元国税調査官の大村大次郎氏が、日本経済最大のタブー「トヨタの闇」に斬り込む本シリーズ。前々回、前回に続く本記事では、トヨタと日本政府がいかに外国人投資家ばかりを優遇し、一般国民を搾取し続けてきたかを具体的な数字で検証していく。(メルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』より)
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:トヨタは外国人投資家のために存在する
トヨタの異常な「外国人優遇」とサラリーマンいじめが日本を衰退させた
前回、トヨタがこの2~30年の間、従業員の給料を渋り続けたということをご説明しました。それが日本経済全体に影響し、日本人の賃金が下がり続けた大きな要因になっていると。
トヨタは、この2~30年の間、業績は決して悪くなく史上最高収益を何度も更新しているのです。
それほど儲かっているのに、従業員の給料には反映させなかったわけですが、ではトヨタはいったい何お金を使っていたのかというと、株主配当です。
下は、2000年代以降のトヨタの株主配当総額の推移です。これを見ればわかるように、トヨタの配当総額は、ほぼ一貫して増加し続けています。
【トヨタの株主配当総額の推移】 平成14(2002)年 1015億円 平成15(2003)年 1258億円 平成16(2004)年 1512億円 平成17(2005)年 2128億円 平成18(2006)年 2921億円 平成19(2007)年 3847億円 平成20(2008)年 4432億円 平成21(2009)年 3136億円 平成22(2010)年 1411億円 平成23(2011)年 1568億円 平成24(2012)年 1577億円 平成25(2013)年 2850億円 平成26(2014)年 5230億円 平成27(2015)年 6313億円 平成28(2016)年 6455億円 平成29(2017)年 6276億円 平成30(2018)年 6063億円 令和 元(2019)年 6268億円 令和 2(2020)年 6108億円 令和 3(2021)年 6710億円 令和 4(2022)年 7182億円 令和 5(2023)年 8170億円 令和 6(2024)年 1兆118億円
リーマンショックの後に一時下がったもののすぐに持ち直し、2002年と2024年を比べれば、なんと10倍以上になっているのです。
従業員の給料は下がり続けているのに、株主にはこの大盤振る舞いなのです。このトヨタの経営姿勢こそ、現在の日本経済を象徴するものと言えます。
トヨタの株主の多くは外国人投資家
トヨタはこのように利益を社員にはまったく還元せず、株主にばかり還元しているわけですが、ではトヨタの株主とはいったいどういう人たちなのでしょうか?
トヨタの株主で一番多い勢力というのは、実は外国人なのです。
2024年3月決算の株主構成において、外国人(法人含む)の割合が25%に達しています。が、この25%というのは、外国人が直接保有している割合です。
トヨタの株式というのは、60%以上を日本の金融機関や企業が保有しています。そして日本の金融機関や企業の株も、外国人がたくさん保有しています。
つまり外国人が「間接的」にトヨタの株を保有している割合もかなり高いのです。
間接的な株式の保有割合というのは、複雑に入り組んでいるので、正確な数値は出しにくいのですが、東京証券取引所のプライム市場の取引額において、外国人が7割程度を占めていることから見ても、相当高いことが伺えます。
おそらくトヨタの株は、直接・間接を合わせると50%以上を外国人が保有していると見られます。つまり、トヨタが毎年せっせと吐き出している配当金の半分以上は外国に持っていかれているということです。
この現象もまた、現在の日本経済を象徴するものです。
日本企業は、従業員の給料さえまともに払わずに、利益をばかりを追い続け、その獲得した利益の大半を外国に送っているわけです。日本経済が衰退するのは当たり前なのです。
国も投資家優遇政策をすすめる
またこの2~30年、株主ばかりを最優先にしてきたのは、企業ばかりではありません。国も、株主を優遇する政策ばかりを敷いて聞きました。
その最たるものが、株主優遇税制です。
日本は、この2~30年の間、投資家の税金を大幅に下げ続けました。その結果、日本の株の配当所得の税金は、実は先進国でもっとも安くなっているのです。
以下が配当所得に対する先進国の税金です。
【配当所得に対する税金(国税)】 日本 15% アメリカ 0~20% イギリス 10~37.5% ドイツ 26.375% フランス 15.5~60.5%
アメリカ、イギリス、ドイツ、フランスと比べても、日本の税率15%というのは明らかに安いといえます。イギリスの半分以下であり、ドイツ、フランスよりもかなり安くなっています。
あの投資家優遇として名高いアメリカと比べても、日本の方がはるかに安いのです。
日本では、本来の所得税の最高税率は45%ですが、配当所得は分離課税となっているので、どんなに高額の配当があっても15%で済むのです。
分離課税というのは、他の収入と切り離して、配当所得だけを別個に計算することです。分離課税の最大の特徴は、いくら収入があっても税率が高くならないということです。
まじめに働くサラリーマンや自営業者を差別する不公平
配当所得は、「収入が高い人ほど税金が高くなる」という所得税のルールから除外されています。つまり、配当所得は何千万円、何億円収入があろうと、税率は15%なのです。
普通、個人の所得税というのは、さまざまな収入を合算し、その合計額に見合った税率を課せられるようになっています。
たとえば、サラリーマンや個人事業などの収入があった場合は、所得の合計額が4000万円を超えた場合は、最高税率の45%となっています。
しかし、配当所得の場合は、他の収入と合算されることはないのです。どんなに配当をもらっていてもわずか15%の税金で済むのです。
例外的に、1つの会社の株を個人で3%以上保有している大口株主の場合は、20.42%となっています。が、この大口株主の場合は、地方税5%が課せられませんので、実質的に他の株主と同様なのです。
また配当所得における「住民税」は、わずか5%です。
サラリーマンの場合、住民税は誰もが10%です(課税最低限に達しない人は除く)。
つまり額に汗して働いた人が10%の住民税を払わなければならないのに、株を持っているだけでもらえる配当所得には、その半分の5%しか課せられていない、ということです。
日本を貧困化させた投資家優遇政策
この投資家優遇税制は、昔からあったわけではありません。
以前、株主配当の税金は、他の所得と同様に累進課税制度になっており、多額の配当をもらっている人は、他の所得の人と同様に多額の税金を納めていました。
しかし、2003年の税制改正で、「どれほど多額の配当があっても所得税15%、住民税5%の税率だけでいい」ということになったのです。
しかも、株主優遇制度はそれだけにとどまりません。
2002年には、商法が改正され、企業は決算が赤字でも配当ができるようになりました。それまでは各年の利益から配当が払われるのがルールだったのですが、この改正により、その年は赤字でも、過去の利益を積み立てているような会社は、配当ができるようになったのです。
このため、会社は赤字でも毎年配当をすることができるようになったのです。
日本はまさに投資家天国のような国になったわけです。しかもその投資家というのは、大半が外国人なわけです。
日本人は、給料も低いのに毎日汗水たらして一生懸命働いて、会社に利益をもたらしてきましたが、その大半は外国に持っていかれているのです。日本の政府は、日本の大企業は、いったい何をしたいのか、ということになります。
(メルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』2024年7月1日号より一部抜粋。「知って損はない生活保護の基本ルール」「国税局幹部の不正報道は氷山の一角」など全文はご登録の上お楽しみください。初月無料です)
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