中国を代表する総合家電メーカーとして知られるシャオミが、満を持して発表した新型BEV(電気自動車)のSU7。7月には発売3ヶ月でテスラModel 3の販売台数を抜きましたが、8月に行われた決算発表でシャオミの自動車部門が18億元の赤字であることが判明しました。その裏にはどのような事情があるのでしょうか。日刊で中国の自動車業界情報を配信するメルマガ『CHINA CASE』では今回、同社トップの発言を引きつつ膨大な最終赤字のからくりを考察しています。
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※本記事のタイトルはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:1台売れば赤字120万円、シャオミの決算発表、実は好調の側面
1台売れば赤字120万円、シャオミの決算発表、実は好調の側面
小米(シャオミ)は2024年8月21日、2024年4~6月の決算発表を行った。同期間中の売上は前年同期比32%増の888.9億元、最終利益は同20%増の62億元。
注目の自動車分野では2万7,307台を販売、売上は64億元、最終赤字は18億元となった。
この結果を受けて、シャオミカー初弾「SU7(21.59-29.99万元)」は1台販売ごとに6万元(約120万円)の赤字と揶揄されている。
しかし同社トップの雷軍氏はこれも含めて、「シャオミ史上最良の決算報告だ」とした。その真意は?
テスラModel 3を抜く
シャオミSU7は7月、1万3,120台を販売、販売開始3ヶ月でターゲットとしていた米テスラModel 3の中国における販売台数を抜き、20万元以上セダンBEVで首位を獲得した。
今回の決算発表でもその勢いが見て取れる。注目すべきは最終赤字の大きさではなく、粗利率だ。
粗利率は驚異の15%
シャオミカーの粗利率は15.4%に達しており、シャオミ全体の20%の水準は達していないが、同時期のテスラの13%を上回った。
粗利率は、売上とその販売した自動車そのものの製造コストを対象とした指標。
つまり、販売という市場環境及び定価(実際の販売時価格)と、企業としていかに管理して製造コストを引き下げることができるか、という点が重要になってくる。
この数値が高ければ高いほど、双方の要因をしっかりと達成している、と言える。
安すぎる、心配は杞憂
SU7の場合、市場の反応は予想以上であり、心配された低すぎる値付け(SU7のパフォーマンスであれば、中国現地でも30万元は超えると指摘されていた)も杞憂だったことになる。
その上で、製造コストもしっかりと抑えられていることを今回発表した決算の粗利率は示している。
自動車メーカーの出だしとしては、悪くない結果だ。これを雷氏は「最良」と呼んだのだろう。
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膨大な最終赤字のからくり
ではなぜ膨大な最終赤字になるかと言えば、販売・マーケティング、事務、工場の建設、研究開発費、充電インフラ整備などの投入が製造コストには含まれていない点が挙げられる。
雷氏は「自動車製造は非常に苦(ku)しい。しかし成功すれば必ずクール(ku)だ。シャオミカーはまだ投資段階であり、皆さんのご理解を得たい」と韻を踏んで説明した。
シャオミCFOの見解
同社の林世偉CFOも、「現段階で、当社としては利益を犠牲にして走り始めたばかりの自動車事業の規模拡大を急ぎたい」とした。
「現在、我々が注目しているのは発展状況であり、収益性ではない」とスタンスを明確にした。
「規模の拡大が将来的に収益をもたらすと信じている。まだ初弾を出したばかりであり、黒字転換までの道のりは遠い。引き続き投資を行っていく」とした。
粗利率は今後も伸長
シャオミは今後期を追うごとに粗利率は向上していく、としており、明るい見通しを持っている。
もともと目標だった販売台数を3万台ほど引き上げ10万台にし、さらに12万台を狙う、とした2024年。
問題はその生産能力であり、SU7は現時点でも納期は中国では異例の長さとなる5ヶ月ほど。簡単には引き上げることができないものの、シャオミが強調する規模拡大の鍵はここにあることは間違いない。
出典: https://finance.sina.com.cn/tech/roll/2024-08-23/doc-inckrpnf9481870.shtml
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