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なぜ備蓄米を放出してもコメの価格が一向に下がらないのか?令和の米騒動が収まらぬ「根本原因」をぶった斬る

昨年から続く日本の「米不足」ですが、備蓄米を放出したにもかかわらず、その価格は一向に下がる様子がありません。今までの倍近くまでに値上がりしたお米を買わされている日本国民の怒りは頂点に達し始めているようです。メルマガ『宇田川敬介の日本の裏側の見えない世界の話』の著者である作家・ジャーナリストの宇田川敬介さんは、この「令和の米騒動」について、太古の昔から稲作を中心に育まれてきた日本の食文化や政治構造など振り返りながら、問題解決の方法を提言しています。
※本記事のタイトルはMAG2NEWS編集部によるものです/メルマガ原題:備蓄米を放出しても下がらない米の価格への提言

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備蓄米を放出しても下がらない米の価格への提言

今回は、我々の生活の糧というか、日本の文化の中心である「米」について考えてみたいと思います。

何しろ米が高すぎます。

3月の消費者物価指数は3.2%上昇ということが発表されました。

その中でコメ類全体では前年同月比で92.1%の増加となっています。

このことが、今の日本の経済政策の中心になっているようです。そして、これがうまくいっていない石破内閣の支持率は、かなり下がっているということになります。

その内容を見てみましょう。

稲と日本の文化

日本の文化は、稲を中心にはぐくまれてきていると言えます。

実際に、衣食住、祭り、信仰、そして社会構造まで多岐にわたって影響を与えています。稲は単なる食料源ではなく、日本の文化と歴史を形成する重要な要素です。

  1. 食文化:米は日本人の主食であり、ご飯、餅、酒、様々な和菓子など、様々な料理の材料として利用されています。
  2. 祭りや儀礼:収穫祭(秋祭り)や田植えの歌や踊り、神社での新米奉納など、稲作に関わる様々な祭りや儀礼が全国各地で行われます。
  3. 信仰:五穀豊穣を願う祈りや、神社での稲穂の奉納など、稲作は信仰とも密接に結びついています。
  4. 社会構造:稲作は、共同体(結)の形成や、土地の所有権、税制などに影響を与え、日本の社会構造にも大きな影響を与えました。
  5. 経済:米は単なる食料だけでなく、経済的価値も高く、富の指標として扱われてきました。
  6. 伝統文化:稲作によって作られた農村風景や、稲作に関わる様々な伝統文化が、日本の各所に残されています。
  7. その他:稲藁は、草履、蓑、屋根、壁など、様々な用途に利用されてきました。

4世紀から6世紀の日本が国として形作られていく時代、近畿地方では巨大な古墳が数多く造られました。古墳造営は国家的な大規模土木事業だったと言えます。

古墳造営には膨大な労働力と食料が必要となります。

そのため、当時の権力者は多くの労働力を集めて土地を開墾して水田を広げました。その多数の作業者のエネルギーを賄ったのが米でした。

ある意味で平安時代の「荘園」も戦国時代の「領国」も、全て「稲を作るための土地をとる争い」であったというように見ていてもおかしくはありません。

実際に、甲斐の虎・武田信玄と越後の龍・上杉謙信が直接戦った「川中島の合戦」も、もともとは村上義清という大名の救援戦争でしたが、最後には「川中島平」(地元では八幡平と呼称)の支配権をめぐる戦いであったということになります。

戦国時代のトップの二人の大名が、命がけで戦ったのは、山部会界の国で耕作面積の少ない武田家による肥沃な耕作地の奪い合いであったのです。

このことは、江戸時代まで続きます。

江戸時代までは武士の給与は米で払われており、大名の領国(幕藩政治の藩)は「○○万石」というように、それだけの石高のとれる田畑の領地の支配権を認めるというものであったということになるのです。

江戸時代後期には、貨幣経済が徐々に蔓延してきてしまい、米本位制から貨幣経済への移行ということになり、徐々に大きな改革が難しくなってくるということになります。

実際に、八代将軍による享保の改革は「米将軍」といわれるようになりましたが、現在大河ドラマに出ている田沼意次のあたりから貨幣経済が大きくなり、天保の改革では上知令(あげちれい)などを出してもうまくゆかなくなってしまっているということになります。

貨幣が給与となるのは、民間は別にして、公務員では明治時代以降ということになります。

それでも稲作が日本人に与えた文化は非常に大きく、様々な習慣に残っているのです。

日本のように、米が経済、社会、文化など幅広い面に大きな影響を与えた国は、世界でも珍しいと思います。

米が日本人にとって大切な食料であることに今も変わりありませんから、今後も米に関わる文化的な伝統は継承していくべきです。

また、現代では農業機械の導入によって省力化が進んでいますが、かつて農村部では、稲作は村の多くの人が協力して行われました。それが、互いに助け合う共同体意識を育みました。

米の出来不出来は自然環境にすぐに左右されるので、人々は自然を畏れ、敬い、自然と共生して生きていこうという意識を持ち、その心が日本人の生活スタイルの根底にあると私は考えています。

皆で助け合い、その地域で育つものを食べ、周りの環境を大切にしながら暮らすという、今で言う持続可能な社会が既に昔の日本では実現されていたと思います。

そのうえで、自然現象を全て神話として神を敬う、つまり自然を敬い、自然と共に暮らすという文化が日本に残っていることが素晴らしいのではないでしょうか。

実際に、3.11や昨年の能登地震の時も助け合いの心は間違いなく日本人の心の中にありますしまた、何とか祭りや棚田を復活させようという動きが村や町を一つにしている部分があるのではないでしょうか。

そのようにしてできている米が、今値段が上がっているということになるのです。

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米高騰の問題解決は日本の構造改革

現在のコメ価格の問題は、多分江戸時代の後半と同じように「貨幣経済」と「米文化」の軋轢ということが大きな問題の根源にあるのではないでしょうか。

昭和の高度経済成長は、国民の核家族化を進め、日本固有の家制度がなくなってしまってきています。

そもそも「田植えの時は近所が総出で手伝う」というような「助け合いの文化」が、日本の労働環境からなくなってしま手散るというような状況になっているのではないかと思います。

実際に、私などから見ると、都会で一人暮らしをして、ネットでしか人とつながっていない若者などは「自分から村八分の環境に身を置いている」人ではないかというような感じがします。

マンションで隣に住んでいる人の顔も知らないなどというのは、お互いが近所で協力するという地縁的生活環境からはかけ離れているものであり、その助け合いがなくなったことが、そのまま「生活費のコスト高」につながっているのです。

自分で買い物に行き、自炊していれば、コストがかかりませんが、食事を作ってもらいそして宅配業者に自宅まで運んでもらうという文化は、「食事を作った人」「運ぶ人」だけではなく「決済業者」「インターネット業者」などの人々の利益を自分が余分に払っているということになります。

それだけコストが高くなる生活をしている、つまり「彼らの利益を払って人間関係の希薄さを補っている」ということになるのです。

そしてそのことが、米農家にも存在していますーーー(『宇田川敬介の日本の裏側の見えない世界の話』2025年4月21日号より一部抜粋。続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)

【関連】我が国は一億総“餓死”時代へ突入。トランプを落ち着かせるための「コメ輸入拡大」が日本人を殺す

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