トランプ大統領が「グリーンランドを所有したい」と熱望し、そのためには「武力行使も辞さない」と語ったという報道がありました。なぜアメリカはそんなにもグリーンランドが欲しいのか、今回のメルマガ『在米14年&海外販路コンサルタント・大澤裕の『なぜか日本で報道されない海外の怖い報道』ポイント解説』では著者の大澤さんが、その理由について詳しく解説しています。
トランプが米国による所有の必要性に言及。なぜ今「グリーンランド」なのか?
トランプ大統領、グリーンランドの米国による所有の必要性を述べています。武力行使も辞さないと言ったという報道もあります。
バンス副大統領も、「デンマークはロシア、中国からの攻撃的な侵入からグリーンランドの人々を守るための資源を投入していない」と主張しました。
唐突な印象をもたれた方も多いと思います。今日はその解説をしましょう。
グリーンランドが地政学的に重要な理由は三つあります。
1. 米国とロシアの中間に位置し米国ミサイル基地もある。
2. 温暖化で重要性がます北極海航路に位置する。
3. 石油やレアアースを豊富に埋蔵する。
グリーンランドはデンマーク王国に属する自治区です。
しかし歴史的に独立の機運がありました。2008年には自治拡大を問う住民投票が行われました。
結果、賛成75%で承認されました。公用語をグリーンランド語として、警察と司法、沿岸警備などの権限がデンマーク政府から自治政府に移譲されることとなりました。
当時の自治政府首相は「遠くない将来に完全独立が実現することを望む」と語りました。
しかし独立するには独立できるだけのお金が必要です。
この記事の著者・大澤裕さんのメルマガ
グリーンランドには石油、レアアースなどの豊富な鉱物資源があります。しかしそれは開発されていません。目を付けたのが中国です。
グリーンランドのレアアース開発に協力するというのです。
米国大手情報サービス会社ブルームバーグは、「グリーンランドで独立を目指す動き-中国資本活用計画が背景」と2013年に報じています。
グリーンランド側も乗り気で、中国の労働力と資本を活用する計画でした。しかしデンマークが反対しました。それでさらにグリーンランドの独立運動が盛り上がりました。
ロシアも加わります。
2017年、習近平主席はプーチン大統領との会談の中で「一帯一路」を北極圏まで繋げる構想を提示しました。そして両国は北極海航路開発における協力推進に合意しました。
対抗してトランプ大統領は2019年8月にグリーンランドの購入について「戦略的に興味深い」と発言しました。
しかしデンマーク首相のメッテ・フレデリクセンは「グリーンランドは売り物ではない」として拒否しました。
バイデン政権下で米国は引きます。
2021年5月国務長官アントニー・ブリンケンは、アメリカがグリーンランドを購入するつもりがないことを明言しました。
しかし再選されたトランプ氏はグリーンランドの米国所有についてまた発言を始めました。
米国はグリーンランドにミサイル防衛基地を維持しています。この基地は、トランプ氏が力をいれているミサイル防衛システム「ゴールデンドーム」の一部となる可能性もあります。
全米の防衛の観点からもグリーンランドは需要なのです。
今年2025年の1月にはグリーンランドのムテ・エーエデ自治政府首相がデンマークからの独立を目指す方針を表明しています。
簡単に言うと、グリーンランドは中国・ロシア・米国にとっての地政学的に重要で、かつ最近はその重要性がさらに増しているのです。
その状況でグリーンランド自治政府がデンマークからの独立を目指すと表明しているのです。
で、大きな綱引きがあるのです。
確かにトランプ大統領の発言はとんでもないです。住民もいる状況で「領土を買う」のは考えられません。まして武力で侵攻するなんてとんでもない事です。
しかし、このような大きな枠組みを理解すると、トランプ大統領が今グリーンランドについての発言を繰り返すのも分かるでしょう。
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