先の兵庫県知事選で、斎藤陣営のインターネット選挙戦略を取り仕切った株式会社merchu代表取締役の折田 楓氏が大炎上している。折田氏は自らの大戦果を自慢したかっただけのようだが、はからずも公職選挙法違反を“自白”することになってしまった。
斎藤元彦フィーバーの“仕掛け人”は広告会社の美人社長!?
瀕死の斎藤元彦氏にネットをフル活用した「兵庫県知事選挙に向けた広報戦略」を提案し、実際に能書き通りの成果を出してみせた敏腕PRコンサルタント。それが、株式会社merchu代表取締役の折田 楓氏だ。
間もなく33歳の誕生日を迎える彼女は今、「ナチス・ドイツの宣伝大臣、ヨーゼフ・ゲッベルスの再来か」とSNSで注目を集めている。
斎藤氏再選の原動力となったSNS対策チームは、「同級生ら400人規模のスタッフ(日経ビジネス)」「全国のデジタルボランティア400人(FNNプライムオンライン)」とされる。この大所帯を裏から指揮統率したキーパーソンが折田氏とみられているのだ。
折田氏が20日、自身のnoteで「兵庫県知事選挙における戦略的広報:『#さいとう元知事がんばれ』を『#さいとう元彦知事がんばれ』に」と題した記事を公開したのが大炎上のきっかけ。(※Web魚拓 取得日時: 2024年11月21日 01:24)
斎藤氏に「広報全般を任せていただくことになった」経緯から、キャッチコピー・メインビジュアル一新の狙い、ポスター・チラシなど制作物全般のディレクションにおける工夫、SNS運用実務のポイント、ハッシュタグの細かい文言調整まで、「なぜそのとき、その宣伝手法をとったのか?」について、折田氏自身が約6000字にわたって丁寧に“ネタバレ解説”していく内容だった。
言語化能力が極めて高い、優秀でロジカルな“SNS選挙運動のプロ”という印象だ。クリエイティブの理由をきちんと言葉で説明できるディレクターは信用される。周囲の人々もさぞかし“仕事”がしやすかったのではないか。一部を下記に引用しよう。
今回の知事選では、新たな広報戦略の策定、中でも、SNSなどのデジタルツールの戦略的な活用が必須でした。
兵庫県庁での複数の会議に広報PRの有識者として出席しているため、元々斎藤さんとは面識がありましたが、まさか本当に弊社オフィスにお越しくださるとは思っていなかったので、とても嬉しかったです。
SNS運用方針
SNSを活用して「斎藤知事を応援したい」「兵庫県をよくしたい」という想いをプラットフォーム化し、ムーブメントを起こす!!!
SNS運用フェーズ
10月1日~13日 フェーズ1:種まき 注力ポイント:立ち上げ・運用体制の整備
10月14日~31日 フェーズ2:育成 注力ポイント:コンテンツ強化(質)
11月1日~17日 フェーズ3:収穫 注力ポイント:コンテンツ強化(量)
当時、世の中は100%の反斎藤ムード。
一方、少数ではあるものの、Xなどで斎藤さんを応援する声がチラホラ出初めておりました。
プロフィール撮影やコピー・メインビジュアルの作成が完了したタイミングで、【公式】さいとう元彦応援アカウントを立ち上げ、ご本人のSNSアカウントとは別に、応援したい人が集えるハブとして運用を開始しました。
斎藤さんへの世の中の見方を変えていく上で重要だったのが、ハッシュタグ「#さいとう元知事がんばれ」です。
当時、様々なアカウントで多種多様なハッシュタグが使用されており、公式としてタグを一本化して発信することで、応援の流れに方向性を提供する必要があると考えました。また、タグが統一されてポスト数が増えていくことで、アルゴリズムにも有利に働くため、急速な支援の輪の広がりも期待できます。
「#さいとう元彦がんばれ」ではなく、あえて「知事」を入れることで、「さいとうさん=知事」という視覚的な印象づけを狙いました。さらに、「元彦」さんと「元知事」を掛け合わせて、「前知事がんばれ」ではなく「元知事がんばれ」としたのも、こだわったポイントです。
ナチュラルに「公職選挙法違反」の疑い。斎藤氏の当選取り消しも
斎藤氏の圧倒的な劣勢を、約一月半という短期間でひっくり返した折田氏の手腕は見事というほかない。明確な目標達成指標を設定し、試行錯誤と微調整を繰り返しながら着実にクリアしていく。いわゆる“仕事ができる”女性なのだろう。
ただ、ネットに精通した広報・宣伝のプロとしては、自身の“大戦果”をnoteで誇示し、承認欲求を満たすタイミングがいささか早すぎたかもしれない。
武勇伝を信じるなら、折田氏は知事選告示前の10月に“ネット工作”をスタートしていた可能性があり、これは公職選挙法違反にあたる。さらに、折田氏の会社が斎藤氏に提案し、実際に手がけたとされるインターネットを使った選挙運動に関しても、対価となる報酬が支払われていたとすれば公職選挙法違反になる。
過去の類似違反事例に照らせば、斎藤氏の当選取り消しもあり得る異常事態だ。選挙支援プラットフォーム関係者が指摘する。
「折田さんのnoteに関連して今、取沙汰されているのは、大まかに、公職選挙法違反の疑いと、“手弁当のボランティア選挙”というストーリーへの疑念です。斎藤元彦フィーバーに関して、あくまでボトムアップ型の勝手連によるムーブメントと受け止める人が多かったでしょう?選挙運動なんですから当然と言えば当然です。ところが実際には、斎藤陣営にはバリバリの宣伝業者が付いていて、そこの女性社長が指揮を獲っていたと。そうなると、“SNSの情報で目覚めた賢明な有権者たちが、傲慢なオールドメディアを打ち破った”という筋書きじたいが怪しくなってくるわけです。え?自分たちはこんな小娘に踊らされていたの?と。ちなみにウチの会社では選挙事務所のDXを推進する各種ツールを議員さんに提供させていただく一方で、直接的なSNSの運用代行などのご依頼は断腸の思いでお断りしています。法令遵守を考えると、受注したくてもできないというのが実状なんです。議員さんとしても、あまりにも口が軽い外部ブレーンに頼るのは考えものだと思いますよ」(選挙支援プラットフォーム関係者)
【22日 21時15分 追記】
関西テレビが速報で報じたところによると、斎藤知事は22日、SNSの選挙運動に関して「公職選挙法に抵触するようなことはしていない」との認識を示した。その一方、斎藤陣営の1人は取材に対し「広告会社に金銭の支払いはある」と答えた。
仮に報酬支払いをともなう「選挙運動」が行われていたとすれば、公職選挙法違反となる可能性が高い。そのため斎藤氏側は、ポスター制作など合法な範囲での支払いしかしていない、と主張するだろう。
今後は「何に対する金銭の支払いだったのか?」が大きな焦点になりそうだ。折田氏がnoteなどで発信し、その後、一部を削除した輝かしい“実績”の中には、斎藤氏の説明と矛盾する内容が含まれることも考えられる。(追記おわり)
【関連】斎藤知事、失職へ。女性社長「切り捨て」でも公選法違反から逃げ切れず…「折田楓氏は妄想系キラキラ広報女子」立証に壁
折田氏の証拠隠滅を許さない“SNSとネットの力”
X(旧Twitter)では、折田氏を“女ゲッベルス”と批判する声があがりはじめた。大胆で洗練された宣伝手法や脱法的姿勢が、令和の今にドイツ第三帝国のプロパガンダを想起させるのだろう。
その折田氏は現在、noteの記事内容を修正したり、会社のWebサイトから取引先一覧を削除したりと炎上対応に追われている。だが、折田氏が慌てて取り下げた記事や資料の原本は、ネット有志やジャーナリストによって、ほぼすべてが保全されている。こうなると、もう削除するのは絶対に不可能だ。
すでに、修正前と修正後の差分チェックから疑惑の論点を抽出、整理しようとする動きが始まっている。兵庫県警や選挙管理委員会への“電凸”(電話による通報)も行われているようだ。
どこから資金が出ているわけでもない、これらの動きもまた“SNSやネットの力”と言える。
50代のネットメディア関係者は言う。
「折田さんに対して、まるでゲッベルスみたいだ、という声があがるのは、いちネットユーザーとしてすごく納得がいきます。今回の兵庫県知事選、『SNSの勝利』といえば聞こえはよいですが、実際には、これまで家のポストに投函されていた怪文書の流通ルートがネットに置き換わっただけで、『嘘も百回言えば真実となる』式の昭和臭いデマがたくさん拡散されました。
あの知事選をみて、『SNSの勝利』を叫ぶ人は、ネットというものに対する感覚が、それこそ90年代~ゼロ年代初頭のインターネット黎明期で止まっているのではないでしょうか?人々が無邪気に集合知の可能性を信じ、ほとんど無償で情報を発信していた牧歌的な時代なんて、もう遠い過去でしょう。今のSNSは当時とは真逆で業者と広告だらけ。人々の善意なんて、よほど探してもまず見つからない状況です。そういう実状を理解していないのでは?と思ってしまいます。
さらに、怪しかったのは情報の中身だけではありません。斎藤陣営がYouTubeで動画を公開すると、またたく間につけられる多数のコメント。なぜあのユーザーたちは多くがデフォルトのアイコンだったのでしょうか?ヤフーニュースについていた大量のコメントや、Xでの斎藤陣営に有利な記事のリポストもそうです。単なる草の根から発生した善意のブームとは考えにくい、あまりにも“大規模すぎる感じ”“統率されすぎた感じ”が斎藤フィーバーには確かにありました。でも、実はその中心に『merchuの折田楓』さんがいたというなら、ああ、なるほどそういうことだったかと、やっと納得できる気がしますね」(ネットメディア関係者)
これまでの人生の大半をオンラインで過ごし、数々の“祭り”をリアルタイムで体験してきた古参のネット民が、斎藤フィーバーに抱いた素朴な違和感だ。むろん確たる証拠はない。だが今も「あれだけ沸いていた斎藤支持の声が、選挙後に突然、激減するのは通常の祭りでは考えられず、不思議というほかありません」(前同)と感じている。
一流のプロパガンディストは、その時代の最先端の道具を駆使する。もしゲッベルスが現代に生きる人物なら、レコードやラジオやテレビには目もくれず、SNSやYouTubeに目を輝かせただろう。「今どき紙のデア・アングリフなんて誰が読むんだ!ぜんぶバカ向けのショート動画にしろ」と指示を飛ばしたかもしれない。だが、いくらツールが新しくても中身まで正しい保証はない。
さて、“女ゲッベルス”こと株式会社merchuの折田楓氏は、この窮地をどう切り抜けてみせるのだろうか。しばしお手並み拝見といこう。
image by: note – 折田 楓