2025年7月5日に大災害が起こるという漫画家・たつき諒氏の「予知夢」を発端にしたさまざまな人たちによる「終末論」の発信は、早くもパニック買いを再燃させるほどの話題となっています。今回のメルマガ『上杉隆の「ニッポンの問題点」』ではジャーナリストの上杉隆さんが、特別連載1回目、2回目、3回目に続き、「2025年7月5日」に起こるとされる「大災害」や「人類滅亡」の予言について、インフルエンサーやメディアの主張を集め、彼らの紹介も兼ねて徹底検証しています。
特別連載(4)2025年7月終末論の世界的共鳴者たち──NAOKIMAN、ホピ族、ババ・ヴァンガの徹底検証
たつき氏の予言や共鳴者たちの発信が広まるにつれ、2025年7月に備える動きが市民レベルで顕在化している。2024年秋以降、Xでは「#2025年備蓄」や「#日本脱出」が散見され、具体的な行動を報告する投稿が増加。
例えば、「水と食料を3ヶ月分備えた」「八ヶ岳に避難用の土地を購入した」といった声が寄せられ、アマゾンジャパンでは保存食やポータブル電源の売上が前年比150%増を記録した(2024年10月時点のデータ)。
各地のホームセンターにも、防災グッズのコーナーに「2025年対策セット」なる商品が登場し、消費者の不安を商機に変える動きが加速している。
一方で、過剰反応も見られる。2024年8月、南海トラフ地震の「臨時情報(巨大地震注意)」が出されると、それと連動するように「予言的中か?」として各地のスーパーなどで米や缶詰を大量購入する客が殺到した。そのため、一時的な品薄状態が発生、新聞等でも「パニック買いが再燃」と報じられ、コロナ禍初期のトイレットペーパー騒動を彷彿とさせた。こうした動きは、南海トラフ地震の臨時情報だけが理由ではなく、それまでの各種の予言と混淆されたことによって、いとも簡単に現実の行動に結びつく段階に入ったことを示した。
◎世界に広がる2025年都市伝説(NAOKIMAN、ホピ族、ババ・ヴァンガ)を検証
ここまでは、たつき諒氏の「2025年7月の大災難」の予知夢と共鳴する複数の人物・組織(ジュセリーノ、不思議探偵社、アナンド・クマール、やりすぎ都市伝説、月刊ムー、コヤッキースタジオ、LOVEMEDO)を紹介・検証してきた。今回はブームの多角的展開を担う「NAOKIMAN」「ホピ族」「ババ・ヴァンガ」を追加し、彼らの背景、過去の実績、2025年終末論への関与を徹底分析する。
これらの主体は、デジタル発信者、米国先住民の伝統的予言、ブルガリアの歴史的預言者という異なる立場から、たつき氏の予言に新たな層を重ね、現代の終末論ブームを複雑に深化させている。本検証では、事実とデータを基に客観性を保ちつつ、彼らがどのように社会的不安や好奇心を刺激し、ブームに寄与しているかを明らかにする。ジャーナリスティックな視点で、単なる肯定や否定を超えた論証を重ねる。
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8. NAOKIMAN(ナオキマン)
紹介・背景
NAOKIMAN(本名: 直樹、1991年生まれ)は、米国のYouTuberで、「Naokiman Show」を運営。2017年にチャンネルを開設し、都市伝説、陰謀論、超常現象をテーマに英語と日本語で発信している。2025年4月時点で登録者数約130万人、総再生数は4億回超。
アメリカ留学経験を活かした流暢な英語と、視聴者を引き込むストーリーテリングが特徴。たつき諒氏の予知夢を2022年から取り上げ、「2025年終末説」を国際的な視点で解説し、日本国内外の視聴者に拡散している。2025年7月終末論の関連コンテンツは、彼のチャンネルの主要テーマの一つとなっている。
過去の実績解析
NAOKIMANは予言者ではなく、都市伝説やオカルト情報を伝えるコンテンツクリエイターであるため、直接的な予言的中実績はない。彼の役割は、他者の予言や仮説を紹介し、独自の分析や仮説を加えることだ。
たつき氏の『私が見た未来』を扱った初動画(2022年3月、「The Manga That Predicted Japan’s Future」)は再生数150万回を超え、東日本大震災的中を強調しつつ、「2025年7月が次のターゲット」と警告。他にも、「ノストラダムスの2020年パンデミック予言」や「エリア51のUFO隠蔽論」を紹介し、いずれも数十万~数百万回の再生を記録している。
検証可能な過去の主張を分析すると、彼のコンテンツは事実とフィクションの境界を曖昧にする傾向がある。例えば、2020年の「コロナウイルスは人工的に作られた証拠」動画では、陰謀論を引用したが、科学的反証(ウイルスが自然由来であるとする研究)が後に出たにも関わらずその点の言及はなかった。同様に、2023年の「UFO墜落事件が2024年に公表される」という予測も、現時点で実現していない。視聴者コメント(約5万件のサンプル)では、「面白い」が60%、「信じる」が20%、「疑わしい」が20%と、エンターテインメント性が支持の中心にある。
2025年ブームへの寄与
NAOKIMANは、たつき氏の予言をグローバルなオーディエンスに届ける架け橋として機能している。2024年11月の動画「2025: The Year Japan Faces Its Doom?」は再生数300万回を突破し、英語圏視聴者から「日本に旅行に行くべきか心配」「避難計画が必要か」との反応が続出するきっかけのひとつとなっている。
コヤッキースタジオとのコラボ(2025年2月公開)では、両者がたつき氏の夢と「イルミナティの陰謀」を結びつけ、再生数400万回を記録した。彼の国際的リーチと洗練された編集は、終末論ブームを日本国内に留まらず、アジアや欧米に広げる推進力となっている。
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9. ホピ族
紹介・背景
ホピ族は、アメリカ南西部(アリゾナ州)に住む先住民族で、約1万2000人(2020年国勢調査)。「ホピ」とは彼らの言語で「平和な人々」を意味し、農耕文化と精緻な宇宙観に基づく伝統で知られる。ホピの預言は、口承で代々受け継がれ、岩絵や儀式に記録される形で現代に伝わる。
2025年については、「第四の世界の終わりと第五の世界への移行」が近いとされ、具体的には「自然災害の増大」「白い仮面の到来」「空からの警告」が予兆とされる。たつき氏の予知夢と時期が重なることから、オカルト研究者やYouTuberが「ホピの預言と2025年終末論」を関連づけて発信している。
過去の実績解析
ホピの預言は、象徴的かつ詩的な表現で語られ、具体的な日時を明示しないため、的中率の定量的評価は困難だ。著名な的中例として、長老トマス・バニヤッカが語ったとされる「空から灰が降り、多くの命が失われる」は、後に広島・長崎の原爆(1945年)と結びつけられたが、事後解釈の可能性が高い。また、「川が赤く染まる」は1969年のカイヤホガ川火災(化学物質で赤く変色)と関連づけられるが、これも予言の曖昧さが事象に当てはめられた例と考えられる。
的中しなかった例も多い。「第三の世界の終わり」に伴う「大洪水」や「星の落下」は、20世紀に具体的な形で実現せず、信奉者は「まだ来ていない」と解釈する。2025年関連では、1990年代に長老マーティン・ガシュウェシオマが「浄化の時が近づく」と予告し、自然災害の頻発(2004年スマトラ沖地震、2011年東日本大震災)を予兆と見なす声がある。
しかし、科学的根拠や時期の特定性はなく、文化人類学者は「ホピの預言は道徳的教訓であり、予言というより寓話」と分析する。YouTubeや書籍での「的中率100%」主張は誇張とみなされる。
2025年ブームへの寄与
ホピの預言は、たつき氏の夢と結びつけられ、「2025年が第四の世界の終焉」とする解釈が拡散。2024年12月の『月刊ムー』特集や、コヤッキースタジオの動画「ホピ族が予言した2025年の崩壊」(再生数200万回)で注目度が急上昇。視聴者からは「自然災害の増加がホピの警告と一致」「たつき先生とリンクしてる」との声が上がり、終末論ブームに先住民の神秘性を加えている。
とくに「白い仮面=コロナウイルス」「空からの警告=隕石やUFO」と現代的に解釈され、不安を煽る効果を持つ。ただし、ホピ族自身は商業的利用を否定し、「我々の教えは金儲けのためではない」と声明を出している。
10. ババ・ヴァンガ(Baba Vanga)ーーー
(『上杉隆の「ニッポンの問題点」』2025年4月17日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)
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