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ここにも「温暖化」の悪影響。NASAが指摘、航空機がこのままの高さでは飛べなくなる“晴天乱気流”の多発

5月21日に発生し、死者1名と多数の負傷者を出したシンガポール航空の乱気流事故。26日にはカタール航空の旅客機がトルコ上空で乱気流に巻き込まれ12人が負傷する事態となっています。今後もこのような事故が多発するとの指摘を取り上げているのは、健康社会学者で元国際線CAの河合薫さん。河合さんはメルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』で今回、「晴天乱気流」に関するNASAの報告と、名古屋大学の先駆的な研究を紹介しています。
※本記事のタイトルはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:乱気流遭遇リスクを回避できるか?

プロフィール河合薫かわいかおる
健康社会学者(Ph.D.,保健学)、気象予報士。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。ANA国際線CAを経たのち、気象予報士として「ニュースステーション」などに出演。2007年に博士号(Ph.D)取得後は、産業ストレスを専門に調査研究を進めている。主な著書に、同メルマガの連載を元にした『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアムシリーズ)など多数。

乱気流遭遇リスクを回避できるか?

シンガポール航空の旅客機が激しい乱気流に巻き込まれ、バンコクに緊急着陸した事故はあまりにも衝撃的でした。

過去の話で恐縮ですが、私も国際線のCAだった頃、何度か乱気流に遭遇しました。幸い急に“ストン“と落ちる程度の乱気流でしたが、国内線から移行してきた先輩の中には、飛行機の天井に叩きつけられるほどの乱気流で前歯が下唇を貫通し、傷跡が残っている方もいました。

今回の事故では、乗客1人が死亡し、40人以上が負傷。そのうち半数が集中治療を受け、22人が脊椎を損傷し6人は重体で危機的な容体だと報じられています。厳しい惨事ではありますが、負傷した方たちのご快復を心から願います。

一方で、今回のような乱気流による事故は今後多発する可能性が指摘されています。理由は「温暖化」です。

米航空宇宙局(NASA)の報告書によると、地球温暖化の影響で「晴天乱気流」が増加すると指摘。2050年までに現在より10~40%増え、飛行機が現在の高度での飛行が難しくなる可能性があるとしました。

積乱雲の接近などで発生する乱気流と異なり、「晴天乱気流」は周りに雲がないためパイロットがレーダーなどで検知するのは極めて困難です。ジェット気流を避けて飛行すれば、乱気流と遭遇するリスクは下がりますが、飛行時間が延びるのでコストの増加につながります。

気象学者たちもAIを駆使して、予測システムの構築を進めていますが、データの収集には時間がかかります。温暖化はさまざまな微妙な変化を生んでいるので、試行錯誤を繰り返すしかないのです。

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そんな中、名古屋大学がスーパーコンピューター富岳の超高解像度気象シミュレーションで、過去に東京湾で発生した晴天乱気流の再現に成功しました。世界初の快挙です。ジェット気流が強くなる冬季に、東京湾ではしばしば晴天乱気流が発生しますので、富岳が再現した乱気流と実際の観測データと比較し、検証したのです。

実際に晴天乱気流の発生する原理や仕組みがわかれば、乱気流が飛行機に及ぼす影響を詳しく調べることができます。航空会社に精度の高い乱気流予測を提供できれば備えることが可能です。

これまでも日本の気象モデルは世界のトップランナーとして、気象予測に君臨してきましたので、乱気流においても期待できそうです。とはいえ、どんなに備えても「人」の能力を最も簡単に超えるのが自然の威力です。

飛行機に乗ったら、安定高度でもシートベルトを必ず締めてください。トイレに行く時も、十分に気をつけてくださいね。

みなさんのご経験ありましたら、ぜひお聞かせください。お待ちしています。

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