国民に選挙で選ばれた政治家を差し置いて、日本という国を実質的に支配する財務省のキャリア官僚たち。前回の記事ではその権力の源泉を詳しく解説しました。続きとなる今回は「彼らは一体どんな得があって、わざわざ日本を破壊しているのか?」がテーマ。元国税調査官で作家の大村大次郎さんによれば、財務省キャリア組にとって国家公務員という身分はあくまで仮の姿にすぎず、現役時代にわざわざ国民に奉仕する経済合理性がないことが大きな理由のようです。(メルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』より)
日本の悪政を主導する財務省キャリア組
このメルマガではこれまで、財務省のキャリア官僚が、いかに強大な国家権力を持っているかということをお話ししました。
日本の歳入と歳出は国会が決めることになっていますが、国会議員は数字に疎いので、事実上、財務省のキャリア官僚たちが、歳入、歳出の決定権を握っているのです。
【前回】元国税が暴露「財務省キャリア官僚」のヤバい正体。数百人の試験バカが国家権力で国民をイジメ抜く
しかも財務省キャリア官僚たちは、その強大な国家権力を使って、大企業や富裕層ばかりを優遇してきました。ダイヤモンドとトイレットペーパーに同じ税率という、世界最悪の雑な税金「消費税」を創設しました。
消費税というのは、収入のほとんどを消費してしまう低所得者ほど、税負担割合が高くなる「逆進税」です。
たとえば、収入のほとんどを消費してしまう年収200万円の人は、収入に対する消費税負担割合はほぼ10%になりますが、収入の半分を投資に回す年収3000万円の人は、収入に対する消費税の負担割合は5%で済むのです。
そういう低所得者いじめの消費税を増税する一方で、法人税や高額所得者の所得税は大幅に減税してきました。
日本の法人税や高額所得者の所得税は、名目税率は他の先進国と同等のレベルですが、たくさんの抜け穴が用意されているので、実質的にはタックスヘイブンのような安さになっているのです。
これで格差社会にならないはずがないのです。今の日本は、「まるでわざと格差社会をつくったかのような税制」になっているのです。
財務省に文字通り“殺される”私たち
また歳出の面においても、財務省は最悪のことをやってきました。今回の能登半島の地震では、被災者の方々は先進国ではあり得ないようなお粗末な避難所で、長期間、不自由な暮らしを余儀なくされています。
日本は地震大国であり、何度も何度も被害に遭っていながら、未だに被災者は体育館などに避難させられているのです。
日本は毎年、莫大な公共事業費を計上しているのだから、避難施設などは、日本中に立派なものを作れるはずなのです。
その一方で、四国と本州の間には、莫大な費用をかけて3本も橋がかけられているのです。
ご存じのように、現在の日本は世界最悪の少子高齢化社会を迎えているのですが、家庭関連への財政支出はOECDの中で最低レベルなのです。その一方で金持ちしか買えないエコカーの補助金には、何千億円も投じているのです。
まったく、どうやったら、こんな悪政ができるのか不思議に思えるほどです。
「天下り」という単語で誤魔化される国民への背任行為
それにしても、財務省のキャリア官僚たちは、なぜこんなにあからさまな悪政を行なってきたのでしょうか?これには、実は彼らの巨大な利権が関係しているのです。
財務省キャリア官僚というのは、官僚としての賃金自体はそれほど高いものではありません。むしろかなり安いと言えます。
初任給は月20万円ちょっとであり、一流企業と比べると相当に安いと言えます。しかも公務員の給料形態は「年功序列制度」になっているので、徐々にしか増えていきません。
出世して最高のポストである事務次官に就いても、年収は3000万円程度です。一流企業であれば、年収3000万円程度はざらにいるのです。生涯賃金で見れば、財務省キャリア官僚は、大企業の社員よりかなり安いといえるでしょう。
が、財務省キャリア官僚は、「安い給料で国家のために働く偉い人たち」では決してありません。むしろ、まったくその逆なのです。
日本の官僚制度では、官僚の待遇は表向きはそれほどよくはありません。国民の批判を浴びないためです。
しかし裏では、巨大な好待遇が用意されているのです。その最たるものが、「天下り」なのです。