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学校“公認”で加害者たちが中3女子いじめ被害者を「吊し上げる会」の異常事態。録音音声で判明した校長と担任の愚行

いじめ被害を学校側に訴えるも、教育現場の不適切かつ誠意を欠いた対応でさらに状況が悪化するというケースが跡を絶ちません。そのような事態から我が子を守る有効な方法はないのでしょうか。今回のメルマガ『伝説の探偵』では、現役探偵で「いじめSOS 特定非営利活動法人ユース・ガーディアン」の代表も務める阿部泰尚(あべ・ひろたか)さんが、「いじめの重大事態ガイドライン」の有効な活用法を解説。さらに文科省ホームページに掲載されている「重大いじめ申し立ての様式」を紹介しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:重大事態いじめは申請する_方法がある

「取り下げて欲しい」と電話で懇願。絶対にやってはならない愚行を働いた中学校長が被害者の“重大事態いじめ申請”で見せた小悪党的な行動

中学3年生の女子生徒の保護者からいじめ対応について相談があった。

相談によると、部活での無視や嫌がらせを1年以上受けていて、学校のアンケートで詳細を書いたところ、聞き取り調査が行われ、目撃証言も多かったことから、いじめが認定されたという。

学校では、加害生徒に指導をするということであったが、特に別室指導などは無かったという。

そうした中、学校は被害女子生徒1人と加害女子生徒3人に話し合いをさせたという。しかし、これは話し合いではなく、加害者による学校公認の被害者の吊し上げの会となり、その後、被害女性生徒は学校に通うことができなくなってしまった。

この会に立ち会ったのは部活の顧問であり、被害女性生徒をこの会に参加するように促したのは担任であったという。

その後、被害女子生徒の両親が、この問題を校長に直談判したところ、町の教育委員会も含めて教員らにも調べが行われ、吊し上げがあったということがわかったという。

今回はその謝罪を含めた話し合いが行われる予定だが、どうしたら良いかというものであった。

全国的に起きている「被害者の吊し上げ」という愚行

被害者と加害者を安易に話し合い名目で一室に入れ、結果「吊し上げの会」になるという事例は全国的に起きており、絶対にやってはならない愚行の1つである。

事実私はこうした二次被害の相談を何度も受けており、相談自体がこうした二次被害を受けた後だから、どうすることもできず、悔しい思いになる。

教員の質は年々落ちているとも聞くが、いじめ被害の軽視や不適切指導は常に問題となっているところだが、教員らについても、どう考えても人一人の仕事量を超えた就業環境の改善も急務だろうが、それら対策が進んでいるようにはどうにも思えないところだ。

「話し合いで互いに理解可能」という極めて安易な発想

保護者は校長との話し合いや担任との話し合いの録音を持っていた。その内容によると、

「話し合いは互いのわだかまりをすべて吐き出せば、互いに理解ができる」という極めて安易な発想であり、いじめと喧嘩、いざこざが一緒くたになっていた。

吊るしあげについても「自由に発言させた」結果という、指導も監督もないことを示す発言をしており、それがいかにダメなのかということの理由もわかっておらず、ただ単に、両親が怒っていることをなだめ、結果的に本人が不登校になってしまっていることへの侘びのように聞こえた。

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「いじめを放置しても問題となるのはごく僅か」という現実

できない人が突然できるようになることはない。努力を続け、経験を積み、人は成長していくものである。被害者への寄り添いがいかなるものか、最低限の配慮もできず、二次被害を発生させ、問題を起こしてもその終息にしか力を入れない。

なぜ?という洞察が無く、反省もないから何度も何度も同じような問題を繰り返すことになるわけだ。他の業界のように問題が大きく膨らまないのは、単に学生には小学校なら6年、中学校なら3年、高校なら3年と期間があり、卒業してしまえば終わりという感覚がある。一方で、馬鹿と争うほど無駄な時間がないと合理的な判断をする者、争うことができず泣き寝入る以外はない人もおり、問題を放置しても事実問題となるケースはごく僅かという現実もあろう。

「いじめの重大事態ガイドライン」を読めば一目瞭然

こうした場合、特に公立校であれば、教育委員会に対応を願い出るという手段を取ることができる。本件ケースでは心療内科で診断を受ければ、被害女子生徒の心理的な状況から適応障害だと診断される可能性は濃厚であろうし、すでに欠席日数は30日を超えていることから、いじめ防止対策推進法によればいじめによる不登校となり、重大事態いじめの要件を満たす。

「重大事態いじめ申し立ての様式はない」という大ウソ

法第28条第1項において、学校の設置者及び学校は、「いじめにより当該学校に在籍する児童等の生命、心身又は財産に重大な被害が生じた疑いがあると認めるとき」(第1号)又は「いじめにより当該学校に在籍する児童等が相当の期間学校を欠席することを余儀なくされている疑いがあると認めるとき」(第2号)は、「当該学校の設置者又はその設置する学校の下に組織を設け、質問票の使用その他の適切な方法により当該重大事態に係る事実関係を明確にするための調査を行うものとする」とされている。

つまり、現状ではいじめとしては重大事態となり、その対応は文科省が設置した「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン」の通りの対応が求められるところだ。確認する限り、本来必要な首長への報告もされておらず、町の教育委員会も事態を把握していながら報告に至っていない。

勉強不足の団体の中には、「重大事態いじめの申し立て」の様式はないというが、実際はある。

文科省ホームページには、「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン」があり、その別紙に申請様式がある。

口頭で言っても「言った言わない」で有耶無耶にされることも常だから、最低限、形に残す必要があろう。


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「重大事態いじめの申請」に焦った校長からの懇願の電話

重大事態いじめの申請をしたところ、校長が取り下げて欲しいと懇願する電話を入れてきたそうだ。本来であれば教育委員会を通じて首長報告しなければならないところ、それをせずに、申請をされたらの動きは何よりも早いという小悪党的行動にあきれるところであるが、これで腹は決まった。

今現在、被害保護者は被害女子生徒の心理的ケアを進めつつ、転校先を探している。確かに本来であれば、被害者が転校することではない。しかし、これは、無関係の誰かが違うだろと批判するようなことではなく、変わることがないであろう地域と学校に裏切り続けられたことで、環境を自ら変える選択をしたのである。2月現在はここまでであるが、サポートを続けていきたいと思う。

「原因不明の子どもの自死」が示唆していること

先日子どもの自死件数が最多というニュースがありました。学校を原因とするものがもっとも多いと出るや否や、いや「問題なのは家庭の方が多い」というニュースや書き込みが多数投稿されました。私はとても残念に思います。何かが起きると誰のせい、どっちが悪い、と犯人探しが始まります。こうしたことが対立を生んだり、その裏側で何らかの利権が絡んでいたりするものです。

そして、よくデータをみている人ならわかると思いますが、実際多いのは、調査が行われていないための「原因不明」なのです。つまり、最も多いのは原因不明で、それは自治体や学校の設置者の他、関係先がまともに向き合わず調査をしないことなのです。

こども家庭庁が調査を始めるようですが、調査をするという着眼は良いとして、およそ様々な団体に声をかけたり、教育委員会に協力を仰ぐのでしょう。しかし、団体などはその活動によって相談者の方向性があります。例えば、私が代表理事を務めるNPO法人ユース・ガーディアンには酷い隠ぺいや重篤ないじめ被害に関する相談が多いという特徴があります。つまり被害側の意見が多く入ってくることになります。一方、予防活動をしている団体さんは学校からの依頼が多く、学校が混乱している様子をよく知っていることでしょう。

つまり、調査をしてその結果を様々な対策に活かそうというとき、どういう調査をするか、何を調査するかなどでその方向性にバイアス(偏向)がないようにしないと、誤った方向に行ってしまうのです。

正しい良き道に向かうよう祈ります。

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image by: Shutterstock.com

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社会問題を探偵調査を活用して実態解明し、解決する活動を毎月報告。社会問題についての基本的知識やあまり公開されていないデータも公開する。2015まぐまぐ大賞受賞「ギリギリ探偵白書」を発行するT.I.U.総合探偵社代表の阿部泰尚が、いじめ、虐待、非行、違法ビジネス、詐欺、パワハラなどの隠蔽を暴き、実態をレポートする。また、実際に行った解決法やここだけの話をコッソリ公開。
まぐまぐよりメルマガ(有料)を発行するにあたり、その1部を本誌でレポートする社会貢献活動に利用する社会貢献型メルマガ。

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