock.com

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歴史、ミステリー四方山話、思いつくまま日本史、世界史、国内、海外のミステリーを語ります。また、自作の裏話なども披露致します。

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【著者】 早見俊 【発行周期】 週刊

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