人気女優・有村架純さん(31)の出世作といえば、2013年に放送されたNHK朝の連続テレビ小説『あまちゃん』ですが、なんとその貴重な“使用済み台本”がオークションサイトに出品されていたことが判明。赤いペンで“有村”と記名されたその台本は、まごうことなき本物。なぜ外部に流出してしまったのでしょうか?最初こそ驚いたものの、流出の経緯を知るにつけ「台本の保管に苦労する現実も理解できる」と指摘するのは、芸能記者歴30年のベテランジャーナリスト・芋澤貞雄さんです。
マニア垂涎、有村架純の“使用済み台本”についた値段
有村架純が使用したドラマや映画の台本が、ネットオークションサイトに出品、転売されたようです。
所属事務所からは「思わぬ出来事に本人も胸を痛め、弊社としても困惑している状況」という公式コメントも発表されたぐらいですから、まったくの寝耳に水だったのでしょうね。
私のように、古書店街と呼ばれる神田神保町にある、芸能関係の書籍を扱う専門書店に定期的に足を運ぶ人間からすれば、有名無名限らず“使用済み台本”はよく見るものですから特段驚く類の話ではないのですが、今回は出品された写真を見てさすがに衝撃を受けました。
朝の連続テレビ小説『あまちゃん』の台本の下の部分に、赤いペンで“有村”と記名されていたからです。
これが本人になりすました“偽記名”なら話は別ですが、本人と事務所の心痛ぶりをうかがうかぎり、間違いなく本人の使用済み台本なのでしょうね。
2013年前期に放送された『あまちゃん』は、女優としての有村の存在を多くの視聴者に認識させた記念すべき作品と言えるでしょうが、『デイリー新潮』では、具体的な冊数はわかりませんが、他の台本とともに51万円で買った人が取材に答えていました。
結局その人は、有村の映画デビュー作『阪急電車 片道15分の奇跡』の台本を読み終えると、もう手元になくてもいいと思ったのにくわえ、買い取り額51万円を回収したくなったようで、さらにネットオークションに出品。これが世間の知るところとなり、大きな騒動になったとのことでした。
売れっ子ほど難しい“使用済み台本”の保管場所問題
何がどうして有村の使用済み台本が出回ったのか、詳細を知る前の私は“有村ってこういうことを平気で出来る女優なのか…”と、何だか残念な感情が湧いてきていました。
それと同時に、自分の脚本を“自分の本当の子供のように愛する”ことで知られる宮藤官九郎が、どれほど消沈しているのかも心配になりました。
小泉今日子の若い頃を演じた有村を絶賛していたクドカンが、易く台本を手放した有村に裏切られたと感じ…想像を超える怒りの感情を抱いていやしないかと…。クドカンの『あまちゃん』に対する強いこだわりを考えれば、有村を2度と自分が脚本を担当した作品にキャスティングしなくなるんだろうな…なんて考えていました。
ところが顛末を読むと、別に有村が台本を“捨てた”わけではなく、保管してもらうために実家に送っていたということがわかってきました。そして実家の母が、信頼していた人物に不用品の処理を依頼、その中に台本があったという話でした。
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こうして私の有村に対する残念な気持ちは、使用済み台本を不用品として処理されたお母様に対するそれに替わったわけですが――。ただ、娘がこれほどの売れっ子女優となると、次から次へと溜まる台本の保管場所に苦労する現実も理解できます。
使用済み台本には他に、2015年4月期の『ようこそ、わが家へ』もありました。原作は池井戸潤、脚本は黒岩勉というゴールデン・コンビで、黒岩は今年7月に公開された『キングダム 大将軍の帰還』を担当、映画は約80億円という興行収入を上げています。
もしこんな2人を怒らせるようなことにでもなれば、これからの女優としての立ち位置が変わってくるかもしれませんから、たかが台本されど台本と言えるのです。
台本を厳重に保管する役者、破り捨てる女優、それぞれの言い分とは?
今回の出来事で、私はあらためて“役者さんたちは仕事を終えた台本をどうしているのか”が非常に気になってきました。
多くは自宅や事務所で大切に保管、保存されているようで、中には倉庫まで借りて厳重に保管していらっしゃる役者さんもいらっしゃいました。
ただ、それとは逆にまったく執着をみせない方もいらっしゃって、例えば松重豊は、撮了とともに台本を破り捨てるとか、北川景子は“「私に過去はいらない!」とシュレッダーにガンガン放り込んでいる”と夫であるDAIGOが話をしたりしていました。
“保管しておくと、第三者に転売されたり悪用されたりする”からというのがその理由です。ただ最近は“紙の台本”から“データとして送られてくる台本”に変わりつつあるという話も聞こえてきます。
これなら保管場所に困ることもなく、芝居が終われば、データとして保存したり、一括消去できるというわけです。
さて今回、有村の流出した使用済み台本の中に『コーヒーが冷めないうちに』が見当たらなかったことに、私個人としては少しだけ安堵しています。
真夏のロケが中心だったこの撮影に、私は何度も足を運んだことがあったからです。
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日傘を差しながら、スタッフたちと打ち合わせをする有村が、自分の台本にどんな書き込みをしていたのか…今でも時々思い出すこの光景が、とても懐かしく浮かんできました。
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プロフィール:芋澤貞雄
1956年、北海道生まれ。米国でテレビ・映画のコーディネーター業を経て、女性週刊誌などで30年以上、芸能を中心に取材。代表的スクープは「直撃! 松田聖子、ニューヨークの恋人」「眞子妃、エジンバラで初めてのクリスマス」。現在も幅広く取材を続ける。https://twitter.com/ImozawaSadao