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現役医師が注意喚起。肥満やメタボリックシンドロームは何が「恐ろしい」のか?

糖尿病にも関連のある肥満やメタボリックシンドローム。健康診断でも必ず調べられるものですが、どのような弊害があるのでしょうか? メルマガ『糖尿病・ダイエットに!ドクター江部の糖質オフ!健康ライフ』著者の糖尿病専門医の江部康二先生は、糖尿病専門医としての観点から、その問題を紹介しています。

肥満と肥満症

糖尿病の患者さんはもちろんですが、アトピーの患者さんも時々採血をします。

抗アレルギー剤や漢方薬の服用でも、ごくまれには肝機能障害などの副作用があり得るからです。

それで気がついたことですが、結構異常データがでることがあります。

女性なら鉄欠乏性貧血が一番多いですし、高脂血症は男女を問わずかなり多いです。

中年以上ならいざ知らず、若い人でも中性脂肪が高値の人や、HDL-コレステロールが低値の人が存外ひっかかります。

それからアトピーの子供さんを診察している時に、お父さんやお母さん、おじいちゃんやおばあちゃんが一緒にくることもありますが、どうみてもお腹がポッチャリのメタボ腹の人がいます。

というわけで、ここからは糖尿病患者さんおよび糖尿病患者さんのご家族の一部の方におおいに役立つであろう「肥満」、「メタボリックシンドローム」のお話です。

◆肥満と肥満症

身体に過剰に脂肪が溜まると肥満です。

肥満の判定は、BMI<体重(kg)÷身長(m)2>という指標で行います。これは身体に占める脂肪の割合とよく一致し、22が男女とも病気が一番少ないとされる標準値です。

BMIが25以上で肥満と判定された人のうち、肥満に起因する健康障害、例えば糖尿病、高血圧、高脂血症、心臓病などがあるか、または内臓脂肪型肥満(腹部内臓脂肪量が100cm2以上)である場合を肥満症と診断し、治療が必要となります。

◆内臓脂肪型肥満とメタボリックシンドローム

皮下脂肪は皮膚の下にたまった脂肪のことです。

一方、内臓脂肪は、お腹の中の腸の周りなどにつく脂肪です。

両者併せたものが体脂肪です。

内臓脂肪型肥満とは、「内臓脂肪」がたまった肥満のことです。

お腹のCTを撮影することによりその存在が確認できます。

内臓脂肪型肥満の人は、皮下脂肪型肥満の人に比べ、糖尿病、高血圧、高脂血症などの病気が多く認められます。

皮下脂肪のたくさん付いた人よりも、内臓脂肪がたくさん付いている人のほうが危険なのです。

現在病気がなくても、内臓脂肪がたまった状態で放置すると、将来生活習慣病になりやすいのです。

男性で腹囲85cm以上、女性で腹囲90cm以上の人は、内臓脂肪型肥満の可能性が高いとされています。

最近、糖尿病、高血圧、高指血症などの病気が増加しています。

2016年厚生労働省の「国民健康・栄養調査」では、糖尿病が強く疑われる者(糖尿病有病者)、糖尿病の可能性を否定できない者(糖尿病予備群)はいずれも約1,000万人(合わせて約2,000万人)でした。

1990年が560万人です。

1976年が52.37万人なので、40年間で糖尿病有病者は、約20倍近く増えています。

その背景には、内臓脂肪の蓄積があると考えられています。

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内臓脂肪の蓄積がある人に「メタボリックシンドローム」が発症してきます。

メタボリックシンドロームとは、内臓肥満に高血圧・高血糖・脂質代謝異常が組み合わさることにより、心臓病や脳卒中などになりやすい病態です。

内臓脂肪は年をとると、より蓄積しやすくなることが知られています。

男性の肥満者では、年齢と共に内臓脂肪の割合が増加していきます。

特に成人後体重が増加した人は、内臓脂肪が増えている場合が多く認められます。

女性の場合は、妊娠時に体脂肪が増加しますが、皮下脂肪も増えます。

また内臓脂肪は閉経期を迎えるまでは徐々にしか増加しませんが、閉経後は2倍以上の速さで増加します。

内臓脂肪は、近年ホルモン産生臓器と位置づけられています。

即ち血圧を上昇させるホルモン、インスリン抵抗性を引き起こすホルモン、狭心症や脳梗塞を発症しやすくするホルモンなどを分泌していることが解ってきたのです。

皮下脂肪はこれらの身体に都合の悪いホルモンはほとんど分泌していません。

単純に言えば、皮下脂肪は食料の備蓄として役に立っているけれど、内臓脂肪は基本的に悪玉と言えます。

◆糖質制限食で内臓脂肪を減らす

内臓脂肪の蓄積を減らす最も有効な方法は糖質制限食の実践です。

糖質を摂取すると血糖値が上昇します。

そうするとインスリンが分泌されて、血糖を筋肉に取り込ませて血糖値を下げます。

しかし余った血糖は、インスリンにより中性脂肪に変えられて脂肪組織に蓄積していきます。

インスリンが肥満ホルモンたる所以です。

糖質制限食なら、血糖値の上昇は最小限で済むので、インスリンの分泌も最小限で済みます。

肥満ホルモンであるインスリンの分泌が最小限で済むので、糖質制限食実践により、内臓脂肪蓄積が減少していくわけです。

勿論、糖質制限食実践で、肥満、肥満症、メタボリックシンドロームは改善していきます。

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image by: Shutterstock.com

江部康二この著者の記事一覧

(財)高雄病院および(社)日本糖質制限医療推進協会 理事長。内科医。漢方医。京都大学医学部卒、同大胸部疾患研究所等を経て、1978年より医局長として高雄病院勤務。2000年理事長就任。高雄病院での豊富な症例をもとに、糖尿病治療、メタボ対策としての糖質制限食療法の体系を確立。自らも二型糖尿病であるために実践し、薬に頼らない進行防止、合併症予防に成功している。

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