昨年来急増している、警察をかたるタイプの詐欺手口。被害者の年齢層も30代~70代と幅広く、いつ誰が狙われてもおかしくない状況が続いていると言っても過言ではありません。かような手法に騙されないためには、どのような自衛策を取るべきなのでしょうか。今回のメルマガ『詐欺・悪質商法ジャーナリスト・多田文明が見てきた、口外禁止の「騙し、騙されの世界」』では著者の多田さんが、犯罪組織の巧妙な遣り口と被害に遭わないためのカギを紹介しています。
※本記事のタイトルはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:警察をかたる詐欺はこれだけ巧妙 だからみんなだまされる 詐欺は割り算で考えている 反撃訴訟の狼煙があがる
これだけ巧妙。多くの人が騙される警察をかたる詐欺の手口
テレビ番組に出演している50代女性が、昨年11月に600万のお金をだましとられていますが、今被害が多発している、警察をかたる詐欺によるものです。
きっかけは「料金未納のために電話が止まる」という自動音声ガイダンスの電話でした。料金確認のためと称して、受話器のボタンを押させられたのでしょう。
NTTの関連会社を名乗る男がオペレーターとして出てきます。そして「あなたの電話番号を使って、迷惑メールの被害が出ている」「あなたは犯罪に巻き込まれている恐れがある」と言われます。
さらに「大阪府警捜査第2課」を名乗る人物が電話口に出てきます。この時、電話は転送をされて話すようになっています。
ここからが、巧妙な点です。ネットを通じて、大阪府警のHPの電話番号「06-××××-××××」をみるようにいいます。ここで相手はいったん電話を切り、この番号「06-××××-××××」を表示させて再び電話をかけてくるのです。
電話料金未納の話は怪しいと思っていても、大阪府警の電話番号でかかってくるのですから、当の本人は犯罪に巻き込まれていると信じこんでしまうわけです。
詐欺だと見抜く方法として、番号の先頭部分に「+1」がつく、国際電話番号でかかってきている点がありますが、犯罪行為に加担しているなどと脅されて、冷静さを失わされていますので、気づくのは難しいかもしれません。
知っておいてほしいことは「電話番号は偽装されてかかってくる」ことがあるということです。
あるセキュリティ会社に取材したところでは、アメリカやフランスでは、すでに発信番号が途中で改ざんされて、電話がかけられることがないように、国として偽装電話番号対策がなされています。しかし、日本ではそれがなされていないので、この手の犯罪が横行してしまっているわけです。
「あなたは容疑者」と畳み掛け。煽られる恐怖心
50代女性に対して、大阪府警をかたる男は「大規模な詐欺グループが摘発されて、あなたの通帳やキャッシュカードも発見された」「あなたは事件の容疑者になっている」と畳みかけてきます。
この後、LINEに誘導されて、ビデオ通話や画像を通じて、逮捕状や警察手帳をみせられます。被害女性のもとには「守秘義務誓約書」も送られてきています。これを見せることで、周りに相談できないように、詐欺グループは仕向けます。
そして逮捕されないための方法として「保釈保証金を払う必要がある」と言ってきます。この時「保証金なので、お金を払っても戻ってくる」ともいいます。こうした言葉で相手を安心させようとします。
50代女性が数日間、お金を払わずにいると、今後は、検察官をかたる女性から電話があります。
「今日、身柄を拘束するための手続きをする」「逮捕されたくなければ、〇〇時までにお金を用意するように」と伝えてきます。恐怖心を抱かせられて、女性はお金を払ってしまいます。
また女性をATMに向かわせる時に、スマホを通話状態にさせて、バックに入れさせていたといいますが、電話を切らせないことで、周りで(警察による)何か異変がないかも確認していると思われます。
詐欺に遭わないため知っておきたい「割り算の手口」
警察をかたる詐欺を見てわかるように、犯罪グループは割り算の発想で、相手をだまします。詐欺のストーリーを幾つかのパートにわけて、その部分を各詐欺師が担当して、被害者を罠にはめようとします。
最初は、自動音声ガイダンスの電話を通じて「電話関連会社の人間」が出てきます。ここでは個人情報を収集して、詐欺行為をするためのお膳立てをします。
次に、詐欺の話を信じさせるための大阪府警になりきった人物が出て、警察に出頭するように話します。この時、北海道の方には、愛知県警をかたり、電話口の相手が絶対に行けないような警察署を口にします。
三つ目が、お金を払わせるための催促役の検察官が出てきて、振り込みの具体的な指示をします。
オレオレ詐欺もそうですが、息子役、上司役、弁護士役などを登場させて、だましとろうとしますが、詐欺グループの話を聞きくなかでよく出てくる言葉が「一線、二線、三線」という役割分担です。
一線では市役所や、銀行職員になりきって、相手の情報を収集することに専念します。
そこで相手をだませる可能性が高いと思えば、二線を担当する人物が、警察などをかたり「あなたのクレジットカードが不正に使われている」「犯罪グループを逮捕したら、あなたのキャッシュカードが出てきた」と話します。
三線では、弁護士が出てきてお金を家に準備しておくようにいって、「受け子」をその人の自宅に向かわせるなど、お金をだまし取る算段に入ります。
詐欺グループのメンバーらは、自分が担当するパートでは何度も同じ話をしているために、プロの領域に達しています。それゆえに、人々は「疑い」の気持ちを持たせられないままに、だまされてしまうわけです。
こうした詐欺の手口にひっかからないためには、役割分担(割り算)の手口を知り、いかに早く電話を切って誰かに相談するかが、被害に遭わないためのカギとなります――(この記事はメルマガ『詐欺・悪質商法ジャーナリスト・多田文明が見てきた、口外禁止の「騙し、騙されの世界」』2024年12月28日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はこの機会に初月無料のお試し購読をご登録後、2024年12月分のバックナンバーをお求めの上お楽しみください)
この記事の著者・多田文明さんのメルマガ
最新刊
『信じる者は、ダマされる。
元統一教会信者だから書けた「マインドコントロール」の手口』
好評発売中!
image by: Shutterstock.com