格安オートバイで名を挙げて商用車で中国上位に鎮座していた大運という会社が経営危機に陥っているようです。日刊で中国の自動車業界情報を配信するメルマガ『CHINA CASE』では、大運の今までの戦略と経営危機の原因について語っています。
山西の投機家の大博打、見事に失敗、中国新興「運航」が破綻か
格安オートバイで名を挙げ、トラック等商用車で一時期中国で上位に食い込んでいた大運(DAYUNAUTO)が経営危機に陥っている。関連会社が続々と破産再建を申請している。
DAYUNAUTOは近年、乗用車分野にも進出、「運航」というBEVブランドを展開していた。中国の新興がまた一つ消える形。
しかし、今までの新興の倒産よりは、売れていない分影響は軽微。一方で、中国の従来的な成金メーカーの末路という意味では興味深い。
オートバイで名を遂げ
山西省を拠点とするDAYUNAUTOは、遠勤山氏が創業した。遠氏はもとは穀物の転売で成功をおさめ、その後偶然にもオートバイの転売ビジネスにチャンスを見出し、これが成功。
数年後にはオートバイの転売で得た初期資金をもとに故郷の運城市でオートバイ販売店を開業した。
しかしオートバイに注目が集まり、競合が続々と参入してくる状況に危機感を抱いた遠氏は自動車分野への進出を決断。
周囲の反対を押し切り、21億元(約420億円)を投じてDAYUNAUTOを設立した。
トラックで成功収め
遠氏の先見の明は特筆すべきものがあり、2009年に大型トラック分野に正式参入した後、目覚ましい成果を挙げた。
2016年には同分野で年間約2.7万台を販売、前年比55.19%の成長を達成。業界内で安定的にトップ7を維持した。
また、中型トラックでは年間1.1万台の販売を記録し、前年比9.05%増となり、業界内で第6位の座を確保した。
2017年には新エネルギー分野に進出、商用車BEVなどに力を入れ始めた。
この記事の著者・CHINA CASEさんのメルマガ
「山西の倒爺(投機家)」
こうした経歴から遠氏は「山西の倒爺(投機家)」と呼ばれ、地元を中心に著名人になった。
しかしトラックも競争が激しくなり、重汽、東風、一汽、三一重工、徐工など国有系がNEV含め本腰を入れ始めた結果、DAYUNAUTOの存在感は2020年代以降急速に失われた。
博打、乗用車「運航」
「山西の倒爺」が打ち出した次の施策が、乗用車「運航」の展開だった。
2022年発表時に、一気に4モデルを発表、30万元前後及び50万元に達するラグジュアリーBEVを展開した。
そして今に至るまで、ラインナップはこの4車種にとどまっている。つまり大失敗した。
エンブレムはパクリ
エンブレムがアストンマーティン、あるいはアストンマーティン由来とも思われるヒュンダイ・ジェネシスと酷似していたことも、すでに発表当時から嫌な予感はしていた。
この価格帯の車で今売れ筋は、ファーウェイだったり、理想(Lixiang)だったりするが、ファーウェイは別格としても、Lixiangも愚直にREEVに取り組み、クルマの「家」化というコンセプトを堅持、今の地位がある。
山西の、全国的には無名の田舎メーカーがパクリを行いつつすぐに結果が出る価格帯ではない。
展開2年、一般の中国人でこのブランドを知っている人は皆無だろう。知っていたとしても、この価格を見て、どう思うかは想像に難くない。
トラック部門にも悪影響
案の定、発表からちょうど2年ほどの現在、無茶が祟った。販売不振の「運航」の失敗がトラック部門をより苦境に追いやり、グループ全体の経営を圧迫したようだ。
「山西の倒爺」の数度目の投機は完全な裏目に出て終焉しそうだ。
出典: https://auto.gasgoo.com/news/202411/11I70410074C108.shtml
この記事の著者・CHINA CASEさんのメルマガ
※CHINA CASE(https://www.chinacase.xyz)は株式会社NMSの商標です。
image by: Shutterstock.com