宗教団体と医療現場の対立は、これまでもたびたび社会問題として議論されてきました。とくに輸血拒否や宗教上の信念を理由とした医療行為の制限は、「信教の自由」と「医療現場の安全判断」のどちらを優先すべきかという難しい問題を含んでいます。悪質商法のジャーナリストである多田文明さんは自身のメルマガ『詐欺・悪質商法ジャーナリスト・多田文明が見てきた、口外禁止の「騙し、騙されの世界」』で、エホバの証人の信者が病院側を提訴した複数の裁判について触れ、旧統一教会との共通点、さらに宗教団体による戦略的訴訟が社会に与える影響について考察しています。
エホバの証人の信者が起こした裁判の行方次第では、旧統一教会と同じ道を歩む恐れも
2026年4月29日に、エホバの証人の男性信者が「前立腺がんの手術を拒否された」として名古屋地裁に病院側を訴えたとの報道がありました。また、エホバの証人の女性信者も、白内障の手術を拒否されたとして、大津地裁に損害賠償を求めて提訴しています。
この手法は旧統一教会が反対する者たちに対して裁判を次々に起こして、自らの正当性を訴えようとした姿勢と同じようなものだと感じています。
旧統一教会の場合、裁判は次々に敗訴して、それらが教団への批判を封じ込め、相手の萎縮を狙ったスラップ訴訟であったことを世の中に示す結果となりました。
同じように、エホバの証人の信者らが起こしている裁判が負け続ければ、自らの立場を窮地に陥らせ、社会に相いれない教団としての姿をみせることになります。今後の裁判の行方次第では、エホバの証人は、旧統一教会と同じ道を歩む可能性があります。
カルト思想を持つ団体が行う組織的行動の特徴
エホバの証人の信者が起こした二つの裁判は、330万円の損害賠償で同額であり、男性信者は1月28日付、女性信者も1月23日付の提訴とされていますので、ほぼ同時期です。
つまり、信者個人が起こしたというよりも、教団側の意向によって裁判を起こしていることは明らかですので、旧統一教会と同じような戦略的裁判とみてよいと思います。
旧統一教会は、被害救済を行う弁護士やそれを擁護するジャーナリストらを訴えました。しかし国からの解散命令請求によって、教団がなくなる公算が高くなると、信者や関連団体が裁判を起こし始めます。教団本体が起こすのではなく、信者らの姿を借りて行う。これはカルト思想を持つ団体の特徴だとみてよいと思います。
何より医師たちは日々、誰かの命を救うため戦っています。輸血行為ができないことで、信者の命が失われる可能性や身体に重大な危害が及ぶかもしれないと思えば「手術はしない」という判断をするのは当然だと思います。
エホバの証人の信者らによる裁判は、日々、心身をすり減らしながら他者を救おうとしている医師たちに対して、自らの教義に基づいた主張でさらなる苦労を背負わせようとする姿にもみえています。
エホバの証人に限りませんが、日々、救いの手を差しのべる人たちに、裁判という形で自らの正当性を掲げて追いやろうとする、カルト思想を持つ団体の行動には、悔しさと許せない思いをもちます。今後の裁判の行方をしっかりとみていきたいと思います。(『詐欺・悪質商法ジャーナリスト・多田文明が見てきた、口外禁止の「騙し、騙されの世界」』2026年5月14日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)
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