MAG2 NEWS MENU

アマゾンや楽天の登場が“とどめ”に。スーパーマーケットがこの先、生き残る道はあるのか

北海道と東北、信越の全17店舗の順次閉店を決めたイトーヨーカドー。西友も九州の全店舗を売却し同地域からの撤退を発表するなど、総合スーパーの苦戦が伝えられています。何がこのような状況を招いたのでしょうか。今回のメルマガ『宇田川敬介の日本の裏側の見えない世界の話』ではジャーナリスト・作家として活躍中で、大手スーパーのマイカルでの勤務経験を持つ宇田川敬介さんが、国内スーパーの歴史を振り返りつつその「凋落の理由」を考察しています。

※本記事のタイトルはMAG2NEWS編集部によるものです

西友やイトーヨーカドーに見る小売業の変化。スーパーマーケットの栄枯盛衰

皆さんおはようございます。メルマガ主催の宇田川敬介です。

今年も様々な内容にして、少し違う観点から様々な内容を見てみたいと思います。

普段のブログとは全く関係なく、少し柔らかい内容で見てみたり、国民の慣習のことなどを見てみたいと思っております。

これからもよろしくお付き合いください。

さて今日の話題は「西友やイトーヨーカドーに見る小売業の変化」という内容で行いたいと思います。

日本の小売業

日本の小売業の変遷を簡単に見てみましょう。

まずは大戦後、日本は何もなかった、日本国土のほとんどが焦土と化しまた、生産したものはすべて戦場に送っていたので、日本にはほとんど何も残っていなかったという状況になりました。

その為に、公的に、というか小売業は当時も公的ではなく私企業が行っていましたが、日本全体として物がない時代であったと思います。

もちろん私は体験していませんが、私の父母はその時代を体験しているのでよく聞かされていました。

その時代は「闇市」というものがあり、そこで法外に高いものや、品質が安定しないものを購入するということになっていたようです。

もちろん、そのような市場ですからトラブルも多かったというように聞いています。

そののちに、徐々に、国内のものが流通するようになってゆきました。

まずは個人商店、それも生鮮三品、つまり「やさい」「さかな」「にく」から徐々に行われるようになります。

しかし、日本は戦争で多くの船が失われたばかりか、石油などもほとんどなく、また、為替も当時は1ドル360円でしたから、輸入品はすべて高級品であったといわれています。

今では意外なものが高級品であったのです。

よくたとえで出てくるのがバナナですね。

バナナは、南方の食材で船で運んでこなければなりませんから、「病気にならなければ食べることのできないもの」というような感じであったといわれています。

そのほかにも「スニーカー」や「ゴム」などが高級品でした。

これらも南方から輸入するものですからなかなか手に入らないものであるというように言われていたのです。

そこで国内で生産できるものが中心に「商店街」が成立します。

逆に、今では高級品になったものが当時は安く日常食であったこともあります。

クジラなどは、当時は大事な日本人のたんぱく源であったのですが、今では絶滅危惧種でかなり食べることが難しくなっています。

さて、商店街に行けば様々なものが手に入るというようになったのです。

まだ電気製品もなかなか手に入らないので、松下電器が「ナショナル」というような号を使っていたということになるのです。

そのようなところに出てくるのが「なんでもや」要するに、商店街のように一つ一つの店が集合になっているのではなく「ワンストップで買い物ができる」という店ができるようになったのです。

第一号といわれているのが「主婦の店ダイエー」です。

その後、様々なスーパーマーケットができてくるのです。

この記事の著者・宇田川敬介さんのメルマガ

初月無料で読む

スーパーマーケットの栄枯盛衰

ちょうど私が就職した1990年代がスーパーマーケット最盛期ではなかったかと思います。

それまでは、商店街で日常品を買い、百貨店(デパート)で、気取った買い物をするということが普通でした。

私が小さい頃は、デパートに行くのに「よそ行きのしっかりとした服」で出かけたものです。

その垣根の中間になり、商店街にも百貨店にも進出したのが、スーパーマーケットです。

スーパーマーケットで、ブランド品などにも手を出すようになったのです。

もともとは、スーパーマーケットの走りであるダイエーは、牛肉を安く食べることにするというようなことで行っていました。

その為にオーストラリアなどと提携をしまた、と畜業の人々等とも親しくし、他の小売業が卸業者からしか手に入れることのできなかった牛肉を安く大量に手に入れることに成功したのです。

そのように、様々な「業界の垣根」を打ち壊してきたので、それまでの商店街や、百貨店ではできないような内容をしてきました。

ある意味で、業界の規制が、業界を守ってきたという部分があり、そのことからスーパーマーケットが出てくると商店街がなくなってゆくということが出てきていたのです。

またバブルがはじけて、高級品になかなか手が届かない状態になっているところで、スーパーマーケットが新たなブランドを出したり、または海外の安価なブランドを紹介するなどということで、百貨店も徐々に衰退してゆくことになります。

要するに「商店街に行く日常品」と「百貨店に行かなければ買えなかったブランド品」が両方とも手に入るということになるのですから、多くの人がスーパーマーケットに集まるようになったのです。

考えてみれば、あの頃がスーパーマーケットの絶頂期であったかもしれません。

21世紀になると、一つには専業店の安売りやが出てきます。

ユニクロなどがまさにそのようなものでしょう。

また、価格が安価な「何でも屋」が出てきます。

価格を固定した「100円ショップ」などがその代表例でしょう。

そして「ホームセンター」がより安価で大量に様々なものを売るようになってきます。

それでも、食品ということになれば、やはりスーパーマーケットになります。

そこで、「フルラインのゼネラルマーチャンダイジングストア」と「テナントを含めたショッピングモール」そして「食品を中心にしたスーパーマーケット」の三段階になってきます。

この記事の著者・宇田川敬介さんのメルマガ

初月無料で読む

ネット販売による実店舗の不要論

楽天市場やアマゾンがでてきたのは、21世紀になってからです。

実在の店舗に行かなくても、家に居ながらにして買い物ができるということになります。

もちろん、その為には運ぶ、つまり宅配費がすべて上乗せされるということになりますが、逆に、店がそろえた商品の中ではなく、広く様々なものから商品の種類と値段の比較を行いながら買い物をすることができるということになります。

このような流れに対して、スーパーマーケット業界は、「どうやったら店に来させることができるか」ということが最大のテーマになります。

私がいたマイカルという会社などは「時間消費型」「街をテーマにする」というようなコンセプトを持っていました。

その街のテーマということから、ゲームセンターから映画館、果てはホテルや観覧車まで、街にある機能の多くを持っていたのです。

しかし、結局は二つの課題をどのように両立させるかということが問題になります。

一つ目は「家から出て来るだけの価値をどのように創出するか」という事です。

基本的に買い物ということになれば、ネットで見ることができますし、ネットならば、口コミ情報なども得ることができます。

しかし、逆に「試着をする」「触ってみる」「買った時についでに何か他の商品を買う」というようなことはできません。

基本的には「遊ぶ」「体験する」「触る」ということはできないということになるのです。

ネットというのは、人間の五感の中で「視覚」「聴覚」は充足することができますが、他の三つの感覚、つまり「触覚」「嗅覚」「味覚」に関しては全く体験できることがありません。

そのように考えた場合に、この三つの感覚をうまく前面に出すことによって、顧客を誘引することができるということになります。

しかし、これらで誘引できるのは、「新規の顧客」だけであり「リピーター」はどんなものかわかっているのですから、リピーターの需要はうまくゆかないということになるのです。

ようするに「商品購入客のリピーターを店から買わせるようにする」ということをどのようにするのかということが最も大きな課題になってくるということになるのです。

二つ目は「その価値でどのように売り上げをつけるか」ということです。

「試食」などは、簡単に思いつきます。

しかし、試食というのは「無料」です。

こちらとしては試食させる人が付き、調理し、そのうえで無料で食べさせるので経費が掛かります。

そのように考えると「試食ばかり」で誘引しても、売り上げが伸びないということになります。

そのように考えた場合に、どうやって売り上げを上げてゆくのかということが大きな課題になるのです。

もちろん、マイカルはその戦略に失敗したということになりますから、倒産したのです。

店は、店を保有しているだけで開発費の減価償却や人件費、電気代などのインフラ費があり、そして店の在庫を抱えなければなりません。

その意味で経費が掛からないネットの方がはるかに優れているということになるのです。

西友やイトーヨーカドー

西友やイトーヨーカドーは、それぞれの問題がありまたそれぞれの弱みがあったと思います。

その中で、苦渋の決断をしたのでしょう。

しかし、「店に行って、商品に囲まれて買い物をする」ということ、または「服を試着する」というような事は、やはりネットではできないのです。

それらをどのように実現し、店の魅力を打ち出してゆくか。

そのことを考えないとならないのではないでしょうか。

(メルマガ『宇田川敬介の日本の裏側の見えない世界の話』2024年4月8日号より一部抜粋。続きはご登録の上、お楽しみください。初月無料です)

この記事の著者・宇田川敬介さんのメルマガ

初月無料で読む

image by: Karolis Kavolelis / Shutterstock.com

宇田川敬介この著者の記事一覧

今回は有料で日本の裏側に迫りたいと思います。普段は意識したことのない内容や、どうしてこうなるの?というような話を様々な角度からお話ししてゆこうと思います。

有料メルマガ好評配信中

  初月無料で読んでみる  

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 宇田川敬介の日本の裏側の見えない世界の話 』

【著者】 宇田川敬介 【月額】 ¥440/月(税込) 初月無料! 【発行周期】 毎週 月曜日(年末年始を除く) 発行予定

print

シェアランキング

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MAG2 NEWSの最新情報をお届け